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陰り逝く日々  作者: 和之
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友美と祐次3

「裕次くん、良く知ってるのね、その海で北村さんって漁船に乗っていたのよ」

「それはマジですか。海の男って格好いいですね」

「それが目の前にしてるとそんなイメージじゃないのよ。ただ漁船の苦労話を淡々と語るんだから」

「寡黙な男。それも格好良いじゃないですか」

 こいつにどう話せばいいのか友美は思案した。しかしそれが裕次の笑える良さでもあると聞き流した。でもこの調子でも良いけれど。お義兄さんにあたしが知り得た北村のことを話してくれたのかしら。

「北村さんの事を黙って聞いてた課長は辛そうだったよ。だから言ってるこっちまで落ち込みそうだったけどめげずに言った。あれは北村さんって云う人をかなり心配してるんじゃないかと勝手に考えたりして説明した。さぞかし昔は厚い友情を交わしていたんだろうね、そうでなけゃあ一緒に登山なんてできっこないっすよ」

 しかし直らない。食べるか喋るかどちらかにしてって云いたくなるほど裕次の口は活溌に動いていた。

「いったいどうなってんの。支離滅裂って感じね」

 お姉さんから受けた義兄の印象とは違っていた。

「どうしてトモちゃんは男の友情ってものが解んねぇかなぁ」

「裕次くんは昔の姉と北村さんとの関係を知らないからそんな事が言えるんよ」

「北村さんって課長の奥さんとどういう関係?」

「もういいわ、食事も終わったことだし、早く行きましょう」

 裕次は慌てて食後のコーヒーを流し込む様に飲んで仕舞った。

 友美は時計を見ながら姉がとっくに帰っている時間だと確信して裕次の車で正幸の自宅に向かった。それでも裕次はこんなアッシー代わりのドライブでも愉しんでハンドルを操作している。それが却って友美は胸に堪えたが、調子に乗るタイプである裕次の為にここは耐えて無表情を装った。

 姉と末っ子の友美以外に、次女と兄が二人居た。姉は下の兄と仲が良かった。姉からすれば弟になる人と北村は雰囲気が似ていた。私にすればその下の兄も北村もさすらう癖があり、二人とも家庭的じゃなかった。そこが正幸とは違ってる。

 尋常じゃない姉は私と違って、下の兄や北村のような難しい人ばかりを選んで仕舞った。だから正幸と結婚しても家庭に収まりきれず、そのままストレートに生きて、主婦としてのひずみをまともに受けてしまった。その歪みが溜まると姉はとんでもない行動をする。

 笑って送ってくれた裕次に今日は救われた。涙が出るほど嬉しいのを押し殺してただひと言『ありがとう』と云って帰らせた。あの後ろ姿を見ると思わず裕次を思い切り抱きしめたくなるが、姉夫婦との真剣勝負を前にしてそのまま見送った。



    


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