表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰り逝く日々  作者: 和之
100/138

朔郎は有美子に会う6

「山の稜線で休憩中に正幸は俺の背中を押して突き落とそうとした。あいつにとっては 運が悪い事に、俺は靴紐を締め直そうとかがみ込んだ。その為に正幸が稜線から転げ落ちるところを拾い上げてやったのだ」

「それを佐恵子に話したの」

「いや、正幸との約束で、あいつはもう一切係わらないと云ったから……。まさかあいつ……」

 北村は急に立ち上がってサッサと出口へ行った。

「ちょっと待って、それ本当なの?」

 有美子はレジでマスターに支払いを済ませた北村の顔を覗き込んだ。

「信じる、信じないは君の勝手だ」

 朔郎は捨て台詞を残して店を出た。

「マスターどうしょう」

 有美子は不安げに問うた。

「あの人が佐恵子さんの前の彼ですか」

「そうなの」

「じゃあ、あの写真を撮った人なんですね」

「写真まだあるんですか」

「有りますよ。あれは痛いほど心情の出ている作品ですからね。だから有美子さん、さっきあの人が言った事は嘘じゃ有りませんよ」

「マスターもそう思うんですか。……もう病院は面会時間が過ぎているし。いつも呼び出しているから篠原さんの家は知らないし……」

「あれほど自然を畏敬する人なら怒りはすぐに収まりますよ、十四年間も知らなかったのですから」

 マスターは他人事ひとごとのように言うが……。

 有美子が思うには。

 大自然の悠久の営みに比べれば大した事では無いが、三十数年生きた中の出来事としては看過できない部類に入ると思うが、それを佐恵子と正幸はどう対応するんだろう。学生時代はポジティブだった正幸があの件で陰り続けても、北村の許を飛び出した佐恵子には戻るところがなかった。今の正幸は要するに、佐恵子にはこれは鬱陶うっとうしい恋なのだ。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ