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陰り逝く日々  作者: 和之
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朔郎は堀川と新居を考える2

 綾子に電話で起こされた時、昨日の採血が堪えたのか、起きるとすぐに頭がふらつき正幸の恨みはいっとき吹っ飛んでいた。

 いったいどれぐらいの血を抜いたのだろう。ベットで眠るかおりの顔が朧気に浮かんで来た。心地良い睡魔もほとんどの乗客が入れ替わって仕舞う梅田駅の混雑で現実に戻された。お陰で足取りは確かになり、苦も無く約束の店にたどり着けた。

 扉を開けて綾子を見付けるとホッとした勢いからまた足が重くなった。彼は努めて軽い足取りを装った。

「顔色が悪いわねえ」

 席に付くなり見破られた。

「良くそれで永平寺で座禅の修行が出来たわねぇ」

「多分、それで疲れたのだろう」

「たった一日なのにそんなに厳しい修行なの」

「それゃあ禅宗の厳しいお寺ですからね……。まあいいやその事は、それより福井から帰ったら話があるって言ってなかったっけ」

「言ったわよ」

「何の話?」

 綾子の顔が強張った。それでいてちょっと身を引いたように、身構えながらもそれでいてソワソワしている。要するにとりとめのない気分を押し出すように言った。

「そろそろ二人の事を考えてみたいの」

「それって一緒になるって事」

 彼女は頷いた。

「あなたも前から考えていたんでしょう」

「考えてはいたんだが、今は失業中だし、仕事が見つからないと生計も立てられない」

「子供が出来るまでわたし働くから」

「結婚するには金が要るなあ」

「式を挙げなくていいの、住むとこだけ考えて」

 入籍だけでいいと結婚式を否定した彼女の眸は無理に笑っているようだった。それを観て朔郎の胸がいたんだ。

「住むとこは?」

「あたしのはワンルームだしあなたの所は2DKでいいんでしょうけど、別れた前の奥さんが住んでいた所はイヤなのよ。ねえ、ふたりで新しい所を探しましょう」

 いつから綾子はこんなに具体的なところまで考えていたのだろう。それに引き替え俺は漠然とした物しかなかった。


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