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歪《いびつ》な刃~残金0、サイコパス浪人生。免許資格を問われ、「日本国籍」。なぜか小説家を目指す。知り合って間もない好きでもない人に「結婚しよう」。こいつ、ヤバみ~  作者: 喰寝丸太
第1章 サイコパス小説家が生まれた日

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第2話 小学校からやり直せ

「ただいまー」


 真治が大学から帰ってきた。


「ういー」


「凡太、エアコン使ってもいいんだぞ? 電気代の半分は出世払いでいいし」

「扇風機の後ろに、水入れて凍らせたペットボトル置いとくとフツーに涼しいし」


「……ほんの少しな。つか首にも氷巻いてんじゃん。お前、それコンドーさん?」

「ゴムの期限切れそうだったから、使わないともったいないと思って。高校のときに貰ったやつ」


「貸した千円で小麦粉買ってきたの?」

「うん、700グラム150円」


「こっちは?」

「オートミール、1キロ323円。米と同じと思えばマジお得。5キロ約1600円だし」


「値段的にもフツーの安い米とあんま変わんないな」

「オートミールってジュースでも何でもブチ込んで、4時間冷蔵庫に入れとけば完成するから。癖あるけど俺は好き」


「で、小説は書けたん?」

「まあね。『オタクゾンビ無双する』って作品を『作家になりたい』と『ヨミカキ』ってサイトに凸ってきた」


「どれどれ……あ、コメントついてんじゃん」


 真治がマウスをカチカチやってクリック。


【小説になってない】

【これは酷い】

【小学校からやり直せ】


「えーっと、第1話にアンチコメが3つね」


「こいつら煽りすぎだろ! ダチをバカにすんなし。どうせお前ら夢とかねーんだろ? だから……」

「真治がキレることないって」


「悔しくないわけ?」

「ぜんぜん。初投稿だし、こんなもんっしょ」


「まあそうだけどさー……俺がなんか悔しいわ」

「返信書いてポチっとな」


「なんて書いたの? 『ならお前が書いてみろよ』とかレスバ仕掛けた?」

「理由教えてって送っといた」


「あ、次の話に速攻で同じやつからコメきたわ」


【句読点ぐらい打てよ。それと字下げ】


「言われてみれば打ってなかったわ」


「ちょい待て。アンチコメ様、お前らが全否定で正しいわ。俺が悪かった。なんで打ってねーの?」

「えっと、俺って小学生のとき国語の成績マジで最底辺だったから」


「それ何の関係があんの……高校では50点取れてたんだろ? 国語で最初に詰まったの何なの?」

「笑わない?」


「おう」

「自分の名前書けなかった」


「発達が遅れてたとか?」

「いや、鏡文字的なやつを半分くらい使ってたから」


「それってアレじゃん、天才のやつじゃん」

「ちゃうっぽい」


「どう違うの?」

「今思うと、書き順的にそっちのが書きやすかっただけ。だって鏡文字でも解読できるでしょ?」


「まあ左右反転してても読めはするけどさ……」

「でしょ?」


「もしかして、句読点打たなかったのも読めば意味分かるから?」

「まあそんな感じ」


「このサイコパスが! 基本ルールだろ! もしかしてルール(笑)とか言うタイプ?」

「法律とかルールはフツーに守るよ」


「それ聞いて安心したわ。句読点と字下げはルールだからな?」

「修正してみるわ」


 修正スタート。

 句読点を適当に打ち込んで、さっき公開したやつ消して予約投稿完了。


「飯にしよーぜ」


 真治が速攻でくつろぎモードに入りながら言った。


「うどん打ったんだけど食う?」


「うどん作ったの!? どうやって?」

「ボウルと、すりこ木と、コタツの板と、紙と、包丁。材料は小麦粉と水と塩」


「そんなんで打てるわけねーだろ!」

「うん、クソ短いうどんだけどね」


 茹で上がったうどんを見て真治が爆笑する。


「ギャハハ! 長さといいビジュアルといい、どう見ても虫じゃん!」

「イヤなら俺が食うし。製造物責任法的な?」


「製造物責任法は草。ほんとお前、センス独特すぎるわ。俺も食うわ」

「50円ね」


「金取るんかい! まあ安いからいいけど……あ、手打ちの茹でたてマジでうまっ!」

「真治、お前泣いてんじゃん。そんな美味かった?」


「俺、おばあちゃんっ子だったからさ……ばあちゃんの味に超そっくりなんだよ」

「ふーん」


「俺、カップ麺食いたかったのにさ、ばあちゃんが体に悪いからって……それで……ばあちゃん、そのときもう……。……あー、今のナシ! 忘れて!」

「それってマズいってディスられてんのか、美味いって褒められてんのか分かんねーんだけど」


「お前はエモい味とかないの? サイコパスだから気にしない感じ?」

「前に食ったことあるなーとは思うけど、別にエモくはならないかな」


「かわいそうな奴だな……」

「ありがと」


「何がありがとうなんだよ」

「俺のこと心配してくれたってことでしょ?」


「微妙に違うわ!」

「えーっと、優越感と哀れみ?」


「なんで感動しない癖に俺のメンタル正確に察してんだよ!」

「まあそんな感じかなーって」


「一部当たってんのが腹立つわ。サトリみたいな妖怪には程遠いけどな!」


 鼻水垂らしまくってる真治。


「はいはい。ほら、ティッシュ」


 俺が渡したティッシュで真治が鼻かんで、急にちょっとマジな顔になった。


「お前、やっぱ小説家とか絶対無理だわ。まあ、うどん屋も無理だけど」

「知ってる」


「知っててやってんの!? マジ意味不なんだけど」

「小説はなんか面白そうだから。うどん気に入ったっぽいし、たまに打ってあげるよ。50円払ってね」


「冗談じゃなかったのかよ!」

「ダチ価格なんだから払いなよ」


「はいはい、ごちそうさまでしたー」


 真治が50円玉をコタツにぽんと置いた。

 どうやら、真治とはフツーに上手くやっていけそうだ。

 生活はマジで底辺。

 真治にゴリゴリに寄生して生きてるけど、上京して初めて『楽しい』って思えた気がする。


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