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第十二話 護衛依頼

フェルンの西門前には、いくつもの馬車が並んでいた。


荷台には木箱や麻袋が山のように積まれ、御者や商人たちが忙しそうに動き回っている。


(思ったより大きいな……)


掲示板で見つけた護衛依頼。

その集合場所がここだった。


「おう、お前が追加の護衛か?」


振り向くと、立派な口ひげを生やした大柄な男が立っていた。


「コウ・レインです」


「アルヴェイン商会のガルドだ。今回のキャラバンの責任者だな」


豪快に笑うその男は、いかにも商人というより戦士のような雰囲気をしている。


「他の依頼参加者ももう着いてるぞ。あっちの二人だ」


ガルドが顎で示した先に、男女が立っていた。


一人は大剣を背負った青年。

もう一人は二本の短剣を腰に下げた女性だ。


「ロイド・グレイバルです」


青年が軽く頭を下げる。


「剣術Lv3と筋力強化Lv3。前衛は任せてくれ」


落ち着いた声だった。

無駄な力みがなく、経験のある冒険者だと分かる。


「セリナ・ヴァレット」


女性が片手を軽く上げる。


「瞬歩Lv3。近接担当」


短く簡潔だが、どこか頼れる雰囲気がある。


「コウ・レインです」


コウも頭を下げた。


「魔力探知Lv3と、雷魔法Lv3です」


鑑定スキルのことは言わない。


ロイドが少し目を細めた。


「探知持ちか、助かるよ。」


セリナも頷く。


「若いのにもうLv3冒険者なんて有望ね」


(よかった)


コウは内心で安堵する。


二人とも近接特化だ。

遠距離攻撃主体となる魔法を使うことでバランスが取れる。


この依頼を選んだ理由の一つだった。


掲示板で護衛依頼を見たとき、参加予定の冒険者の名前も確認していた。


フェルン出身の冒険者はいない。


つまり――


新しく手に入れたスキルを使っても、不審に思われる可能性はほとんどない。


(雷魔法……)


灰穴で手に入れたスキルだ。


ルークやセイン。

そしてカイラ。


魔法を使う冒険者の戦い方を見て、ずっと思っていた。

自分も使ってみたい、と。


「よし、出発するぞ!」


ガルドの声が響く。


御者が手綱を引き、馬車が動き出した。

キャラバンはゆっくりとフェルンの門をくぐる。



街道はよく整備されていた。

交易路として使われている道らしい。


ロイドが歩きながら言う。


「アルディアまでは四日ほどですね」


「結構遠いのね」


セリナが肩を回す。


「まあ、その分報酬も悪くない」


三人で歩きながら、自然と会話が続く。

ロイドの落ち着いた雰囲気のおかげか、初対面のぎこちなさはあまりない。


「護衛受けてくれる追加の冒険者がいてくれて助かったよ」


コウは少し考えてから口を開いた。


「何か理由があったんですか?」


ガルドが振り向く。


「数年前からフェルンより西の街道で盗賊の報告が増えててな」


肩をすくめる。


「念のため一人増やした」


ロイドが苦笑する。


「何も起きないのが一番ですけどね」


セリナも笑った。


「護衛ってそういう仕事よ」


キャラバンはゆっくりと西へ進む。


振り返ると、フェルンの町はもう遠くに小さく見えるだけだった。


コウは空を見上げる。


(ここからが新しい冒険だ)


キャラバンは街道を進み続けた。


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