友美は正幸の心に踏み込む3
正幸は北山杉の床柱を背にして、座敷机に片肘を突き煙草の煙を漂わせていた。友美の顔を見ると正幸は煙草を消して肘を直すうちに彼女は座った。
ワンルームに家財道具を詰めるとベッドしか空間らしき物が残らない友美の部屋に比べると雲泥の差がある。
「此処でいつも寛いでいるのね」
「ああ、しかし時折この家のローンを考えると落ち着かないが……」
正幸は無理に笑っていた。
「佐恵子はまだ用事が済まないのか」
「もう終わるみたい。後でお茶を持ってゆくって言ったからコーヒーにしてって頼んで来た。お義兄さんはお酒の方がよかったんじゃない?」
正幸は苦笑した。
「そう云えばこの前の喫茶店でのコーヒーはごちそう様でした」
正幸の顔が少し引きずった。
彼は感じた事が顔や躰の一部に敏感に現れる。要するに嘘のつけない下手な人なのだ。友美が観察するとすぐに本題に入った。
「この前に見た北村さんの写真展の案内状はどうしたんですか?」
「どうしたって云うと?」
「お姉さんに分からないようにそっとしまったんですか」
「ああ、波風が立たないようにそうした」
「別に良いんじゃないんですか、お友達の写真展でしょう」
「あいつはただの友達じゃない」
ただのねーと友美は正幸の言葉を捉えてそれをいびつに強調した。それが堪えたのか正幸は沈黙してキッチンに目をやってから友美に視線を戻した。
「裕次から色々訊いているんだなあ。まあいいが、そっとしときたいんだよ」
「そんな先送りばかりしているとどこかで繕わないと綻びが大きくなってしまうでしょう」
「これは佐恵子の問題だ」




