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歪《いびつ》な刃~残金0、サイコパス浪人生。免許資格を問われ、「日本国籍」。なぜか小説家を目指す。知り合って間もない好きでもない人に「結婚しよう」。こいつ、ヤバみ~  作者: 喰寝丸太
第1章 サイコパス小説家が生まれた日

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第6話 生活費ゲット

 今後の計画のために、一旦そのまま喫茶店ステイ。


「とりあえず弁護士に相談。美夏さんに伝手がないなら、最初は区の無料相談でもいいし」

「凡太、お前なんでそんな詳しいの?」

「それは後。美夏さん、オッケー?」


「うん、そうしてみる」

「で、美夏さんの名前は出さずに俺からの依頼って形にする。そうすれば世間体も保てるでしょ。妻がセクハラされたら、夫がブチギレて無茶してもある程度は許されるから」

「まあ……そうかもだけど。相変わらず思考がサイコパスだな」


「ここからが本番。急アルで運ばれたのは自殺しようとしたことにする。勇気が出ないから酒を煽ったってね。それを精神科医に話して診断書ゲット。眠れないとか他に症状あれば盛って話す。あとは慰謝料でウハウハよ」

「お前……マジでエグいな……」

「やってみます……!」


「あとセクハラの証拠は絶対に押さえて。開示請求ってのがあってさ、通るかは分かんないけど裁判の資料だからって店の防犯カメラ映像を出させるよう裁判所に申請できるから。そういうのあったらゴリゴリに使っていこう。どうせ社内メールとかにも証拠残ってるでしょ」

「うわ、相手の男が可哀想になってきたわ」

「社内メールは確実に残ってます……!」


「もし弁護士との話し合いで渋られたら、診断書次第で傷害罪で刑事告訴するって弁護士に言って、動いてもらって。裁判勝てるかどうかはどうでもいいの。告訴して刑事事件に持ち込めば、検察が起訴するかは知らんけど、とりあえず警察は動くから。フツー警察沙汰とか嫌じゃん? 社会的地位があったり既婚者なら特にね」

「マジでガチのサイコパスだな……」

「ふふ」


「全部美夏さんのためだよ」

「ありがとうございます……! 年下なのにすごく頼りになるんですね。でも、あなたはそれで本当にいいの……?」


「俺が自立できたら、離婚してくれて一向に構わないよ。今どきバツイチなんて勲章だし。生活費節約するから月2万くれれば十分」

「えっ、それくらいなら……! でも、絶対離婚なんてしません!」


「思い立ったが吉日。婚姻届け出しに行こう。あ、とりあえずマイナカードの再発行代と滞納してる費用立て替えて。借用書書いてもいいから」

「これマジで大丈夫なん……?」


 サクッと借用書を書いて、バスで区役所へ向かう。


「真治、婚姻届けに必要なものググって」


 真治がスマホを高速フリック。


「えーっと、18歳以上の証人ふたり。印鑑は修正用にあった方がよくて、あとは本籍地の確認だな」

「サンキュ。証人は真治と、近くにいる真治の友達でいっか」


「友達にLINEしたら即OKきたわ」

「ハンコは100均のやつで十分かな」

「私は何をすれば……?」


「任せといて」

「でも、私も何かしたいです……!」


「決意だけで十分。ここでバス降りたら一生後悔するよ? 会社辞めたくないんでしょ。上司から慰謝料ガッツリむしり取ってあげるからさ。俺は手当てだけでいいし」

「本当に……お優しいんですね……」

「いや、それ優しさとは根本的に違う気がするけど……」


「全部俺に丸投げしなよ。上手くやってあげるから。悪評は全部俺が被るし、周りには夫がノイローゼ気味で~とでも言って雑音はスルーすればいい」

「悪辣だけどクソ上手い手だな……サイコパス思考の恐ろしさを知ったわ」

「すごく優しいと思います!」


「美夏さんは友達に結婚するって連絡して。もちろん親にも」

「そうだな。俺は友達来るの待たなきゃだし」

「はいっ」


 もし話が漏れてセクハラ男が突撃してきたら、それこそ刑事告訴の件をチラつかせればいい。ブチギレるか誤魔化そうとするだろうけど、そうなったら徹底的に詰めるだけ。自分が悪いのなんて本人が一番分かってるはずだしね。


「お祝いLINEたくさん来ました! ただ……お父さんが大ブチギレちゃってて……」


 嬉し泣きしている美夏さんが、ちょっと複雑な表情を浮かべた。


「お義父さんの説得は任せて。なんとかなるって。ドラマでも娘の結婚に父親が複雑な顔するのテンプレじゃん」

「俺も気持ちは分からんけど、まあそうなんだろうな」


「両親とは今度レストランで顔合わせすることになりました。上司はまだ知らないみたいで……」

「そのうちバレるだろうけど問題ナシ。面倒なら結婚の準備で~とか言っといて会社休んじゃえば?」

「はい! そうします!」


「お前……マジで凄いのか何なのか意味不明だわ……」

「自分を幸せにできない奴が他人を幸せにできるわけないじゃん? だから俺は美夏さんと一緒に幸せになるの」

「はい! 一緒に幸せになりましょうね!」


「いちゃついたら即帰るからな」

「まだ美夏さんに恋愛感情はないよ? でも味方枠には入ったかな」


「酷い奴だなホント……」

「事実じゃない言葉は言えない主義だから。必要なら嘘吐くけど、自分に関する嘘は嫌だし」


「お前さ、ホント常に自分中心だよな」

「今どん底だけどさ、底ってことはこれから上がる未来しかないじゃん」


「ポジティブというか何というか……メンタル最強かよ」


 美夏さんは嬉しそうに微笑んでいる。


「美夏さん、俺の名言聴いた? 俺が幸せになるには、美夏さんが幸せにならないとダメなの。だからあのセクハラ男のことは忘れなよ」

「はい……! あなた!」


「あ、騒がしくしてすみませ~ん! プロポーズ成功しまして、これから入籍なんですよ~!」


 周りの人たちに愛想を振りまきながら、大オーバーにジェスチャーしてみせた。


「サイコパスでも、私はあなたの優しさに懸けます!」


 よし、完璧。

 生活費ゲット。


 さあ、結婚して慰謝料ガッポリむしり取りますか。

 あのセクハラ男のことだから、美夏さんに社内での口止めとか、またちょっかい出そうとしてくるかもね。

 しっかり証拠押さえて、さらに追い詰めますか。

 用心深そうだし、会うとしたら場所は選ばないとね。

 盗撮カメラ買う金はないから、店の防犯カメラをフル活用。

 これも開示請求一発。

 通るか分かんないけど、ダメならダメでそれまで。

 こっそりボイス録音するだけならスマホで十分だしね。


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