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陰り逝く日々  作者: 和之
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正幸の無謀な行動3

「連れて帰りたいのですが」

「今からですか」

 医者はちょっと考え込んで正幸をじっくりと観察した。

「大丈夫でしょう。じゃあ今から精神安定剤を処方して渡しますから暫く待ってて下さい」

「お願いします」

 友美は頭を下げた。

 医者は薬を取りに部屋を出た。友美は義兄の傍に寄り添った。義兄は医者の見立てどおり落ち着いていた。正幸は友美にどうにか眼差しを向けられた。

「佐恵子は?」

 義兄はやっと口を開いてくれた。

「あれから家でずっと待っていたけれど。でもまだ戻って来てないの。大丈夫、だからまだこの事は知らないはずよ」

「そうか……」 

 義兄はやっと薄笑いを浮かべた。

「そうだ。友達の有美子さんのところかも知れない。僕の手帳に連絡先が書いてある」

「分かったわ、後で聞くから、とにかく具合よさそうね」

「佐恵子に連絡付いたら今夜は帰らないと伝えてくれ」

「まさか、これから何処へゆくの? これから裕次くんの車で真っ先に家に帰るのよ」

「松田が来ているのか、あいつはいい奴だ」

 正幸は半身を起こした。友美は慌てて手を肩に添えた。

「友美、途中で降ろしてくれ」

「お義兄さん。何を馬鹿な事を言ってるの。お義兄さんはこれから自分の家に帰るのよ」

 正幸の表情が急に厳しくなった。

「いや、俺はもう帰らない。帰れない」

 友美は横坐りして正幸の正面に回った。

「お姉さんともう一度よく話し合って」

 正幸は友美をベッドから振り払った。

「だめだ!」

 正幸は両足をベッドから降ろして起き上がろうとした。友美は外で待たした裕次を呼びながら義兄を止めた。ドアを開けて飛び込んで来た裕次と今度は二人で制止しようとした。

「裕次さん、お義兄さんを押さえて」

 さん付けに裕次は一瞬驚きながらも手を差し伸べた。友美を払い退けて起き上がった正幸を今度は裕次がベットに押さえ付けた。

「松田! いいから手を離せ!」

 友美が医者と看護師を連れて戻って来た。

「帰りたくない死なせてくれ、このまま死なせてくれ!」

 正幸は死なせろと暴れ出した。

「今は何も喋らせないで下さい」

 看護師、友美、裕次が必死で押さえ付けてる間に、医者は麻酔薬の注射を用意した。医者と看護師は正幸の腕を押さえ付けて麻酔薬を打った。

 やがて正幸は静かになった。


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