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陰り逝く日々  作者: 和之
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佐恵子と朔郎と友美3

 お互いに何をしょうとそんな事より、相手にとって何が大切なのかを想う事の方が大事なんだと朔郎は常に言っていた。『信じる事が二人の存在の証しだ』と言った彼の言葉が今では地中深く埋もれて、誰かの発掘を待つ化石の様な存在になっていた。その言葉を風化させたのは彼なのかそれとも佐恵子自身なのか……。

「北山のブティックをオーナーから任されたぐらいだから信用されているんだねぇ」

「長いだけよ」

「そう、お姉さん凄いのよ、始めの頃はかおりちゃんを保育園まで送り迎えしていたんだから」

「それじゃ正幸は何をしてたんだ !」

 朔郎は非難して責め立てた。

「私が好きでやってるんですから良いんです。それよりかおりの事では改めてお礼を言います。これは正幸も同じで感謝しているから」

「それより船に乗った事があるんですね。漁船ってどんな事をするんですか」

 急に友美が割り込んで訊いて来た。諦めたように佐恵子は話を中断した。

 遠洋漁業の話が聞けると云う口実で妹は付いて来たらしい。それがいつまで待っても話題が変わらないのに妹は業を煮やした。

 トロール船は毎日一定の漁場を行き来して魚を捕獲する苦労話を朔郎は始めた。

「ずっと海の上にいるんですか?」

「燃料や食料が無くなるまでね」

「無くなれば?」

「母船からの洋上補給かアラスカへ補給に寄るんですよ。補給が済むまで町中で遊べる。それが唯一の船員の楽しみなんですよ。だから無理してアンカレッジへ寄港する事もあるらしい」

「アンカレッジ ?」

 友美が身を乗り出した。

 アンカレッジはアラスカ州の州都ジュノーを上回るアラスカ州最大の都市で州の人口の半分はこの都市近郊に集中していた。ただベーリング海からは遠く北太平洋のカナダ寄りに有った。だからベーリング海で操業する漁船には余計な燃料と日にちが掛かった。それでも無理して寄港するのはひとえに乗組員の辛い労働からの解放と保養に有った。


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