守護と成長
ミルボン男爵家からカルマン伯爵家へ謝罪の手紙が届いた様だ。父が私に会いに来て、私が纏うダリウス殿下の魔力に驚いていた様だ。つまり、父には魔力視の能力があるらしい。
父にその話をしたら、カルマンの家族では、父と姉と、義姉は魔力視があり、兄、母、す私は見えていないようだと話していた。魔力視が無い兄に義姉を紹介したのは父である。
魔力視の有無は魔法使いの能力の評価に影響はしないが、領主になるならば、あるに越したことは無いらしい。不要かとも思ったが兄にはウルマ侯爵家令嬢を娶らせたのだと話してくれる。
「お前はダリウス殿下の元に嫁ぐのか?」
いまだに信じられない、という顔をして父が尋ねる。
「私はまだ、結婚をする気はないのです」
私は私が知りうる限りの、私目線の事情を話した。
「…過剰な防波堤だな」
父の一言は、全くもってその通りだと思う。
「お前は殿下に魔力を返したのか?」
魔力を返す?
「どういう意味ですか?」
「お前の魔力を、殿下にも流したのか?」
「?いいえ?」
私の回答に、お父様はホッとしたような顔をなさる。
「いずれにせよ、今、殿下はレクトゼイルにおいでだ。殿下がお戻りになるまでは、何もすまい」
殿下が戻ったら、何をするのだろうか。
「お父様」
改めて、フプリーは自分の未来を宣言したくなった。
「私、魔法陣の研究者になりたいのです」
「王宮魔術師だな。メリッサ様からもお声がけ頂いている。お前の希望を確認していなかったからまだお返事はしていないが、アマリオ先生からも能力としては充分だと聞いている。お前は魔法陣で生きていけるだろう」
魔法陣で生きていける!
私はお父様の言葉に、涙が出そうになった。
伯爵家のオマケの第三子。
みそっかす扱いの末娘は、甘やかされるのが当たり前になっていたけれど、今、やっと認められたような気がする。
フプリーは胸を張って、父親に微笑んだ。
フォーリア様とダリウス殿下がレクトゼイルに行ってから、1ヶ月が経った。
ネリーが学校を去って、カーレは一人部屋が寂しいというので、ローザとフプリーが交代でカーレの部屋にお泊まりしている。
左右の守りがいなくなっても、ダリウス殿下の魔力が守ってくれてはいる。
魔力視のある人には、フプリーにダリウス殿下の魔力が見えるのだそう。
腕輪の魔石に魔力が込められているので、魔力視がないフプリーのような生徒たちにも腕輪の魔力は確かに「追加の盾」の役割を果たしてくれている。
それでも。ごくたまに侯爵令嬢あたりに絡まれることはあるが、幸いなことに、最終学年であるので、同格の先輩からの圧力はない。
フプリーはダリウス殿下の予約済。
以前からの噂に、纏う魔力は噂を確信に変える。
結婚をするつもりのないフプリーとしては、誘われない事は好都合だった。
「ダリウス殿下ったら、どういうつもりなのかしら」
フプリーがまぁいっか、といった感じだったのに対して、ミーレイ様はプリプリ怒っていた。
「フプリーの左右のお守りって、本来、人物図鑑の生き字引的役割だったよね」
リヨール君!その通りです!!!
ただ、最早最終学年。
外部の茶会に参加しない限り、生き字引は不要な上に、結婚しないと決めた今、漁場は閉じた。つまり、茶会に行く必要がないのだ。
そして、ダリウス殿下の盾は、図らずともモテ期到来のフプリーにとても都合が良かった。
なんとまぁ、例の魔法陣を開発した事で、不要な漁場が向こうからやってきたのだ。小金持ちになったフプリーは、婚約者不在の次男三男君たちからモッテモテだ。
「殿下にフラれたら、拾ってあげるよ」
って…
要らん!!!
歌劇の恋に憧れていたはずが、まさかそんなふうに思う日が来るなんて、びっくりだ。




