佐恵子と朔郎と友美2
「私が言っても誰も信じてくれないんだから、お姉さんは得な性格ね」
「友美、あなた何を言いに来たの」
佐恵子は妹を咎めるが口調は穏やかでその眸は笑っていた。
佐恵子が妹に示した言葉とは裏腹なあの眸が、挫折しかけた朔郎を幾度となく蘇らせたことか。彼は眼を顰めながらも当時を想い出して口元を緩めてしまった。
「此処のマスターとはかなりの馴染みなんだなあ」
「ええ、そうよ。京都へ来てから最初に有美子と利用してから気に入ってるの。とくにマスターが人当たりが良くって。それでこの店を利用するようになったの」
二人だけの秘密の場所だったのか、それにしても朔郎は佐恵子への感情をあらわにした前回の有美子を想像すると何処まで仲が良いのか疑った。朔郎の僅かな表情の変化を佐恵子は読み取った。
「有美ちゃんの事で何か気になることでもあったの? この前は病院で有美ちゃんの連絡先を聞いたから会ったのでしょう」
「会った事は会ったが、別に何も変わったことはなかった」
佐恵子はこの言葉を鵜呑みにしていない様子だ。それでも大した事は無かったと瀬踏みしていてひと息付けた。
「ところで正幸はどうしてるんだ」
「良く頑張ってくれているわ。その分、残業とか出張が多いけど……」
夫婦の間になんとなく乾いた空気が感じられた。そう思ったのは俺だけか、妹は平然としている。
「本当に、家を買ってからお義兄さんすごいのよ」
何も知らない正幸を褒める友美に反感を覚えた。
「帰りが遅いから家にいても仕方ないからあたしも働きに出たのよ」
共働の弁解が疎ましく感じた。朔郎の持論は妻に対して、家事に専念するか仕事を持つかに拘らないのを知っているはずなのに、弁明した彼女の愚かさを思わずにはいられない。




