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第七章 シャルル

 国王シャルルは、二十歳という実年齢よりも幾分落ち着いて見えたのだが、口を開くなり第一印象は見事に覆された。

「うわー、ほんとに綺麗だねぇ! 女性だったら即侍女にするのに」

「陛下……」

 フェオドールすら、この国王には辟易させられているようだった。苦い顔でこめかみを揉んでいる。ミシェールはといえば、希有すぎるその光景とシャルルの押しの強さに完全に硬直していた。

「会うのを楽しみにしていたんだよ。どうしても頼みたいことがあって」

 昼食を楽しむ貴族の輪からこっそり連れ出され、ミシェールが通されたのがこの部屋だった。

 天井がゆったりと高く白い壁と柔らかな茶色の絨毯に包まれた、くつろげる雰囲気の室内にただ一人、狩猟用のシャツとズボンのままのシャルルが待っていたのだ。人払いをしてしまったらしい。

「陛下、説明は私が」

「何だ、まだ話してなかったのか。まあ座ってくれ」

 金茶の髪をうるさそうに掻き上げながら、屈託なく笑う榛色の目。その人実でミシェールを真っ直ぐ見つめて、しばらく彼はいろいろなことを話しかけたが、人なつこい物腰と明るい話題はミシェールの緊張をゆっくりとほぐしていた。

「ん……世間話が長くなったな」

 何杯目かのお茶のお代わりを自分で注ぎながら、シャルルは口調を変えた。

「君の一族のことは知っている。直接見たことはないけれどね」

 ぎくりとしたが、彼はいたわるようにミシェールを見つめ、続ける。

「フェオドールに聞いたけど、ぜんぜんそんなことを知らずにいたんだってね。戸惑うのも無理はないと思うし、だからもし気が進まないなら断ってくれてもいい」

 榛の目は真摯そのもので、ミシェールは思わずうなずいていた。

「大切な物をなくしてしまってね。君に手伝ってもらいたいんだ」

「探し物……ですか」

「うん。私個人のことなのだけど」

 彼は隣に座るフェオドールを見た。だが視線を合わせてくれる気配はない。顔をシャルルに戻し、彼は言った。

「何をお探しすればよろしいのですか?」

「指輪なんだ」

 優しげな印象の美貌が、心底困り果てたという表情を浮かべる。

「お祖母様の形見でね。弟か妹が持ち出して遊んでいて、どこかへやってしまったらしいんだよ」

「お二人は……?」

「肖像画で良ければ」

 シャルルは立ち上がり、暖炉の上から小さな額を取ってくる。

「これが弟のルイ。こっちが妹達。シモーヌとテレーズだ」

 年の離れた弟妹達を、指さしながら紹介する。

数年前に描かれた物だろう。前列には子供達、その後ろに前国王ロイス三世と王太后が微笑んでいる。

「直接会わなければ描けないかな?」

「いいえ。問題ないかと」

 答えたのは、フェオドールだった。

「力を強化させる術がございます」

 初耳だった。

「その絵をお借りしてもよろしいでしょうか、陛下?」

「ああ。もちろん」

 シャルルは、フェオドールからミシェールに視線を移し、微笑んでうなずきかけてきた。

 こんな風にこの力を使う機会があるとは、少しも考えていなかった。横目でこっそりと、ミシェールはフェオドールを伺う。

 本当に、この人はわからない。

 でもきっと、困っている国王の願いは叶えよう。こんな形で、自分の力を役立てられるのなら嬉しい。

「では、私達はこれで」

「うん。来てくれてありがとう」

 最後まで親しげだった王の部屋を辞し、彫刻や美術品の飾られた廊下を二人は無言で進んだ。

 フェオドールの屋敷が質素すぎるためか、一面に模様の描かれた天井にまで及ぶ金の柱の彫刻や一度に数十人が歩けそうなほどの広さに、ここへ来る時には驚くよりも圧倒されてしまった。

「お優しそうな方ですね」

「ああ」

 天井の高い廊下で声が響かないように気をつけて囁くと、いつも通りの端的な答えが返ってくる。

「ご生誕の時は病弱で心配されていたが、今はそれが嘘のようにご健勝でいらっしゃる。あとは早く他国の王族かどこかから王妃をという声が上がっているが、ご本人はいたって鷹揚に構えていらっしゃるものだから、王太后様が頭を痛めておいでだ」

 思わずミシェールはくすりと笑ってしまったが、黒髪の青年は眉一つ動かさない。立ち止まり、前だけを見ている。

 その目が捉えているものを、すぐに彼も認めた。

「侯爵。ご無沙汰しております」

 壮年の、がっしりした体躯の男だ。黒髪に白いものが混じり始めているが、老け込んだ印象はなく青い瞳は知性的な光をたたえている。

 その目が、食い入るようにミシェールを凝視していた。

 ミシェールは、思わず一歩後ずさる。視線に圧力があることを、初めて知った。

 なぜ、こんな目で。

 思わず、自分の腕を抱く。

「失礼、火急の用事がございますので」

 フェオドールは丁寧に会釈して、ミシェールの腕を引いて足早に男のそばを通り過ぎた。

 視線が追ってくるのを、ミシェールは背中で感じた。なぜ初対面の相手にこんな風に見られるのだろうと思ったが振り返るだけの勇気はなく、角を曲がってしまうとほっとした。

「フェオドール様、あの方は……?」

 質問は、しかしフェオドールに黙殺された。

「早く戻るぞ。陛下の願いを叶えて差し上げろ」

「はい」

 足を速める彼を懸命に追いながら、ミシェールはぼんやりと不安だった。

 直接目にした人物に関することしか、今まで描いたことはない。

 描けるのだろうか。

 目の前の心配事で頭がいっぱいになり、男のことはそれきり忘れてしまった。



 夕食のあと、ミシェールはすぐアトリエに籠もった。

 部屋の隅に香炉が置かれ、香の煙がゆるゆると立ち上っている。どこか懐かしい甘い香りが、油絵の匂いと混ざり合いゆっくりと満ちていく。

 眠い。

 危うく画布に倒れ込みそうなのを何とか堪えているが、これでは絵筆を動かすこともできない。

 フェオドールは、この香りがブランの力を強めるのだと言っていた。調合が難しく、材料がなかなか揃わなかったために、作るのに時間がかかったらしい。

 イーゼルの右側においた、王家の肖像画を見やる。やはり、ただの絵だ。描かれた虚像に過ぎない。人を描くとき、秘められた時を暴くときのあの感覚が、やってこない。

 背中に、何かが触れた。

 振り返るのも億劫でじっとしていると、筆を持つ彼の手に白く小さなそれが重ねられた。

 のぞき込んでくる青い瞳。

 リュンヌ。

 だが、ありえない。あの少女が、こんなところにいるはずがない。

 どうして、とミシェールは問おうとしたが、唇は動かなかった。

 ゆっくりと、彼女の青が近づいてくる。

 額同士が、触れ合う。

 ミシェールの意識は、そこで途絶えた。



 この力で絵を描いてしまった、あのとき。

 小さな村だから、すぐに噂は広まった。

 そして、人々が首をかしげだすのも早かった。

 村長の妻のことをミシェールに話したという者は、当然の事ながら一人もいなかった。銀貨を見つけ出したとき、そばにいたあの母子ですらテーブルの下へ落ち込んだことを気づけなかった。

 なのにどうやってあんな絵を描いたのか、どうしてわかったのかと尋ねられるたび、彼は怯えた。答えを持たないことに、何より村人達のまなざしに。

 お前はいったい何なのだ。

 そう言われているような気がしたから。

 村長は喜んでいた。子供もミシェールに感謝した。けれどそれは初めのうちだけ。

 いつしか薄気味悪そうに、彼らはミシェールを避けるようになった。

 話し好きの肉屋は、ミシェールに物を売るときは無口になった。

 同い年の村の子供達は、話の輪の中に彼を招かなくなった。

 村長の妻。銀貨。誰も知らないはずのことを、あれだけ正確に知り得た理由。それがわからないことが村人に不審と不安を植え付けたのだと、ずいぶん後で理解した。

 不透明なことは、疑心暗鬼を呼ぶ。

 為す術を持たなかった彼は、だから逃げ出すことしかできなかったのだ。

 村を出て。一人で絵を描いて暮らして。

 それでも苦しくて、彼は走った。

 真っ暗だ。夜なのだろうか。闇女神イーリアは、今宵は月も星もすべて覆い隠してしまったのか。

 人が悪夢に捕らわれるのは、イーリアの鏡の加護を受けられないからだ。夜闇に煌々と掲げられた銀の光は生き物を癒し、女神は悪い夢を宝石に変え天に飾るという。

 ならば、今夜は不吉なのだ。

 ただひた走ることしかできない青年は、切れ切れに喘ぎながら必死に足を動かした。目が闇に慣れてくれない。進んでいるのかすらわからなくなる。

 とにかくどこかへ辿りつきたい。ここにはいたくなかった。

 突然、身体中の血が凍る。永遠に出られないのではないかという考えが、早くなる鼓動に呼応するかのように彼を浸食した。

 意味を為さない叫びが、喉からほとばしる。腕を振り回し、もつれる足をさらに叱咤して、前を目指す。

 怖い。

 誰か。

 彼は、手を伸ばした。

 指先が、暗闇をかすめる。

 足のつま先が何かにぶつかり、大きく体勢が崩れる。

 倒れる、ときつく目を閉じた。

 しかし、痛みも衝撃もいつまで経ってもやってこない。

「ミシェールか?」

 聞き覚えのある声の、聞いたこともないような響き。

 ゆっくりと瞼を持ち上げたミシェールは、まばゆい銀の煌めきに目を射られて顔を腕でかばった。

 目の前にあった大きな窓から、光は奔流のような勢いで音もなく流れ込んでいた。

「そうか……心だけで来たのだな」

 月光が人の形に切り取られる。深く濃い影を纏い、青年は彼のそばに膝をついた。

 薄い絹の夜着。彼は青年の名を呼ぼうとしたが、声は出なかった。

「香のせいなのだろうな。急激に力を引き出したから」

 淡い影の中で、青年は柔らかく微笑んだようだった。

「もう戻れ。誘導してやる」

 ミシェールは戸惑った。ひどく不安になる。この人は、なぜこんなに疲れ切って見えるのだろう。

 フェオドール様、と呼びかけたかった。なのにどうしても声になってくれない。

「これは夢だ」

 フェオドールの手が、胸の辺りに置かれる。そのまま、とん、と後ろに押しやられそうになる。

 その腕を、咄嗟に掴んだ。

「……どうした?」

 言葉を紡げないもどかしさに、ミシェールは唇を引き結んだ。首を横に振り、月影の中の彼に目を凝らす。

 これは夢なのかもしれない。銀の光が見せる幻なのかもしれない。

 どちらでも、かまわない。

 両腕を差し伸べ、彼の頭をそっと抱きしめる。頬に触れる黒髪の感触が儚く、胸が締めつけられた。

「……おかしなやつだな」

 苦笑混じりの呟き。けれどフェオドールは抗わなかった。

 彼の名を呼びたかった。

「私に触れ、私の心を問うてきた者は、お前が初めてだ」

 背中に、彼の手を感じる。

「何がしたいのだろうな……私にもわからない。知ろうとしたこともなかった」

 ミシェールの中に、悲しい気持ちが落ちてくる。雫のように。

「時々、いらだたしくてたまらなくなる。欲することすらしたくないはずのものに、無性に手を伸ばしたくなる」

 抱擁の腕に力を込めると、すすり泣きのような吐息が聞こえた。

「もし……私が今のすべてを捨てるとしたら、お前は」

 唐突に、言葉は途切れる。何と続けたかったのかわからないまま、ミシェールはうなずいていた。

 フェオドールが、弾かれたように顔を上げる。影を振り落とした顔は、ひどく憔悴して悲しげで、消えてしまいそうに見えた。

 だが一瞬で、それは幻のように溶けてしまう。

「戻れ。そして忘れろ」

 いささか乱暴に、突き飛ばされる。背を向けてしまった彼が、どんどん遠ざかっていく。

「世迷い言だ……できるはずもない」

 最後に聞いた呟きが、苦渋に満ちていて。

 なぜ彼に惹かれるのか、わかったような気がした。

 彼は、孤独なのだ。

 ミシェールがこの数年抱き続けてきたのと同じ寂寥に、彼もまた苛まれているのだ。

 どうすればいいのだろう。何をすれば、あの人は。

 闇の中を流される。どんどん彼が遠ざかっていく。

 どうしても、名前が呼べない。

 手を伸ばした彼の周りで、闇が途切れる。

 白い。

 何もない。

 顔を巡らせて、ミシェールはただ一つ人影を見出す。

 女がいた。

 不安に泣き出しそうな顔で、彼女は必死に本をめくっていた。

 あの本は、見覚えがある。

 ミシェールが見たものは、もっと古くなって装丁もみすぼらしくなっていたけれど。

 女が、顔を上げた。

 目が合う。

 その顔を、ミシェールはよく知っていた。記憶にあるものよりずいぶん若く、最近改めて絵姿で見せられた。

 母さん、と呼びかけた瞬間。

 世界は回転した。目を開けたところにあったのは、見慣れた天井。

 彼は寝台に横たわっていた。窓からたっぷりと入ってくる光が、今が朝であることを教えてくれていた。


 

 男の突然の訪問に、アラゴン伯爵は面食らいつつも彼を迎え入れた。

「どうかしたのかな? 顔色が悪い」

「伯爵……もうしわけありません、突然このような」

「いや、それはかまわないのだが」

 男は召使いの運んできた水を飲んで、ようやく落ち着いたようだった。

 いつも取り乱したりしない男にしては、珍しいことだ。ふと既視感に捕らわれて、少し前にオラニエ男爵もまた、こんな風に自分を訪ねてきたことを思い出す。

 何かの符丁だろうか。

「いったい何があった?」

「先ほど、陛下に謁見を賜ったのですが。そのときにオーランシュ公爵とすれ違いました。彼の連れていた従者、伯爵はご覧になったことがあるかは存じませんが、実は――」

 伯爵はうなずいた。やはり、と思うのと同時に男に同情を覚える。

 それでは、この男はよほど驚いたことだろう。

「ブランの青年だな?」

「一目でわかりました。よく似ている……アンヌ・ブランに」

 重苦しい溜息が、男の口をついて出た。

「詳しいことは、調べているところだが。出身がわかったので近日中に知らせが来ると思う」

「そうですか」

 男は、どこかほっとしたように笑った。服の乱れを尚も直しつつ、彼は続ける。

「彼は知っているのでしょうか。あの事件を」

「どうかな。アンヌが話すとも思えん。聞いていたとしても、オーランシュ公爵の口からだろう」

 結局、黒幕は明らかにならないままだったあの事件。証拠がなかったのだ。だが、最も疑わしかった男が国王に疎まれ、地位を追われることになった。

 先代のロイス三世も出席していた、パーティーでのことだった。直前まで誰も気づかなかったのだが、ナイフを忍ばせた男が紛れ込んでいたのだ。

 男は、当時のジレ侯爵の右側にいた。

 告発する声が、高く鋭く響いた。

『国王陛下! ジレ侯爵の右手にいる男が、お命を狙っております!』

 銀髪を振り乱し裸足で駆け込んできた娘は、追ってきた衛兵達の腕をかいくぐりながら、侯爵の隣に立つ男を指さし叫んでいた。

 糾弾された男は自暴自棄になったのか侯爵めがけて凶器を振りかざしたが、あのころはまだ騎士だったオラニエに取り押さえられた。

 未然に犯行を防いだ一番の功労者はその混乱に乗じて忽然と姿を消していたが、公爵家に仕えるアンヌ・ブランという娘だと素性だけはすぐにわかった。彼女はその後行方不明になり、男の取り調べや背後関係の調査などの大事に追われて、捜索も打ち切りになった。

 ブランの一族は、長いこと宮廷の影で貴族や王族を脅かしていたが、アンヌの失踪でそれは終わりになったかに思えた。少なくともこの二十年間あまりは、オーランシュ公爵家は存在しないも同然だった。

 捕らえられた男は、取り調べの半ばで何者かに毒を盛られた。

 最も有力な手がかりが断ち切られ、捜査は難航した。

 だが、思いもかけない証言が王都の市民から出てきたのだ。

 オーランシュ公爵家の召使いとよく似た男が、殺された暗殺者と話しているのを見かけたという話だった。

 その召使いはもちろん公爵自身も取り調べを受けたが、何の証拠も出てこなかった。証言者に召使いの首実検をさせてみても、変装でもしていたのか断定はされなかった。

 公爵は釈放された。しかし公の断罪は無理でも、人の心に植え付けられた疑念はどうしようもなかった。

 ロイス三世は、公爵を遠ざけるようになった。もっとも、この事件だけが原因ではなく、それまで公爵が影で行ってきた所業のつけが回ってきたといったところだったのだろう。ブランの力を利用して、彼は王家にまで圧力をかけようとしていた。

 要職を追われ、周囲からの白眼視を受け、公爵は自ら命を絶った。その二年後に、奥方も病で世を去った。

 残された幼い三人の兄弟は、王都から遠い公爵の領地で身を隠すようにして育っていった。

「ロイス陛下は身罷られましたたが、事件の真相を明らかにすることはシャルル陛下も望んでいらっしゃいます」

「そうだな。迷宮入りにしてしまっては示しがつかん」

 今のオーランシュ家の当主はシャルルのはとこに当たり、幼い頃から遊び相手として育った。シャルルも彼には親しみを持っており、先日のように個人的な居間に通すことも多い。

 公私混同をしない王ではあるが、フェオドールは行動に予想がつかないところがある。それに何より、可能性は低いが『あのこと』が暴かれてしまわないとも限らない。

 絶対に隠し通さなければならないことだ。少なくとも、シャルルが退位するまでは。

 アラゴン伯爵は、おぼろげに考えていたことを男にささやいた。

「ブランの青年を、こちらに引き込めないだろうか?」

「何ですって?」

「つい最近オーランシュ公爵家に来たばかりらしい。話の持って行き方では……」

 フェオドールに対する、決め手のカードにできるかもしれない。 

「……陛下のお話では、絵の制作を頼まれたとか」

「画家だったな」

「はい」

 男は、うなずいた。

「近日中に絵を持ってくるだろう。どうする?」

「公爵と引き離して、事件のことを話すべきでは」

「そうだな」

 伯爵は、男を見つめた。

「君の口から話すのが一番いいのではないか? 君ならば彼の警戒を解ける」

「ええ……ですが、閣下のほうがより客観的にお話しできるのでは。あの事件に直接関わりのない立場の誰かが話した方が、信憑性がありましょう」

「ふむ……」

 それもそうかもしれない。

 だがそれにしても、何か口実が必要になる。

 アラゴン伯爵は考え込んだ。



     手記



 すばらしいものをみつけた。これを使えば、何とかなるかもしれない。

 これを何とか、渡したい。私だけでなく、×××(判読不能)のためにもなる。

 ×××(判読不能)がこれを見つけるまでの間、彼をごまかさなければ……。


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