茶会再び
男爵家の二人が返り討ちにしたご令嬢方は同学年ではなく、またサーシャ様のお茶会には参加されていなかったので、フプリーはお家柄などはよくわからない。
なのだけれど、間違えてそちらの家に勤めることになっては大変!と、カーレとネリーは調べたらしい。
貴族名鑑が頭の中に入っているフォーリア様に尋ねては?との提案も、
未来のご主人様にお手を煩わせるわけにはいかない!
などと、冗談なのか本気なのかよくわからないセリフを吐いて息巻いていた。
ブリア公爵家は王弟であられる御当主様が臣籍降下されて起きたお家柄なので寄家というのはないのだそう。
公爵家で勤めていらっしゃる侍従や商人は殆どがベリア領、つまり元フェンスベリア出身の方が殆どで、王都から一緒に移住された方はコレット夫人のご家族の他に数名。だからこそ、敵地であった領地の領主として、ブリア公爵は信頼を得ているのだろう、とフォーリア様は言う。
それでも特に孤立しているわけではもちろんなくて、お母様のご実家のサンゼット侯爵家や前王妃様のご実家のノズル辺境伯、モード侯爵家はもちろん、大将軍アルドレッド様のガルディオ公爵家とも頻繁に交流されていらっしゃるとか。
特にミーレイ様は同じ年ということもあって、幼い頃にはベリア領に入り浸っていたこともあったのだとか。
「ミーレイは子供の頃の方が面白かった」
呟くフォーリア様は、確実にダリウス殿下と同じ血が流れている。
茶会はこりごりだなぁ、と思っていたフプリーであるが、再びモード侯爵家の茶会に招かれた。
初めで最後じゃなかったのか…断れない。
「また、人物図鑑を作りましょう!」
ミーレイ様が楽しんでいる…
「私が横にいれば良いでしょう?」
気乗りしていないのを、フォーリア様に見抜かれてしまう。
まぁ、これだけ四六時中一緒にいれば、わかっちゃうよねぇ。
こうなってしまったら、もう、思い切り甘えることにする!
ちなみに、寮部隊がフォーリア様を囲うのは寮の中でだけのようで、学校の中、特にミーレイ様やダリウス王子が居る時にはそっと身を引くようだ。
私もそちらに…何故行けないのだろうか??
気がつくと、ハイソな方々の中に居る。
いや、もうちょい、気軽なポジションを求めてます!!!!
助けを求めるように、彼らを見れば
…あのジェスチャーは、
…がんばれ?
…なにを?
王子の隣で食事をするのは、何かと気を使うのよー!!!
と、フプリーは叫びたい。
そもそも学校を卒業したら、ここのテーブルの方々は上司や雇用主かお客様になる可能性が高い…同じテーブルにつくなんて、本来であればとんでもない話だ。
私はむしろ、と、食事をサーブしてくださる食堂付きの侍女をチラリと見る。
私はそちら側。
だけれど、お茶会で皆様のお顔を覚えるのは決して無駄にはならないはず!
「当日は迎えに来てやるよ」
当たり前のように、ダリウス王子がおっしゃる。
「ええと、あの、姉は参加しますでしょうか?」
いつもは来ている、なら、明日も参加するかも知れない。
マーリエも寮住まいだが、学年が違うと棟も変わるので、約束をしないとなかなか会うこともない。
姉も招かれているのであれば、姉のそばにいるのもありかも…いや、姉は、フプリーに甘いけれど、甘やかすだけで、
「ほら私の背後に隠れて居なさいな」
で終わってしまうのだ。
そうなると、矢張りフォーリア様を頼る方が良い気がする。
「どうせフォーリアとイエンも拾っていくんだ、お前も乗っていけ」
公爵家のお二人は、普段から王子の馬車を使っているのか。
…お礼を言いながら、だんだん、王子が人間に見えてきた。
「まあ?!フプリーが本当にお茶会にいる!」
心底驚いたらしい姉のマーリエが、淑女らしからぬ声を上げた。
それから、私の周りの顔触れに気づいて、素早くカーテシーをする。
「ダリウス殿下、ご機嫌麗しく。カルマン家のマーリエでございます。妹がお世話になりありがとうございます」
「何度か会っているだろう?お前の妹は面白いな」
王子の言葉に、姉はさらに驚いた顔をする。
褒められたのか?お礼を述べる場面なのか?迷っているよね、わかるよ、お姉様!
「お姉さまはイエン様もフォーリア様もお分かりになりますよね」
…私はイエン様を知らなかったけども
上級生だし、雲の上の方だし!
「ええ、もちろん!」
姉は笑顔でカーテシーをする。
ああ、そうよねぇ。伯爵夫人が社交できないわけには行かないものねぇ。
「イエン様、フォーリア様、妹にお付き合いいただきありがとうございます」
チラリとこちらをみる目が誉めてくれる時のそれだ。
「妹は末っ子で家族がみんなで甘やかしてますから、至らない点も多いかと思いますが、どうぞお許しくださいませ」
で、後日に姉とその婚約者と、卒業してすでに士官している兄まで同席して、呼び出された。
「フプリーは、どちらが良いの?」
…って、え?何が?




