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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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人物図鑑

ハイソなお茶会を終えて。


フプリーが初めにやったことは、似顔絵描き。


顔は覚えられるのよ、お顔は!


スケッチブックに炭で描く。

こんなことをするから、手が黒くなって家にいた頃はよく怒られていたけれど、お父様にお願いして薄い革の手袋を作ってもらった。

鉛筆をプレゼントいただいたこともあるけど、すぐに使い切ってしまうので、フプリーは厨房で炭を貰って使うことにしている。

普段、授業中に使うのはペンだけれど、ペンで絵を描くとすぐにペン先をダメにするので、ペンは勉強専用だ。


本当は、似顔絵を描く予定はなかった。

描きたかったのは、モード家のお庭と、お茶会のテーブル。


でも、それどころではない。


ご紹介いただいた方々と、学校の中でお会いした時にご挨拶できないと拙い!


思い出せる限り、思い出して、速攻で描いて、定着の魔法をかけたら(この魔法だけは学校に入る前から使い慣れている)、スケッチブックを小脇に抱えてリヨールくんとミーレイ様のところへ急いだ。


上級生にお会いしないように、気をつけながら。



「これ、フプリーさんが描かれたの?ご自分で?!」


驚かれるミーレイ様に少し慌てる。


「あの、そうなんですけど、ご本人に見せるために描いたわけではないので、あの、むしろご本人に見られたらちょっと」


そう、美化して描いているわけではないので、本人に見せるわけにはいかないのだ。これはあくまでもフプリーのメモ。

この記憶に、ミーレイ様とリヨール君の情報を加えようという作戦だ。


「そうなの?よく描けてると思うけれど」


驚くミーレイ様の隣で、リヨール君は少し興奮気味だった。


「うん、凄いよ!こんなに上手く描けないし!そもそも一回会っただけの人を描けないから、普通は!」


「あの、お願いだから、もうちょっと、声のトーンをですね…」


学校内のカフェテラスの一角で、フプリーはビクビクしている。


ビクビクしていたのに、誰かが背後に近づく気配に、気が付かなかった。


「俺は?いないの?」


「ひぃっっ!!!!」


多分、30センチくらいは跳び上がったと思う。心臓と共に。


「殿下、脅かさないであげてください。心臓止まっちゃいそうですよ」


リヨール君が、気安く諌めている。


「へぇ。凄いね、私の顔もあるの?」


ふぉ、フォーリア様は描いてないですーーーー。


「お…お名前を覚えられなかった方だけです…」


フプリーは灰になりそうだった。


心臓が、持たない…



まあ。そんなこんながありまして…



「人物図鑑」完成!

作画フプリー

補足ミーレイ様

注釈リヨール君

茶化ダリウス殿下

突込フォーリア様


みなさま、ご協力に感謝いたします。


「面白いわね、コレ。王宮内の文官版とか、魔術師版とか、侍従版とか、作っていただけないかしら」


ミーレイ様が目をキラキラさせている。


「君はなくても覚えられるでしょう?」


「覚えられるけど、楽しいじゃない?」


「新人教員にプレゼントしたら喜ばれそうね」


「お前が覚えたら、高値で売りつけようぜ」


王子が王子らしからぬことを言っている…


フプリーは心から感謝していた。



王子はともかく、ミーレイ様とフォーリア様ともとても仲良くなれたと思う!


フォーリア様は表情はあまり動かないけれど、そしてあまり多くは語らないけれど、なかなかに面白い方だと思う。


相手が上位貴族であっても、下位貴族であっても態度も表情も一切変わらない。

王族を除けば貴族のトップと言える家柄だから、以下同位扱いなのか?と思わなくもなかったけれど、王子に対しても同じ対応なので、上も下も関係がなさそうだ。


それに気がついたのは、寮の中で。


フォーリア様は寮住まいだった!


そして何故だか寮の中でも、フプリーに気安い。

フプリーだけでなく、子爵令嬢のレベッカにも、男爵令嬢のネリーにも、分け隔てない。


流石に公爵家ご令嬢なだけあって、侍女を一人連れてらっしゃるけれど、侍女のコレット夫人もとても気安く接してくださる。


残念なことに、それを面白くなく感じていらっしゃる高位のご令嬢もいらっしゃるようで、伯爵家のフプリーには何も言わなくても、男爵家のネリーやカーレ、子爵家のレベッカやローザに、


「寄子でもないのに馴れ馴れしい!」

「立場をわきまえるべきよ!」


なんていう、言葉の武器を振り翳してくる。


ビビりまくるローザやフプリーの横で、男爵家の二人は、ケロッとした顔で、カーテシーをした。


「将来お仕えするご主人を見極めるチャンスだと考えております。どうぞお見逃しくださいませ」


「主従関係にも、相性というものがございますでしょう?」


レベッカが翻訳してくれる。


あんた達には絶対に仕える気はないぞ、と。



確かに!王宮は憧れだけれど、フォーリア様にお仕えするのも魅力的だわ!!!


専属の侍女とか、あ!フォーリア様のお子様の乳母もいいな!…そうすると先に結婚しとかないとダメか?!


チラリとフォーリア様を見る。


なんというか、お綺麗なのだけど、フォーリア様が恋愛だとか、ないよなー。

結婚は、公爵家だから避けられないだろうけど、母親になるとか、想像がつかない。


あれ?フォーリア様には婚約者様はまだ決まってらっしゃらないのかな?


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