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crystal of hope  作者: 永瀬亜蓮
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5話

 「鬱だ……」

 俺は再度深く深く深くため息をつきぼそりと言う。

 始業式の時にも、先ほども確認していたことなのに改めてコイツ、佐藤真美を見ると気分が沈む。

 先ほどの騒ぎが収まり授業開始合図のチャイム(これは時代が変わっても変わらない)が鳴り、教室へと入ると、俺たち二年二組担当にして最低最悪、極悪非道、泥酔女、変質者、何故教師になれたか不思議に思えてくる独身の(もちろん当人の前で言ったら死ぬ)佐藤はにやにやしながら俺達を見ていた。卑しい奴だ。

「お~い、何ため息ついてんだ、ガキト」

「黙せ」

 ガキトとは俺の事で昨年佐藤が勝手につけた俺のあだ名だ。言うまでもないがガキトの由来は「ガキ」と「和人」をかけたものだ。

 俺は頬杖をついて大型パネルモニタを眺める、大型パネルモニタには汚い字で「班決め・係決め」と書かれている。俺でも何とか解読に成功した。

「ハハハ、アタシは教師だぞ、ボーイ」

 二組の授業を堂々たる態度で一向に進めようとしない佐藤は教卓から俺へと近づいてくる。

「ならさっさと授業をしてくれませんか?」

 俺は心底嫌味たらしく言い佐藤を見返す。

「フッフッフ、上等だ表でろや」

 有美、凜香は心配そうな顔で、その他半分以上は何だかわからないような顔で、残りはまたかよと面白そうに俺と佐藤の言い争いを見ている。見てないで仲裁してくれ、こっちも面倒くさいんだ。

「早く席替えしてください」

 極力嫌味たらしく言えたか?

「はいはい、んじゃ席替えすんぞ~!」

 所所からの歓声、席替えはみんなの学校での楽しみの一つなのだろうか。

 しかし佐藤はため息をつき。

「あ~、メンドイ、面倒だからパパッと自分たちで決めろー」

 沈黙、二組ほぼ全員が唖然としている、予想はしていたが実際場面に直面するとこんなにも脱力感に浸るのか……。

 俺はため息をつき立ち上がる。

「凜香、今年も頼んでいいか?」

 凜香は一瞬顔を綻ばしてくれて、

「仕方がありませんね、貴方がどうしてもと言うなら」

 これは凜香なりの「いいよ」という印だ、一年間で分かったことでもある。

 そして俺は当たり前のごとく有美のもとに行く。

「今年も頼む」

「うんっ」

 有美は即答で微笑んだ、人の話を聞いてないのか、予測できてるのか、これも有美のスタイルでもある、幼馴染だから当たり前のごとく知っている。

「オレも忘れんな~」

「分かってるよ」

 市也もすたすたとこちらに来てはそう言う、こいつはそんな奴。

「これで班はかんせ…… うわぁ」

 俺はそう言いかけたところである光景を見てしまった。

 戸松さんの席周辺に先ほどみたいな人だかり、だが先ほどよりもとても多い、男子でも普通に入っている。

「どうするの、戸松さん」

「助けてやるか?」

 有美は少し考える素振りを見せた後頷いた。

 ……女子Aが出てきませんように……!

「戸松ー、こっち来い!」

 数秒後、

「そういうことなので、はい、すみません…… あの方たちの班に……」

 群れに健気に説得していた。

 しかし群れは納得いかないのか次々に話しかけて、戸松さんの耐久性を失くして諦めさそうとしている。

「何で和人君ばかりなの~?」

 不意に聞こえたその質問、別に俺ばかりではないと思うのだが。そこはスルーしてくれ戸松さん。

「いや、その…… とにかく」


・・


 その後俺たちの班に入るまでに約三分掛かった。

まぁ、何とか班は完成したので佐藤のもとに行き許可を貰い、紙に班の細小を記入と……。

「はい完成」

「紙に書け」

 俺がそう言うも佐藤は紙を雑に渡してきた。

「もう少し優しくできないのか?」

 しかし俺の言葉は佐藤の鼻笑いにより無残に消え去った。

 佐藤は俺にボールペンを寄越した。

 俺はおとなしく班員名の名前を記入欄へと書きこむ……が。

「……班長どうする?」

 第一記入欄にいきなりの不決定事項が現れた。

 俺はみんなの顔を順に見ていく。

「わっ私が務めさせて戴きますわ」

 凜香が少し恐る恐る挙手をする。

「おっ! 宜しく頼むな!」

 俺は凜香に向かい微笑む。すると凜香が頬を紅潮させる。何故?

 そして紙の班長記入欄に凜香の名前を記入。

「副班長…… 俺が務めるよ」

「本当ですのっ!?」

「和くん!?」

「うおっ!?」

 急に有美、凜香が俺の前に体をズイッと寄せる。その急な行動に俺は驚き半歩下がる。

「本当だが…… 何笑ってんだよ?」

 市也を見ると俺達を見てにやにやしていた。

「いや…… お前ってバカだなぁって」

「お前に言われたくない」

 そう言って紙の副班長記入欄に俺の名前を記入する。

 そして残りのメンバーの名前を班員記入欄に記入する。

「ま、こんな感じだけど宜しくな戸松さ……、いや戸松か」

「はいっ、桜づ……和人……さん!」

 俺は苦笑する。

「はい完成」

 俺は完成した紙を佐藤へと渡す。

「しかと受け取った」

 無視。

「座り方どうする?」

 俺達は二班なので一班の後ろだ。

「自由で良いんじゃないんでしょうか?」

「そうするか」

 俺はそう言い窓側の席に座る、俺の席は一番左端の前から三番目だ。すると勢いよく俺の隣に有美が座る。

 凜香たちを見ると何故か渋々俺と有美の後ろへと座りに行った。

 この学校は、男子の隣に男子または女子でも班員だったら誰が座ってもよいとされるルールになっている。なので一班も女子の隣に女子が現にいる。

 そして余った市也は俺の前に座った。その隣は……おぉ一年生の時に同じ組だった、前田美子ではないか、前田は自分のことを何故か僕と呼んでいた、時々話すこともあったので記憶に残っている。

 これで班完成。いつの間にかほかの班も完成していた、合計五班、多い所で七名、少ない所では三名という人数当てだった、なので俺の班はちょうどいいところだろう。

「宜しくな有美」

 席が隣だったので何となくそう言っておく、すると有美はいつも見たく深い笑みで、

「うんっ、宜しくっ!」


・・


 その後佐藤からの話(ほぼ投げやり)を聞き今日は下校になった。

 戸松の家は聞いたところによると俺と有美の家から徒歩八分、以外にも近いことが判明した。これでは市也だけが俺たちの家から逆方向になってしまう。可哀想に。

 琴音さんは生徒会会長としての仕事があるためあまり一緒に帰宅できない。

 まず戸松が帰宅路から外れ、その後凜香とも別れ俺達は数分の歩きの後自宅に到着した。

「じゃあすぐ行くから」

「うん」

 俺達はそう言い互いの自宅へと帰って行った。

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