正幸は家に引き戻される1
麻酔の効いた正幸をみんなで病院から運び出し、裕次の車の後部座席に寝かせた。
「麻酔は朝まで効いていますから、ゆっくりと走って下さい」
医者は確認するように後部座席で眠る正幸を見た。
友美は医者に礼を言うと助手席に座った。裕次の運転で車は病院を離れた。
「何処へゆくの?」
何を寝ぼけているのかと裕次を見た。
「自宅しかないでしょう」
友美は諭すように言った。
「あの~、桂まで。こんな夜中に東の果てから西の果てまで走るのか」
「こんな時でもそんなふうにしか考えられないの」
「ただちょっと言ってみただけさ。でもトモちゃんと夜のドライブするなんて久し振りだからさ」
「何言ってんの、夜は初めてじゃないの」
こいつはなに考えてんだろうと友美はひょうきん者を見つめ直した。
「そうかなあ」
裕次は惚けた。
「でもとんだドライブだったわね」
それでも夜中に関わらず飛んで来てくれたことに感謝しながら後部座席の義兄を見た。
「よく眠ってるわ。しかしなんでお義兄さんはあんなところで自殺しょうとしたのかしら? 裕次くんは男だからその辺は理解出来るでしょう」
「いや全くの正反対ですよ。なんで歓楽街の雄琴なんかさっぱり分かりませんよ。第一に目立つし、それに見ず知らずの女の前ですよ。普通は考えられないすっよ」
「お姉さんへの当て付けかしら?」
「それは無いと思う」
「どうしてそう言い切れるの」
裕次はちよっと間を空けた。
「怖かったんじゃない」




