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陰り逝く日々  作者: 和之
12/21

友人の狭山4

「そうなの、佐恵子さんは再婚して京都で暮らしていたの」

「十七年も音信不通だった人が急に北村を訪ねて来るなんて、どういう心境だろうね」

「佐恵子さんは思いついたらすぐに行動に移す人でしょう。だから何かあったんじゃないの」

「何かって?」

「そんなこと私が知るわけないでしょう。ただ旦那さんでなければ子供のかおりちゃんかしら。あの子に何かあったんじゃないの……。それとも違う子かしら」

「違う子ってどういうこと?」

 一緒に食事をしていた長女が口を挟んだ。

 狭山と多恵は話題を変えた。食事が終わって子供達が部屋に戻った。

 多恵は食事の後片付けをしてからコップをひとつ持ってきた。狭山は先にひとりでビールを飲んでいた。

「今日はあたしも一緒に飲むわ」

 狭山は多恵のコップにビールを注いだ。

「貴方に入れてもらうのも久し振りね」

 佐恵子と朔郎の話題は二人の新婚の想い出とだぶった。だが二人が朔郎と佐恵子の子供の話になると表情が厳しくなった。

 多恵には狭山から佐恵子が再婚しても子供は一人だと聴かされて気になった。

 彼女は再婚したあと最初の子が逆子で、しかも胎盤が首に巻き付いてお産の時に死なせたと、狭山は朔郎からさきほど聴いた話を伝えた。

「それでそのあとは子供が出来なくなったらしい」

「そんな込み入った話までどうして長いこと会わなかった北村さんに佐恵子さんは言ったの。しかも突然会って……」

「そう言われてもなあ、なんせ佐恵子さんは思い切った事をやる人だからなあ」

「あの人、余程そうしたい何かがあったのかしら、でも勝手過ぎると思わない。自分から捨てておきながら。どんな理由があろうと許せると思うかしら。まさか彼女から連絡先をもらっても行くわけないわよね」

「それが行ったらしい」  

「うっそー、北村さん行ったの!」

「ああ、一週間後に。どうしょうもない奴だ、あいつは。淀屋橋をうろついてまた今日にも行くつもりだったらしい」

「それでどうしたの」

「そこで彼奴と別れた」

「で、それっきり」

 一週間後に行ったのは佐恵子が大切にしていた預かり物を、北村は返しに行った。だが彼女は『そんな物どうでもよかったのに』と あっさり受け取った。北村には昔の彼女と結びつける身代わりの様な唯一の記念品を無造作に扱われた事に失望してすぐ帰ったらしい。

「それじゃあ、かおりちゃんは北村さんが本当のお父さんとは知らないでしょう。そのまま会わずに別れて来たの?」

 多恵は朔郎のアパートで、まだ一歳にならないかおりをあやしている自分を思い出していた。

「あのかおりちゃんならもう高校生になっているんでしょうね? 可哀相に何処まで知ってるのかしら?」


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