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crystal of hope  作者: 永瀬亜蓮
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12/14

11話

「はぁ……」

 俺は盛大にため息をつく。

 今日は土曜日、待ちに待ってない琴音さんとの偽デートの日だ。

 これって証明だから彼氏らしく振舞わなきゃいけないんだよな……。まぁ約束してしまった俺も俺か。こうなりゃもう一回寝るか……。

 そう思った瞬間、それを見計らってかのように電話が鳴り響いた。

「……音声のみ」

 俺はそう気だるげに呟く。

 電話相手はもちろんの事琴音さんだ。

 音声のみとは琴音さんからは俺の顔が見えなくて音声だけを伝えるものだ。俺の方からは琴音さんが見えるのだけども。

『あれ、和人君音声だけ?』

「はい、そんな気分なんで」

『わたしの顔を見せたくない気分なの?』

 琴音さんは俺の発言に頬を膨らませる。今度は悪戯っぽく。

 だがそんなのお構いなし。スルーする。

「そういえば今日俺は琴音さんの事呼び捨てで彼氏っぽく言った方が良いですか?」

 俺は冷蔵庫に向かいながらそう言う。

 しかし数秒たっても返答がない、俺は冷蔵庫から出したお茶を喉に流し込み、琴音さんが映っている携帯を見る。

 そこには顔を固まらした琴音さんがいた。

「どうしたんですか?」

『わたし耳が悪くなったのかな? 今聞こえなかったんだけど』

 そうかぁ、琴音さんももう歳かぁ。

 別に減るものでもないのでもう一度俺は言う。

「彼氏っぽく琴音さんの事呼び捨てにした方が良いですか?」

『……え? やっぱり?』

「嫌ですか、ならさん付けですね」

『ぜひぜひぜひ‼ 呼び捨てにして、いやして下さい‼』

「……は、はい」

 俺は若干引きつつ返答をした。

 カモフラージュには持って来いだが、そこまで叫ぶことはないだろうに……。

「じゃあ十時に駅前で」

 現在時刻は八時六分。

『はい‼』

 俺は苦笑し電話を切る。


・・


――琴音――


 わたしは夢でも見ているのだろうか、先ほどの電話であの和人君がわたしに顔を見せなかったのだけど、わたしを呼び捨てにするって言ってくれた。

 いつもいつもわたしの事は「琴音さん」と呼ぶけどホントは「琴音」と呼んで欲しい。

 わたしも和人君の事を「和人」と呼びたい、それかゆみりんみたく何かの愛称で呼びたい。

 それは恥ずかしいし、何より、凜香達に変な目で見られるのは嫌だから、呼ばずにいる。

「ふふっ」

 それは何より今日は和人君とのデート、いつも以上におしゃれをして和人君を虜にするわよ!

 ……とは言ってもおしゃれ、ねぇ……。

「はぁ……」

 先ほどの喜ぶの声とは真逆の苦みの含まれる声が漏れた。

「和人君、どんな服が好みだろう?」

「それはどういう事ですか、お姉様?」

 わたしは驚き肩を震わせ、リビングへと入って来た冷たい声を放つ主の方へ振り返った。

「り、凜香ちゃん……」

「あらお姉様、いつも私の事は「凜香」と呼んでいらしているのに今日はどうしたのですか?」

 冷たい、そして憤怒、この娘……怖い。

 凜香は手に有名なファッション雑誌を持っていた。

「凜香、そっその雑誌は何?」

 我ながらぎこちない言い方だ。

「へ……? あっ! こっこれはおっお母様ので……!けっけけ決して私のではありませんっ!!」

「ふぅん、で、誰の為に見てるの~?」

 わたしは状況を変えるために凜香に悪戯兼、仕返しをする。

「だ、誰も和人さんの為なんかに見てませんっ!!」

「あれ? わたし誰の為っ聞いてるんだよ、何で和人君が出てくるのかな?」

「ひゃぅ……、うぅ……おっお姉様のバカっ!!」

 凜香は顔を真っ赤にしてリビングから飛び出していった。

「可愛いなぁ」

 何とか状況を一変させたわたしは、ほっと胸を撫で下ろしそう呟いた。

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