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スマホのAIに質問したら異世界に転送された。クエストクリアまで帰れないらしい  作者: おっさんず


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第13話「Fランクの、現実」

「帰るつもりがあるか」



ギルドマスターの声は静かだった。


怒っているわけでも、試しているわけでもない。


ただ、聞いている。



蓮は少し考えた。



深く考える必要はなかった。


答えは最初から決まっていた。



「あります」



「理由は」



「帰る場所があるので」



ギルドマスターが蓮を見た。


何かを測るような目だった。


でも蓮は視線を外さなかった。



「……そうか」



ギルドマスターが手元の紙に何かを書いた。


それから、木の板——登録証を机の上に置いた。



「持っていけ。それがお前の証明になる」



蓮は登録証を手に取った。


軽い。思ったより薄い。


何か刻んである。読めないが、たぶん名前と番号だ。



「Fランクは、できることが限られる」



ギルドマスターが続けた。



「単独での遠出は禁止。戦闘クエストへの単独参加も禁止。まずは簡単な依頼から始めろ」



「わかりました」



「以上だ」



それだけだった。



蓮は立ち上がった。


リエナも立ち上がった。



扉に向かいかけて、足を止めた。



「一つだけ聞いていいですか」



ギルドマスターが顔を上げた。



「転移者の記録——見せてもらうことはできますか」



少し間があった。



「今日はだめだ」



「いつなら」



「また来い」



それきり、ギルドマスターは手元の書類に目を落とした。


追い出すというより——これ以上は今日の話ではない、という感じだった。



蓮は扉を開けて、出た。



―――――――――――――――――



廊下に出ると、リエナが隣に並んだ。



「記録を見たいのか」



「百年前の転移者のことが書いてあるなら」



「ギルドマスターが許可しないと見られない」



「知ってます。だから聞いた」



リエナが少し黙った。



「……急ぐな。ここに来る理由ができた、と思えばいい」



蓮は登録証を見た。


薄い木の板。


これが今の自分のすべてだ——Fランク、何もできない、一番下。



「そうですね」



廊下を抜けて、ギルドの大部屋に戻った。



―――――――――――――――――



大部屋の奥に、掲示板があった。



大きい。壁一面、といっていいくらいの幅がある。


紙がびっしりと貼られている。


いろんな色の紙。いろんな大きさの紙。



蓮は近づいた。



読めない。



当たり前だが、全部文字だ。


翻訳魔法は音にしか乗らない。紙の文字は、ただの記号に見える。



隣にいた男が紙を一枚剥がして、カウンターへ向かった。


あれが依頼を受ける、ということか。



リエナが蓮の隣に立った。



「何か読んでもらえますか。Fランクでできそうなやつ」



「自分で選べ」



「読めないんですけど」



「……そうだったな」



リエナが掲示板を眺めた。



しばらくして、一枚の紙を指さした。


白い紙。他のものより小さい。



「これだ」



「何の依頼ですか」



「町の外れに薬草が生えている場所がある。そこまで行って、決まった種類を摘んで持ち帰る。それだけだ」



「戦闘はないですか」



「ない。ただし指定の草を間違えると意味がない」



「どうやって判別するんですか」



「絵が描いてある」



リエナが紙を手渡してきた。


見ると、確かに下の方に植物の絵が描いてあった。


細かい。葉の形、茎の太さ、葉脈の走り方まで描いてある。



これなら読める。



「これ、受けます」



「カウンターへ持っていけ」



―――――――――――――――――



受付の女性に紙を差し出した。



受付の女性が登録証と紙を見比べた。


それから、何かを台帳に書いた。



「Fランクのクエストだ。一人でも行けるが——」



視線がリエナに動いた。



「連れがいるなら問題ない。報酬は持ち帰った草の量に応じる。期限は三日」



「わかりました」



受け取った紙に、何か印が押されていた。


受理された、ということだろう。



蓮はその紙をメモ帳に挟んだ。



——初めての依頼。


戦闘もない。ただ草を摘んで持ち帰るだけ。


それでも、Fランクの自分にできることは今これしかない。



リエナが出口に向かって歩き出した。



蓮はその後に続こうとして——



スマホが、振動した。



取り出した。



QUEST #003「██████」


 進捗:██░░░░░░░░░░ 17%



画面を見た。



動いた。



文字化けは変わっていない。


クエスト名はまだ読めない。


でも進捗バーが、初めてゼロから動いた。



「どうした」



リエナが振り返った。



「クエストが、動きました」



リエナが蓮の手元を覗き込んだ。


画面を見て、それから蓮を見た。



「……何をしたら動いた」



「ギルドに登録した。それだけです」



二人で少しの間、画面を見ていた。



文字化けしたクエスト名は、まだ黒い塗りつぶしのままだった。

Fランクスタート、最弱からの出発です。


「帰るつもりがあるか」——蓮の答え、どう感じましたか。


そして文字化けしたQUESTがついに動き始めました。ギルド登録がトリガーだったのか、それとも別の何かか。


次話は初めての依頼へ。薬草採取、シンプルに見えて……?


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