第4話 サイコパスは悩まない
「ういー、はよ」
真治が起きてきた。
俺は絶賛、朝飯の準備中。
「おう」
今日の献立はオートミールに……おっと、招かれざる客の登場だね。
無粋なお客さんには即退場していただこう。
「お前……今Gを素手で……!?」
「大丈夫だって。今手洗ってるし、このあとアルコール消毒もするから問題ナシ」
「いやそういう問題じゃなくて気持ち悪くねーの!?」
「なんで? カブトムシ触れるなら基本同じ虫じゃん」
「理屈じゃねーんだよ!」
「素手が一番仕留められる確率高いんだって。殺虫剤とか体に良くないし」
「殺虫剤は毒だけど人体に影響出ないようにテストされてっから! いやマジでそういう問題じゃねーわ!」
「丸めた新聞紙で叩くのも素手で叩くのも大差なくね?」
「あーもういいわ! 汚れるの俺の手じゃねーし。……なんか一気に食欲失せたわ」
「キレイに洗ったってば」
「お前のこと理解した気になってたけどマジで勘違いだったわ。お前さ、殺すことに快感とか覚えてないよね?」
「覚えないね。まあ罪悪感もないけど」
「血見るのとかは?」
「暴力は嫌いだけど、血見て気分悪くなるとかないかな。別にテンション上がったりもしないけど」
「……小説は楽しいって言ってたよな。どのへんが楽しいの?」
「うーん、やったことない新しい体験だからかな」
「知的好奇心に快感覚えるタイプかよ。マッドサイエンティストかよお前」
「まあそうかもね」
「お前がフツーに法律とかルール守る奴でマジでよかったわ……」
「そりゃね」
「そんな新しいこと好きなら雑学王になってクイズ大会で賞金稼ぐとかさ、六法全書丸暗記して司法試験受けてみろよ」
「すぐ飽きるし。てか暗記とか一番キライ」
「まあ小説、気に入ってんならそれでいっか」
「うん、それでいいと思うよ」
なんだかんだ言いながら真治は朝飯をフツーに完食して大学へ向かった。
さて、投稿した小説のチェックでもしてみますか。
あれっ……『作家になりたい』ってジャンル別で1位になってんじゃん。
『ヨミカキ』ジャンル別でも55位。
『作家になりたい』のポイントは60ポイント。
……少なっ。
どうやら作品数自体が少ない過疎ジャンルっぽいね。
一応真治にLINEしてみたら、『おめでと』って返信と、『学食奢ってやるから大学来いよ』って来た。
行くか。
大学には案外あっさり着いて、学生に学食の場所聞きながら向かう。
「おーい、こっちこっち!」
真治が俺を見つけて手を振ってきた。
テーブルついたら真治が飯取りに行ってくれて、日替わり定食ふたつ持って戻ってきた。
「実質、初投稿で1位かよ」
「まあ一日天下だけどね。運がよかっただけだし」
「それでもフツーに凄いだろ。『オタクゾンビ無双する』だっけ? 内容どんな感じなん?」
「読めよって言いたいところだけど、超ざっくり説明ね。ゾンビに噛まれた主人公が、電気で武器作ろうとして感電すんの。で、起きたら超人化してて。理由はゾンビウイルスが実はどこかの国の軍が極秘開発したバイオナノマシンだったから。タンパク質だけど一応電気信号で動くから、電気ショックで偶然バグった……」
「ストップ、もうお腹いっぱい。で、稼げた広告収入はどんくらい?」
「振り込まれてみないと分かんないけど、ざっくり計算で10円くらいかな」
「っ少な!!」
「うん、ジャンル選び完全にミスったわ。これじゃ食材すら買えん」
「次はちゃんとバズりそうなトレンドジャンルやれよな」
「そう言うと思ってプリンターで出してきた。タイトルは『ワイのブラックすぎるギルド、異世界行ったらホワイト化してまじ神。役所がまじで怖すぎてさ、普通に残業代払っただけなのにイミフ。「【死の行進魔法】。プロクロ(皆殺し)まで、オールで戦うぞ!」「おう!!」』、『満足度アゲアゲで通販スキルで殴る。☆5リピ確まで僕は君を殴るのをやり抜く一択』のふたつ」
作品の簡単な設定資料を真治が読み込む。
「バズるかどうかは分かんねーけど、とりあえず書いてみろよ。その作品、完結するまでは部屋から追い出さないでやるから」
「あざす」
「ところで昨日の夜助けたお姉さんの連絡先とか聞いた?」
「意識不明で救急車運ばれたから聞いてない」
「命の恩人なんだからさ、ワンチャン彼女になって貢いでくれたかもしれないのに」
「あんな勢いで飲むとか、見るからにヤバそうな雰囲気出てたけどね」
「まあな。サイコパスのお前がヤバいって言うレベルなら、マジで地雷女かもな」
「そういう感じじゃなくて、どっちかっていうと『ダメンズ・ホイホイ』って感じかな。俺に声かけてきたし」
「あー……なるほどね」
「でも、ちょっと面白そうな気もしてんだよね」
「へぇ、どのへんが?」
「悩みが深そうな気がしてさ。俺って全然悩まないじゃん?」
「……お前、マジで人間?」
「サイコパス思考の人間が悩むと思う?」
「まあ、映画に出てくるサイコパスが悩んでる姿とか見たことねーし、そうかもな」
「でしょ」




