第1話 マジ頼む! 泊めてくれって!
「真治、マジ頼む! 泊めてくれって!」
俺はマジで最後の希望の真治が住んでるボロアパートのドアを、ガチでガンガン叩いた。
「凡太、そんな叩かなくてもフツーに聞こえてっから」
真治がちょっとウザそうにドアを開けてくれた。
「マジで行くとこねーし、金もマジでゼロなんだって」
「とりあえず入れよ」
テーブル代わりの家具コタツに速攻で座る。
真治はインスタントコーヒー淹れてくれて、目の前に座った。
「で、泊めてくれんの?」
「金ないなら働くっきゃねーだろ。まあ1日……いや、3日くらいなら泊めてやるけど」
「それが無理なんだって! 身分証ねーからバイトすらできん」
「親に泣きつけば?」
「絶交してんだってマジで」
「どうせお前が悪いんだろ」
事情話したら真治がマジギレして、そのまま口喧嘩。
「はぁ……はぁ……真治、マジで頼むって」
「はぁ……はぁ……呆れて何も言えねぇわ。浪人してんなら予備校くらいちゃんと行けよな。……まあシャバいし、大学のダチのコネで身分証いらないバイト探してやるよ。つか免許とか資格とか何持ってんの?」
「日本国籍」
「お前マジでふざけてんの!? はぁ……もう疲れたわ。つか」
真治はPCでググりはじめた。
「何調べてんの?」
「いや、日本国籍取る条件って色々あんだなと思って。絶対ではないけど日本語能力が必要らしい」
「ふんふん」
「お前さ、小説家になれよ。サイコパス思考とか言ってたし、ワンチャン特技かもよ? 活かせって。フツーさ、免許とか資格聞かれて『日本国籍』とか出てこねぇから。ワンチャン向いてるんじゃね? 広告収入も入るらしいし」
「お、やってみるわ」
「軽っ! マジでバカだと思うけど、昔の俳優の下積み時代的な? ああいうのインタビューとか見てて、なんか面白そうだなと思ってたし」
「わかる、それマジでわかるわ」
「俺は絶対やりたくねぇからお前がやれよ。居候させてやっから俺を楽しませろよな。将来お前が有名になったらドヤれるし」
俺、どうやら小説家目指すことになったっぽい。
まぁ居候させてくれるなら文章書くくらい余裕っしょ。
「で、計画は?」
「荷物に予備校行ってたときのノートあんだろ? 見せろよ。お前の文章力知りたいし」
「はいこれね」
「おいマジかよ、全部白紙じゃん」
「小学生のときからずっとこれだから」
「これで家とか塾で勉強してたとか言わねぇよな? 言わなくても察するわ。予備校サボる奴が勉強するわけねぇし」
「勉強とか一回もしたことない」
「なんでドヤ顔なんだよ。義務教育は百歩譲っていいとして、高校どうしたんだよ? 名前書けば卒業できるレベルの底辺校じゃないだろ?」
「フツーの進学校だけど」
「ちょっと待て、一回も勉強しないでどうやって乗り切ったん?」
「授業聞いてたから」
「聞くだけで卒業できんなら誰でもやってるわ! お前天才なん?」
「天才なら大学落ちてねーし」
「そりゃそうだな。数学苦手なやつってまず方程式で詰むじゃん。どうやって解いてたの?」
「四則演算だし、だいたいの数字はわかるから、適当に2、3回当てはめて正解なら次行く感じ」
「3回で解けなかったら?」
「フツーに正攻法で解く」
「何ていうか、ある意味天才かもな……待て、文系科目もそれ?」
「まあね。英文とか半分くらい単語分かればあとはノリでいけるし。文法とかtheとかtoみたいな頻出単語の特殊な使い方は授業聞いて覚えた。複数形とか過去形もそんなムズくないし。全部は暗記してないけど」
「そのやり方だと、50点取れればいい方だろ」
「うん、それな」
「高校と同じことを予備校で講義されたからサボったってコト?」
「めっちゃ察しよくね? 親すら理解してくれなかったのに」
「お前マジでヤバいわ。背中にチャックついてない?」
「ついてるかも。首回んないから見えないけど」
「話してるとマジで疲れるわ……今日のご飯は余り物な。1ヶ月前に冷凍して怖くて食えてないやつあるから、お前それな」
「凍ってんなら余裕っしょ」
「家事とかできんの?」
「一通りはいける」
「ヒマなときは掃除とか色々頼むわ。俺が大学行ってる間にやっといて」
「任せて」
家事くらい余裕でしょ。
今まで自炊だったし、いらない家電捨てなきゃよかったな。
リサイクルショップで買った掃除機と炊飯器くらいしか持ってなかったけど。
貧乏だからしゃーない。
予備校の費用払うために親がどんだけ苦労したかも分かってる。
分かってはいるけど、だからって性格なんてそう簡単に変えらんないし。




