4話
俺は重い足取りで座り続けたせいで痛んだ腰を叩きながら教室へと続く階段を有美、凜香、市也と共に上っていた。
深い深いため息を一つ俺は零す、理由は先ほどの始業式、入学式(という名の妹の晴れ舞台)にある。
始業式、担任発表の時に俺の組の担当が発表された。すると見事に俺の苦手な、佐藤真美に当たってしまった、一年生の時も担任だったから嫌でも知っている。
佐藤真美、年齢不詳、やる気なしで面倒くさいことは人に押し付ける、極悪非道泥酔独身女の事だ(これを当人の前で言うと消される)。
佐藤のことを考えるだけでまた足取りが重く感じる。
「あ……」
俺の前を進んでいた凜香が通路を曲がったところでふと立ち止まった。
「どうした?」
そう言い俺も通路を曲がる。
「うわ……」
人だかり、多分戸松さんに群がっているのだろう。全員が女子という点がせめてもの救いか。
それにしても可哀そうだな。
「転校生可哀想だな~、ま、オレは優子ちゃんさえいればいいけど~」
「最低だな」
俺のゲンコツ一発。
「あっ、あの……、後にして下さい……!」
戸松さんが完全に困っている。
助け舟でもやるべきか。だが案が無いな……、普通に注意するか。
「おーい、お前ら止めてやれ、困ってるだろうが」
すると勢い良く女子全員が俺の方に振り返った、半ば、いや九割方睨みつける形で。
「う……」
ある女子(以下女子A)が少し俺の方に近づいてきた、そして俺をまじまじ見据える。
「何よ? 戸松さんの何、アンタ?」
「アンタって何よ? ほかに言い方があるんじゃない?」
「有美っ!?」
有美が俺と女子Aの中に割り込んで半ば喧嘩腰にそう言い放った。それに対し俺は焦りまくり。みっともない。
「あら、アタシが誰を何と呼ぼうがアタシの勝手じゃない?」
女子Aは嫌味たらしくにやにやしながら有美に問いかける。
それに対し有美は微動だにしていない。
「それ以前に、戸松さんの事考えてあげてる? 戸松さんはアンタの物じゃ無いのよ?」
ごもっとも。
「アッアンタだってアタシの事アンタって言ってるじゃない!?」
「あら、わたしが誰を何と呼ぼうがわたしの勝手じゃない?」
「ぷっ!」
いかんいかん、つい有美の的確な発言、しかも相手の言葉を引用したことに笑いが抑えきれなかった。
女子Aの顔はみるみる赤くなっていく。
「ッ‼ わっわかったわよ‼」
女子Aは慌てて教室へと逃げ帰った。
「ぷくくく……」
笑いを噛み殺すもまた俺の口から笑声が発せられた。
「……」
有美は無言で女子の残党を眺める。無言のプレッシャー、圧力。恐ろしい。
数秒の無言格闘の末、残党は教室へと逃げ帰ってしまった。
俺は必死で笑いを噛み殺し肩を震わせる、……治った。
「有美」
俺は有美の肩に手を置く。一瞬有美の肩が震えた。
「ナ、何?」
有美の声が裏返っているも気にしない。
「有美最高」
俺はそう言いツボにハマった言葉を思い出し少し笑った。
有美は心底安心したような顔をしていた。
「これは有美さんの手柄ですから仕方無いですわね」
後ろで凜香が何かを言っていたが聞こえなかった、有美を見ると何故か微笑んでいた。
「あの……」
不意に声がかけられた。
俺達は声のした方へと振り向く。そこには戸松さんが立っていた。
「有り難う御座いましたっ!」
すると戸松さんは急にお辞儀を有美にした。とても綺麗なお辞儀だった。
「えっ? あ、あぁ、別にいいよ、わたし和くん助けるつもりだけだったから」
……うん?
俺、有美に助けられてたの? 恥ずかしいな……。
俺は恥ずかしくて顔を伏せた。それより有美キャラが変わりすぎだろ!
「それでも本当に助かりました!」
再びお辞儀。
周囲の目も気にせずお辞儀する戸松さん、凄いな。いや気づいてないだけか。
そして俺達がそうこうしているうちにチャイムが鳴り響いた。




