7話
まともな授業があったのは木曜日からで、この一週間で四日ほどしか行っていない。そして来週からは忙しくなる、各部新入生争奪戦が開幕されるからだ。
まぁ、俺にはあんまり関係ないんだけどね、なんせ部活入っていませんから。月道高校は部活に入りたくなければ入らなくても良い、とされている。実際俺は近所の高校に無所属でもよい学校は月道高校しかなかったので月道高校を希望校にしたのだ。
だがこの学校には他校では考えもつかない奇異で意味不明な、酷く言えば存在価値があるのかも危ぶまれるほどの部活もある。
そんなことはさておき、今日は春のくせに寒い、とにかく寒い、時刻は十二時二分。
俺は今義理妹の優子と共にファミリーレストランで昼食をとっていた。まだ肝心の注文が来ていないが。
俺は昔から何故かペペロンチーノが好きで、今日も飽きずにペペロンチーノを頼んだ。だが有美の作ったペペロンチーノ、多種多様な料理の方がファミレス、下手したら高級レストランをも上回る美味さなのだ。
俺が我が物顔で言うのもなんだが。
それに対し優子は、昼間からのハンバーグだ。好きだよなぁコイツ。まぁ、有美の作ったハンバーグの方が絶品だが。
俺も料理は人並みに心得ているつもりなのだが、当たり前のごとく有美の足下にも及ばない。
よし、今日の晩御飯は有美に頼むか。
俺はそう思いながら席を立ちドリンクコーナーへとコーヒーを注ぎに行く。炭酸類、ジュース類はそんなに好まないのでいつもコーヒーだ、マグカップに無糖のコーヒーを注ぐ。何度も言うが有美の作るコーヒーの方が美味い、ここのもほどほどに美味いが。
席へと戻るといつの間にやら自分が頼んでおいたペペロンチーノが置いてあった。
「お先に、……で、この後どこに行くんだ?」
俺は先に断わっておいて、その後どこに行くかを尋ねる。すると優子は考える仕草を取った。
……考えてなかったのかよ。
「服を物色する‼!」
「買わないのか」
「……き、厳しいからねっ」
優子は少し恥ずかしそうに言う。
家では月々お小遣いが父から貰える、俺はあまり小説くらいしか買わないから残金はまだまだある。
……愛する妹のためだ。
「いくつか買ってやるよ」
俺はそう言いコーヒーを飲む、あれ、こんなにも美味くなかったか?
あぁ、出かける前に有美の作ったコーヒーを飲んだからか、味がまだ残っているんだな。
優子をちらりと見ると顔を輝かせていた。
「アリガト、お兄ちゃん」
「おう」
妹の喜ぶ顔が見れたなら良し、俺はそう思った。
・・
十二時四十五分
店を後にした俺と裕子兄妹は、デパートへと赴こうとしていた。
のんびりと歩を進め、この春だというのに寒い天気に向かい心の中で罵倒?していた。
「寒いな」
「ねー」
「もはや真冬だな」
現に優子の服装は黒のツイード、その下にアイボリーのニットと、白いスカート。これぞ冬の服装だ。行きかう人々も冬服を着込んでいる。
曇ってもいない逆に晴れている。地球温暖化なら暖かくなるはずだろ。
「だねー、マフラーは要らないけど」
「なぁ」
そして苦笑。
俺たちの歩は相変わらずのんびりだった。別の話題を無理に探さなくてもいい、ただのんびり、有美と同じ感じだ。
すると、
ドン、と何かが横から飛び出し俺にぶつかった。
ぶつかったのは女性だった、あいにく俺は男なので俺は転ばなかったが、衝突してきた女性は尻もちをついていた。
「キャ!」
「うおっ」
あれ、こいつ。
「大丈夫ですか?」
優子がそう言うと、
「へ、平気です、すみませんでした!」
そう女性は言い走り去って行った。
「戸松……?」
まさかな。
足元を見ると、一つの小さな箱が落ちていた。真っ黒な小さな箱。
「これは?」
優子は俺の手ある箱を覗きこむ。
多分先ほどの女性が落としていったものだろう。……にしてもこの箱やけに重いな、中身は一体何なのだろうか。
俺は不思議に思い箱を開ける。
「ん?」
「何これ?」
中には気味の悪い、暗く紫色の光りを燈す、……結晶らしきモノが入っていた。
見ているだけで気持ちが悪い。
だがその症状は俺だけのようで優子にはそんな現象は見られなかった。
そして俺はついに、その結晶に触れてしまった。
「うわっ」
するとそれは一瞬小さな弱々しい紫の灯を燈し、液体状に変化した。
「キャ!?」
「何だこれ‼」
俺は叫び声を出す、優子は悲鳴と共に半歩身を引いてしまう。
液体は俺の手にまるで意識があるかのように飛び乗り、昨日料理をして包丁で切ってしまった指先の傷口めがけてとてつもない速さで向かう。
「なっ!?」
俺はもう一度叫ぶ。
そしてその瞬間、その液体みたいなモノは、
俺の傷口から体内へと侵入した。
すると不意に心臓が早鐘みたく、ドクンドクンと脈打つ、俺は左胸、心臓あたりに手を当てる、頬に汗が伝う。一瞬の痛みが全身を貫き左胸を強く握る。
視界が安定しない。
優子は俺に驚いたような表情で近づく、そして何かを叫ぶ。
聞こえない。
聴覚が無くなったような感覚がする、しゃべれない、視界も徐々にぼやける、すると口から何かが吐き出される、ちらりと見えたそれは赤い、血らしき液体だった。
ついに優子が血相を変える、携帯電話を取り出し何かを叫んでいる、周りにも人が集まっていた。
そして、ついに俺の意識が、
途絶えた。




