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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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卒業と婚約発表

魔法学校の卒業式は両親も招待される。つまり同年に王族が居る学年の卒業式には、ご本人が飛び級しない限り、陛下が参列されるのだ。


ダリウス殿下は飛び級せずに在学していたので、当然卒業式には陛下の姿。


貴族たちは国王陛下に会うチャンスを逃さない。

普段、後継以外の卒業式など、片親しか立ち会わないという家庭でも、両親がきっちり揃って参加するので、今年の卒業式は大賑わいだ。


卒業生の代表挨拶は、当然のようにダリウス殿下。

王子だからかと思っていたが、どうやら成績も相当に良いらしい。


親たちの間から、殿下が飛び級しなくて良かった、との声が聞こえてくるから、飛び級してもおかしくない成績だったのだろう。


ダリウス殿下って、密かにすごい人だったのかも?


いつも隣でフプリーの頭を掻き回してる姿からは想像がつかない。


卒業式のタイミングで、殿下の婚約が発表される。


え?発表するの?!


結婚しないかもしれないのに?!!


否応なしに壇上にあげられ、フプリーがカーテシーをすると、まぁ、そうだろうよ、と言った雰囲気の反応。


いや、皆様…


もうちょっと、驚こう?


伯爵家の第三子だよ?


良いの?




卒業すれば、みんなバラバラだ。


フォーリア様はレクトゼイルに行かれるし、レベッカは婚約者がご両親と同じバーキン侯爵家に仕えているため、侯爵領に戻るようだ。

カーレはアズマ公爵家に雇われるが、場合によっては歌劇団とともに各地を回ることになるかもしれない、と話していた。


リヨール君は、「僕は王宮仕えの官僚だよー。代替わりしてミーレイが伯爵になってもそこは変わらないと思う。王宮であったら無視しないでよ?」

などと言ってくれる。


その、ミーレイ様は、領地とタウンハウスを行ったり来たりするようだ。現当主のお母様に領地経営と社交を受け継ぐために。


ローザは卒業と同時に結婚するらしい。

タウンハウスにいることもあるが、ロイド様について他国に出ることもあるのだそうな。


私は私で、学校の寮を引き払い、王宮内の使用人寮に入室の手続きをする。

使用人寮が、思った以上に豪華で、びっくりである。こんなに豪華なら、ずっとメリッサ様のお弟子のままで良いよ、私!



みんながみんな、それぞれの道をゆくが、卒業式の1週間後にある収穫祭の夜会には参加する。


毎年王都の収穫祭の夜会に、卒業生が招かれるのだ。


フプリーはもう、絶対に踊るだろうと覚悟をしたので、ミーレイ様やリヨール君にダンスのレッスンを付けてもらうことにした。


モード侯爵家のダンスルーム…豪華。

ミーレイ様たちにレッスンしてもらう予定が、何故だかモード家専属ダンス講師まで。


…私、痩せたかも。


念のために、ルヴィルに出向いて採寸とドレスのチェックをしてもらう。


ポリアンナ様の妹さんのカンナ様が、前回のダンスの噂をいっぱい仕入れていたらしく、物凄い勢いで、絶賛してくれる。


王子様とのダンスに着ていただけるなんて光栄すぎます!!!


いや、あの。

踊るように圧力かけてきませんでしたっけ?


カンナ様は素敵で好きだけど、踊らねばならないのはあまり嬉しく無い。


腕が鳴ります!


いや、鳴らさなくて良い!



収穫祭夜会のエスコートは、もう誰がなんと言おうとダリウス殿下。


流石にもう、フプリーも納得せざるを得ない。

だって、婚約者なんだもん。


あれ?なんで婚約者なんだ?


いまだに謎である。


たまに、自分に尋ねてみる。

本当にダリウス殿下と結婚するの?私?


いやいや、結婚すると決まってないでしょ?婚約だけだし!


思い直した直後に、ジオーヌ様とお姉様の、「当然!」という声が蘇る。


いや、でも、あの時とは事情が異なるじゃない?


…そういえば、殿下やイエン様との噂を打ち消すために婚活したんだよね、私。


ダニエル先輩とは、今後も同じ職場で顔を合わせるけど、ヒュードル様やメルト様、ディーン様に会う事はもうないだろう。


ディーン様。


この婚約を知ってるよね。

知らないわけがない。


…どう思うかな。


何も思わないかな。



お名前が頭に浮かべば、思い出されるのは最後のあの会釈。


クシャッとした笑顔ではなくなってた。


いつの間にか、変わってる。


あの、締め付けられるような胸の痛みも、今はもうない。


ああ、私。


ディーン様も卒業したのかも。


夜会の当日、支度はダリウス殿下の自室をお借りするというので出向いていく。


案内してくださる王宮侍女のお顔を、とこかで?とずーーっと疑問に思いながらついて行くと、扉の前で、ふふっと笑顔で名乗ってくださる。


「エルヴェです、魔法陣コースの。覚えてらっしゃいますか?」


「ええ?!ベルク侯爵家の?!」


「はい、覚えていていただけて光栄です」


え?!いや、あの!こちらこそ!!!


「リーファ様付きの侍女として勤めています。お会いする機会もあると思いますから、よろしくお願いしますね」


「こちらこそ!ご案内ありがとうございます!」


魔法陣コースでは班が違えばあまり交流が無いので、フプリーの中のエルヴェはサーシャ様のお茶会のエルヴェ様だ。


幾分大人になった彼女は、王宮侍女のお仕着せを着て、丁寧にお辞儀をした。


カーテシーでないことに、フプリーは衝撃を受ける。


「さぁ、皆様がお待ちですよ」



扉の向こうに、お支度隊が待機していた…


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