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陰り逝く日々  作者: 和之
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友人の狭山2

「ハローワークの帰りか、やっぱり四十前では無理だろう。しかし帰る方向が違うじゃないのか、家なら地下鉄に乗るんだろう」

 狭山はなぜ京都方面の駅にお前が居るんだと云う顔をした。牧歌的な何かを匂わす狭山の顔が、遠い過去を連れてきて思わず懐かしくなった。

「狭山、お前、新婚時代は俺のアパートにも良く遊びに来ただろう、多恵さんと一緒に」

「何だ、急に昔の話を持ち出して、何を言い出すんだ」

「佐恵子と別れてからは一度も来なかったなあ、気を使ってるのか」

 朔郎は離婚してから佐恵子の事は一度も口にしなかったし狭山も禁句にしていた。それがあの日以来初めて口にして狭山は一瞬驚いた。狭山は朔郎の顔を見てすぐに悟った。

「お前、最近、奥さんと会ったなぁ」

 朔郎は頷いた。

「いつ会ったんだ」

「二月ほど前だ」

「ふたつきほど前か……。まさかあの送別会の日じゃないだろうな」

 朔郎は浮かぬ顔をして黙った。

「図星か。それであの日あんだけ荒れたのか。……で彼女の方から訪ねてきたのか?」

「ああ。前日の晩にアパートに電話があった」

 朔郎はぶっきらぼうに言った。

 そりゃあ携帯が分からなけゃあアパートに電話するわなぁと狭山は笑った。

「しかしなぜ、急に彼女が電話してきたんだ」

「分からん」と更にぶっきらぼうになったが、急に目を曇らせて「女心は」と 付け加えた。

 狭山は苦笑した。

「それっきりか。だがお前が淀屋橋に居たってことは京都の彼女の居場所を知ってるンだなあ」

「彼女、名刺を置いて行ったよ」

 狭山に名刺を見せた。

「北山通りか、この店はブティックか」

「そこで働いているらしい」

 狭山には朔郎が淀屋橋に居た理由をどうにか理解した。


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