ダリウス殿下という人
帰国したダリウス殿下は、どうやら魔法騎士団の仕事を任されたようだ。
シュドリウス王太子殿下が28歳になるタイミングで、セヴァリウス陛下は退位され、シュドリウス殿下が即位される。
それに伴い、ダリウス殿下が、将軍職を担うのだそう。アルドレット様と同じ道を進むのだろう。
現在のディバレイド王国は周辺国のいずれとも争っておらず、外交は平穏である。
だから戦場に出るということはないのだが、辺境にでる魔獣は相変わらずであるし、富める魔法使いの国に狙いを定めて他国から流れてくる盗賊や荒くれ者も少なくない。
ヒュードル様をお断りした理由の一つが、そのままダリウス殿下の上にある。
なのに、フプリーは今、怖くはない。
ダリウス殿下だから、どうでもいい訳ではもちろんなくて。
なんだろう。
大丈夫だと思える。
何?これって、信頼なのかな?
ダリウス殿下は、帰ってくる。
レクトゼイルからだって帰ってきた。
フプリーが、研究室から戻れば、ダリウス殿下がソファーで眠っていた。
無防備なその姿に、フプリーは思わず笑ってしまう。
ノルドの辺境から、戻ったのだろう。
人の魔力を見ることができないはずのフプリーは、何故だかダリウス殿下の魔力だけは感じることができるようになっている。
婚約者だからなのだろうか?
…まだ、婚姻の魔法陣は交換していない。
「お帰りなさいませ」
フプリーはつぶやいて、殿下の側に跪く。
魔力が、いつもより弱い。
疲れ果てているようだ。
フプリーはダリウス殿下の額に手を乗せる。
そうしてそっと、魔力を流し入れる。
魔法陣に、魔力を乗せるように。
あ。
殿下のまつ毛が動いて、青紫色の瞳がフプリーをとらえた。
「お嫌でしたか?」
驚いていらっしゃる殿下に、微笑んで見せる。
殿下はフプリーを抱きしめてくれた。




