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歪《いびつ》な刃~残金0、サイコパス浪人生。免許資格を問われ、「日本国籍」。なぜか小説家を目指す。知り合って間もない好きでもない人に「結婚しよう」。こいつ、ヤバみ~  作者: 喰寝丸太
第1章 サイコパス小説家が生まれた日

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第3話 芯食ってる言葉

 夜中に目が覚めて、なんとなく散歩。

 公園の近く通りかかったら、お姉さんがベンチに座ってた。

 アルコール度数強めの缶チューハイ飲んでるっぽい。

 足元には散乱した大量の空き缶。


 通報しとくか。

 日本の治安が良いのは有名だけど、普通にヤバそうだし。


「ええと、俺は凡太」


 話しかけてみた。


「ふふふ、変な名前ぇ」


 ろれつの回ってない口調でしゃべるお姉さん。


「俺もそう思ってる。平凡でも良いから、太く長く生きてほしいんだってさ」

「美夏。美しくもないし、夏みたいに情熱的でもないけど」


「そんな勢いで飲んだらマジでヤバいよ」

「飲まなきゃやってられないの。ほっといてよ」


「俺っていま小説書いてんだけど、葛藤とか悩みがマジで分かんないんだよね」

「へぇ、今まで一度も悩んだり後悔したことないんだ?」


「まあね」

「私よりあんたの方がよっぽどヤバいでしょ」


「みんなから言われる。サイコパスだって」

「作家さんなの?」


「いや作家の卵ですらなくて、まだ産み落とされてもない」

「それなのに悩まないの?」


「だって、解決方法をいくつか考えて、やるじゃん。ダメなら、出来そうな人に頼む。それでもダメなら心の片隅に置いといて、ひらめくまで放置。お金と時間が解決してくれることも多いしね。それで万事解決」

「恋愛関係は無理でしょ」


「いや、フツーにそれでやってきたけど。彼女が別れようって言ったら、素直に別れてたし。より戻そうって言われたら、問題がなければ元通り」

「好きじゃないのね」


「好きって気持ちがあんま分からないんだよね。これ良いなって気持ちはあるけど。憎しみとか愛情って感情でしょ? 敵には容赦しないけど、敵かどうかは利害関係だから。感情と敵味方は別物」

「恋愛が敵味方にどう関係するのよ」


「一緒に居たいは味方。家族、恋人、友達でもね。許容範囲内ならモブ。損害が我慢できないと敵。感情は好みかな。料理の好き嫌いと一緒。好きな料理を食べ損ねたからって、悩んだりしないでしょ? 味は違っても同じ名前の似たような料理なんて、世の中にたくさんあるし」

「ぶっ飛んでるわね……愛情と料理の好みが一緒って、言ってること理解不能なんだけど。ねぇ、お兄さんも飲む?」


 遠くがちょいピカった。


「お迎えが来たみたい」


 警官が二人到着した。


「通報したのはあなたですか?」

「ご苦労様です。かなり酔ってて危なそうだったので」

「警察呼んだの!? 信じられない! このサイコパス野郎!」

「立てますか?」


「あれっ……」


 お姉さんが立とうとして、崩れるように倒れてガチでヤバい感じ。

 こうなる気がしてたんだよね。


「救急車、手配お願いします。○○公園で、20代女性が急性アルコール中毒です」


「俺、行くから」

「ご協力ありがとうございました」


 部屋に帰ると、ドアの音で目が覚めたのか真治が起きてきた。


「飲んだのか?」

「ごめん、起こしちゃった。飲んでないよ。急アルで倒れた人を助けてた」


「お前、俺も助けてくれたよな。なんでなんだよ?」

「ええと、俺が嫌だから。スルーして後でニュースになったりして、それを目にするのが嫌なんだよね。後悔ってわけじゃないけど、なんか気まずいし面倒くさいから、無理」


「自分のためかよ……命の恩人なのは感謝してるけど、イマイチ納得いかねぇわ」

「善意では動かないね」


「サークルの飲み会で潰れて、見捨てられて俺もマジでヤバかったからな。改めてありがとな。動機がそれだとしても、恩人なのは変わらないし」

「どういたしまして」


「ゲロ臭かったろ。よくスルーしなかったな」

「シャワー浴びてシャンプーで洗えば、ゲロの匂いは落ちるし。心の匂いはシャワーじゃ落ちないからね」


「小説家気取りかよ。ちょい、エモい言葉だな。居候させてくれって言ったとき、俺が部屋に入れなかったら恨んでた?」

「ぜんぜん。ホームレス支援団体にでも駆け込んでたよ」


「ホームレスって……プライドとかねーのかよ」

「ないね。家なし、金なし。これってフツーにホームレスでしょ」


「そうだけどさ……当たり前を素直に認められないのがフツーなんだよ」

「ふーん、そうなの」


「お前って、芸人のギャグみたいに分かりやすく面白いわけじゃないんだけどさ。『日本国籍』とか『製造物責任法』とか、アレはそのまんまだよな」

「そうかも」


「エモいというより、芯食ってるっていうか、まさに言語化の鬼」

「傷つけるから普段はボカしてるけど、そうかもね」


「ちょっとだけ、お前が理解できた気がするわ」

「俺は真治が理解できないけどね」


「なんでよ?」

「命の恩人とか言っても、意識確認して救急車呼んだだけでしょ。損得の天秤が釣り合ってないじゃん」


「釣り合ってんだよ。命はお金じゃないだろ」

「じゃ、もっと金貸して」


「貸せるかよ! 俺も苦学生だから金ねーんだって」

「知ってたよ。風呂ついてないし。そう言えば、毎日風呂に入りたいな」


「銭湯なんて高くて無理だぞ」

「いい方法がいくつかある。調べておいた」


「サイコパス的な解決方法か……なんかヤバそうだな」

「明日になったら楽しみにしてて」


「ふわぁ……じゃ寝直すわ」

「うん」


 なんとなく、いい夢が見れそうな気がする。


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