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鑑定しか取り柄のない俺、倒した敵のスキルを奪えると判明する  作者: 水瀬 洸
第一章 覚醒、そして始まりの一歩
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第十一話 出発の準備

宿に戻った頃には、空はすっかり暗くなっていた。

ベッドに腰を下ろし、大きく息を吐く。


ロックゴーレム討伐。

まだ少し現実感がない。


だが——。


「そういえば」


俺は思い出す。

あの戦いの最後。

確かにスキルを奪ったはずだ。


意識を集中する。

頭の中に文字が浮かんだ。


スキル鑑定Lv3:対象のスキルを鑑定する

スキル奪取Lv3:倒した対象のスキルを取得する

∟《魔力探知Lv3》:周囲の魔力を探知する

∟《戦闘補助(近接)Lv3》:近接戦闘時の戦闘能力が上がる

∟【保管】《投擲Lv3》:物を投げる際の威力と正確さが上がる


「……保管?」


やはり、見たことのない表示。

今までと違う。


俺はテーブルの上にあったリンゴを手に取った。


「まあ、ものは試しだ」


軽く投げる。


ポス。

普通に落ちた。


もう一度。

意識を集中する。


――《投擲》。


投げる。


……。

さっきと変わらない。


「使えていない...?」


もう一度スキル表示を見る。


【保管】《投擲Lv3》


「……もしかして」


保管。つまり——。


使えないが、持っておける。


「入れ替えられるとか?」


俺は考える。

そして意識を向けた。


《魔力探知》と入れ替える。


そう強く意識した次の瞬間。

スキルを使用するときの強い疲労感とともに頭の中の表示が変わったことに気づいた。


スキル鑑定Lv3:対象のスキルを鑑定する

スキル奪取Lv3:倒した対象のスキルを取得する

∟《戦闘補助(近接)Lv3》:近接戦闘時の戦闘能力が上がる

∟《投擲Lv3》:物を投げる際の威力と正確さが上がる

∟【保管】《魔力探知Lv3》:周囲の魔力を探知する


「できた……が、疲労感が半端ないな」


もう一度リンゴを投げる。


ヒュッ。

リンゴは一直線に飛び、壁に当たった。


さっきとは明らかに違う。

威力も。精度も。


「なるほどな」


今度は魔力探知も試すが、やはり使えない。

予想通りだ。


つまり。


使用できるスキルは限られていて、それ以外は保管される。

そして、自由に入れ替えられる。


だが、かなりの集中を必要とし、疲労感も今までのスキルと比較にならないほど強い。

戦闘中は入れ替えられないだろうし、ダンジョン攻略中に使用するにも場所を選ぶ必要があるだろう。


「……面白い」


思わず笑った。


そのまま無条件で使えるスキルが増えると思っていただけに少し残念に思ったが、それでも圧倒的な強さを誇るスキルであることには変わりない。


「やはり、とんでもないスキルだな」


俺はベッドに倒れ込んだ。

そして天井を見上げる。


「さて」


俺は小さく笑った。


「次は、何を奪おうか」



翌日。


ロックゴーレム戦で、俺の剣はほとんど限界だった。

刃は欠け、柄もひびが入っている。

このままでは次の戦いは厳しい。


俺は街の鍛冶屋を訪れた。

炉の熱気と鉄の匂い。


「何の用だ」


鍛冶屋の男が顔を上げる。

俺は剣を差し出した。


「修理は難しいな」


男は一目見て言った。


「新しく作った方がいい」


(短剣ならまだ一本あるが、それじゃ心許ないんだよな)


《灰穴》探索時に持ち歩いていた短剣は、ゴブリン程度であれば十分だが、《枯岩原》のモンスター相手には物足りなかった。


今後を考えると、ここでちゃんとした武器を用意しておく必要がある。


(いずれ欲しかった武器だし、むしろちょうどいいかかもな)


俺はポーチから一つの魔石を取り出す。

ゴブリンアサシンの魔石だ。


「これを使って、少し長めの短剣を作ってほしい」


男の目が細くなる。


「魔石武器か」


しばらく魔石を見つめたあと、男は頷いた。


「面白い。作ってやる...三日待てるか?」


「大丈夫だ」


鍛冶屋を出た俺は、空を見上げた。


出発まで、ちょうど一週間。


やっておきたい準備は、まだある。


――《灰穴》だ。


俺は短剣を携え、街の外へ向かった。


Lv1ダンジョン。

ゴブリンが出るだけの、初心者向けの場所。


だが、ギルドで聞いた話が気になっていた。


「最近、特異個体が増えてるらしい」


「体感だけど2~3倍くらいあるって」


もしそれが本当なら――


スキル奪取のチャンスだ。



灰穴の入口が見えてきた。

暗い洞窟の口が、夜の中でぽっかりと開いている。


ここは、すべてが始まった場所だ。


鑑定しか取り柄がなかった俺が、初めてスキルを奪った場所。

初めてダンジョンを踏破した場所。


そして今――


俺はまたここに立っている。

だが、あの頃の俺とは違う。


一週間後。

俺はこの街を離れる。


次の街。

次のダンジョン。

次の強敵。


その前に。

もう一つだけ、力を手に入れておきたい。


俺は静かに息を吐いた。

そして――


《灰穴》へと足を踏み入れた。


新しい力を手に入れるために。

数ある作品の中から本作を見つけてくださり、ありがとうございます。

また、ここまで読んでいただけたことをとても嬉しく思っています。


これで第一章完結です。

まだ始まったばかりの物語ですが、コウがどんな力を手に入れ、どんな冒険をしていくのかをこれからも楽しんでいただけたら嬉しいです。


もし「続きも読んでみたい」「面白いかも」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


第二章では舞台を少し広げ、新しい街やダンジョン、スキルや冒険者も登場する予定です。


更新は週4~5回ほどを予定していますので、これからもコウの物語を見守っていただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

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