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陰り逝く日々  作者: 和之
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朔郎は堀川と新居を考える4

「北村! 佐恵子さんの性格をよく考えろ。彼女の性格はお前が一番良く知っているはずだ。彼女は利かん気が強く意地になるところがあるやろ。彼女とりを戻したところでまた捨てられる、いやそうならなくてもお前は一生彼女に振り回される。堀川なら黙って付いてゆく。若い時はやり直せるがもう若くないんだ。いいか、たそがれが迫ってるんだ、陽が落ちた後の長い人生を考えろ」

 狭山の電話はこの後は一方的な忠告ばかりが続いて終わった。

 朔郎は窓を開けて陽がとっぷりと暮れた空を見た。何処までも闇が続いていた。あれほど暑かった日々が嘘のように今は長く風に吹かれると寒さを覚えて窓を閉めた。部屋には佐恵子と買いそろえた家具がまだ残っている。タンスの引き出しは半分しか使っていないし、食器棚は全く使っていなかった。決して想い出として残したつもりもないのに、処分するのが面倒なだけだった。一週間でこの部屋のすべてを片付ける。途方もない遠大な計画に彼は気が滅入って仕舞った。

 確かに狭山の言うとおりだ。気まぐれな女と絵に描いた友情なんて、そんな信念のない男に関わっていられない。しかしあのふたりはどうするんだろう。

 彼は熱い紅茶と共にウイスキーを軽く呑んでから寝床に入った。

 翌朝は少しでも片付けようと荷造りを始めたが、手に付かずにそのまま散歩に出た。

 あてもないのに足だけはしっかりと歩いてる。いつもとは正反対に今日は人混みを求めて御堂筋を梅田まで歩いて仕舞った。心地良い疲れが足元から伝わってくる。

 夕方から降り出した雨は次第に雨脚を強めた。十月の終わりを告げるように雨は一気に秋を加速させた。 

 御堂筋の路面を叩く雨の中を淀屋橋まで歩いたがもう雨にも飽きてしまいついに地下鉄に乗った。

 家路を急ぐ乗客たちは解放された労働からか蝋人形の様に口を閉ざしていた。精巧な蝋人形を観察しているうちに駅に着いたが、外の雨は小降りになって急に肌寒くなってきた。

 部屋に戻った彼は畳の上で朝と同じようにぼんやりとしてしまった。

大阪は忙しない街だが此処に座ると何故が気が楽になる。此処はノンビリ出来る所だ。佐恵子が此処を選んだのが分かる様な気がしてきた。

 此処で暮らしたあの頃が人生の頂点だったのか。もう何も考えずに忘れよう一週間すれば新しい生活が始まる。


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