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陰り逝く日々  作者: 和之
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朔郎は堀川と新居を考える1

 彼は鴨川の欄干に頬杖をして遠くの山並みへと視線を移した。この十四年間で川沿いを走っていた電車は地下に消えた。ビルも増えたが規制で高いビルはなく眺めは変わらない。

 マスターの見込みどおりと云うか、永平寺の座禅が利いているのか朔郎の気持ちは覚めていた。正幸の遠い裏切りより今を彷徨さまよう佐恵子の方が気掛かりだった。いったい佐恵子は何を考えている、何を求めているのだろう。

正幸への恨み、憎しみはまだ残っていた。いや一生消えないが、彼はこの街に居るのに疲れた。彼はこの街に長居することなく近くの駅から電車に乗った。電車は夜の闇に溶け込むように、途中停車した駅名も分からないぐらい大阪に向かって走り続けた。終点の淀屋橋からどう行ったかまったく記憶にないままアパートに辿り着けた。

 彼はそのまま自宅に戻ると倒れ込むように、自室に転がりそのまま寝込んだ。

 どれぐらい寝たか分からないまま電話のベルで起こされた。だがすでに陽はかなり昇っている。電話は綾子からだった。

「さっきから電話していたのに何処へ行っていたのですか」

 彼女の口調は荒かった。無理もない今日は会う約束をしていた。場所まで決めなくて良かったと彼はホッとした。

「ゴメン、寝ていた」

「福井から戻ったら連絡してくれる約束だったでしょう。ずっと電話を待ってたのに、もう何時だと思ってるの」

 窓から外をよく見れば陽は真上近くに有った。朔郎は急いで梅田近くの喫茶店で落ち合う約束を取り付けてアパートを出た。

 彼の足取りは重く、いつもの駅までの道のりがやけに長かった。今日ほどエスカレーターが有り難かった。まだ疲れは残って、電車の単調な揺れが自然と眠りを誘った。

 昨夜はすぐに布団に寝入ったが途中で目が覚めてしまった。そこから正幸の裏切りのショックが尾を引いて眠りは浅くなった。ウツラウツラの状態で明け方近くになってやっと深い眠りに落ちた。


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