夏の終わりに
夏が、そろそろ終わる。
研究室の中途半端になっている魔法陣の研究を後輩たちに引き継いでいる。
フプリーの研究班は気がつけば魔法陣映像作成班になっていて、アズマ公爵家の歌劇団とほぼ専属みたいな関係になってきている。
権利自体は学校にあるから、もちろん他に使用権を得ることも可能ではある。
この技術のおかげで、ロングランヒットしたという歌劇は、まだフプリーも観に行けていない。
終わる前に見ないと!と、息巻いていたら、アズマ公爵が例え終わっても、「貢献者のご希望とあれば再演しよう!」などと、冗談のようなことを言ってくださる。
フォーリア様もそうだけれど、フプリーに近い公爵家の皆様が思っていたよりもとてもフレンドリーなのは嬉しい誤算だった。
アズマ公爵家に就職が決まったカーレも良い人間関係に恵まれそうだ。
「ダリウス殿下とフォーリアが帰ってきますよ」
その知らせは、サーシャ様経由のミーレイ様から。
他国へ留学しているおふたりとの連絡は、王宮が管理しているようだ。
「フォーリア様は…ご結婚されるかしら?」
ローザとレベッカも最近は昼休みを一緒にとるようになった。
「それは流石に聞いていないわね。本人からの報告を待ちましょう」
その、ミーレイ様からのお知らせから3日ほど後に、フプリーは王宮に呼び出された。
王宮に呼び出される?!
少し前に、王宮といえば王宮にあるメリッサ様の研究室には行ったけど、それとはちょっと違う。
今回の王宮といったら、マジで王宮ど真ん中。
お迎えの馬車が来て、え?服はどうすれば?と思ったら、制服で良いとの事。
というか、私一人??だよね?
これ、呼んだのダリウス殿下だよね?
ちょっと勘弁してほしい。
王宮の廊下を長々歩いて案内された部屋に入れば、思った通り、ダリウス殿下。
あれ?背が伸びた?
と思った矢先に、腕を引かれて、頭を抱え込まれた。
「ちょっと!殿下!」
ダリウス殿下が、フプリーの頭をガシガシと掻き回す。
髪が!やめて!!!結い直しになるレベル!!!
「フプリーが不足してんだよ!ちょっと我慢しろ!!!」
なにそれ?!!!
ひとしきり頭を掻き混ぜた殿下は、そのまま私を引きずって、ソファーに座る。
…私を引きずったまま。
待って!!!
頭の匂い嗅がないで!!!!!
「あー、そうそう、この魔力の感じ」
…感じ?
「お前、俺に魔力流せ」
は?
固まる私を、殿下は抱え直した。
向きが変わって、後ろから抱きしめられてる!
殿下?!待って!!!!
私たち、そう言う関係じゃなかったはず!!!
ジタバタするも、体格も違えば力も違う。
だから匂い嗅がないで!!!!
暴れる私を押さえつけながら、殿下が何か言った。
「失礼します」
入室してきた誰かと目が合う。
あ。ジオーヌ様…
一瞬固まった義兄は、コホン、と一つ咳払いをして、見なかったことにしたらしい。
殿下に書類を渡すと、何も言わずに部屋を出て行った。
これを見て、置いてく?
ちょっと!!!
ジオーヌ様ーーーー!?




