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陰り逝く日々  作者: 和之
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友美は正幸の心に踏み込む1

 友美が正幸の自宅を訪ねた頃には丁度食事も終わり、佐恵子は食器を洗っていた。流し台の窓から見えたのか佐恵子はすぐに出てくれた。

「お義兄さんいる?」

「エッ、あの後、裕次さんとデートじゃなかったの」 

 前触れもなくやって来た友美に、佐恵子は驚きながらも笑って迎えた。

「お姉さん、お義兄さんの前でいつもそんな優しい顔をしているの」

可怪おかしなこと言わないでよ」

 友美はそうだわねと取って付けたような愛想笑いを浮かべた。

「かおりちゃんはまだ病院なの」

「そうだけど」

「好都合ね」

 さっき別れたばかりなのに何しに来たの、と云う顔で友美を見た。友美は訳有りそうな笑みを浮かべた。

「お義兄さんは奥?」

「そうだけど正幸に用事で来たの?」

「上がっていい?」

「良いけど、今日あの人に会った事は内証にしておいて」

 一応平穏は保たれているのか。でも時間の問題だと友美は思った。

「知ってるわよ。お姉さん、その事は……」

「知ってるって ?」

「お義兄さんはお姉さんがあの人に会った事を知っているのよ」

 お義兄さんの事は裕次くんを通じて、情報が不正確ながらも途切れ途切れに入って来ている。それにあたしの推測を加えると大体次の事が朧気に見えて来た。 

 かおりの事で福井へ行った時から正幸は気が動転しているらしい。娘には愛情を十分に注いで来たつもりだったが、やはり血縁と云う越えられぬ一線を感じた。これは彼にとっては犯すべからず神の領域になる。そして友との約束も本来は同格として扱うべきなのに片手落ちのまま今日がある。これは推測の域を超えた友美の妄想であると佐恵子は結論づけた。

 裕次にとって正幸は人生の指標となる上司だ。それだけにすべてを自分の肥やしにしょうと正幸の一挙一動には鋭い観察をした。時には裕次も友美のためなら頼みもしない情報も仕入れてくる。裏を返せばそこにあたしへの愛を痛切に感じる。


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