捜査
魔法陣の鍵についての権利云々に先駆けて、フプリーは自分の部屋に利用することが許された。
それはともかく、一体誰がフプリーの部屋に入ったのか、という話になって、そしてそれは果たしてフプリーの部屋だけなのか?と、他の部屋についても、寮の管理側が調査に乗り出すことになったようだ。
魔力が見える者の部屋には入室した気配はない。能力の差はあれど魔力視があれば残滓を感じ取ることができるから、入室すればわかるだろう、ということだ。
ということは、え?
犯人は部屋の主に魔力視の能力の有無を知っているということ???
魔力視については、フプリーが14の時に見える人がいるのね?!と初めて知ったように、基礎学校でも魔法学校の基礎コース内でもその話は出てこない。
むしろ、卒業した後も、個人差があることに気がつかない可能性が高い。
あえてその話題が出ない限り、その人が魔力視を持っていればみんなが持っているものだと信じているし、逆も然りだ。
魔力の話は、婚姻の時には確かに重要だが、それ以外の場面では割とタブー視される話題だ。
だからあの時、ダリウス殿下が「お前は見えないのか」と言った時にフォーリア様やミーレイ様、リヨール君達は驚いていたのだろう。見えない人が目の前にいる、という事もだが、この話題がその場に出る事も。
あの時、フプリーは何人かに魔力を見える見えないについて尋ねた。
そう、ええと、、、
人物図鑑にメモをしたことを思い出して、開いてみる。
身近な人にしか尋ねていないから、似顔絵はない。
ローザと私は見えない。
カーレはうっすら。
レベッカは気配だけ。
ネリーは見える。
このほかにも、実は何人かにも聞いていて、それもここにメモされている。
ルビア、見える
セレナ、見えない、双子なのに違うんだ
ダニエル先輩、見える
エルヴェ様、見えない
エルヴェ様は一つ年上の魔法陣コースの先輩で、ベルク侯爵家のご令嬢だ。既に卒業されているので、今はもういない。
今回、残滓が確認されたのはローザと、私、そして、レベッカ。
「ええ?!私の部屋も?」
他人事で、手伝ってくれているつもりだったレベッカはひどく驚いている。
見えないのはセレナもだけど、彼女は双子の姉ルビアと同室で、ルビアは魔力が普段から見えるのだ。
他にも魔力が見えていない寮生は居るけれど、侵入された部屋はこの3部屋だけ。
何だかとても、嫌な感じがする。
「ローザやフプリーは、わからなくもないのよ」
レベッカが言う。
「だって、ローザはディプソーに嫁ぐし、フプリーには殿下だもの。二人とも玉の輿よね」
…は?
「私は関係ないじゃない?婚約者は同格の子爵家だし。なのに何で?」
色々と認めたくないところはあるにしても、確かにそれは謎だという話にはなる。
フプリーに盗まれた物はないし、レベッカも無いという。ローザは?
「…一つだけ、見当たらないものがあるのよ」
それは何?
「ディプソーから預かったの。フプリーに宛てた、手紙」
「ディプソー?ロイド様?」
それともポリアンナ様だろうか?
「うん、渡せない、とは言ったのだけどね。中身を見てもいいって言われていて、それで私が判断して捨ててもいいって」
ローザが、黙って私をみる。
ああ、そうか
「…ディーン様?」
「そう。でも、必要なさそうだと思って、処分するつもりでいた」
…うん。
「ありがとう」
寮監の先生が、他に盗まれたものや触られた形跡がないか、と尋ねる。
無いと思うけど、触られた、という言葉に、引っかかる。
「…人物図鑑?」
そうだ。おかしいと思ったきっかけはコレだ。
寮監の先生に言われて、部屋から持ってくる。
「わぁ?何これ!フプリーが、描いたの??すごい!!!」
図鑑を初めて見るレベッカが大興奮でページを捲る。
「私も居るのかな?」
と、ちょっとワクワクした表情だが、もちろんレベッカは覚える必要がないので描いていない。
先生もおどろいているようだが、少し冷静だった。
「この存在を知っている人は居る?」
「ダリウス、イエン、ミーレイ、リヨールは知っている」
フォーリア様が答えながら、他には?と、こちらを見る。
「他の方に見せた覚えはないです」
そもそも、描かれた本人に見て欲しくないのだ。補足情報が欲しい時だけ、ミーレイ様たちに協力して貰っていただけで、それ以外は寮に置きっ放しだ。
「…魔力視についての記述がここにあるけれど、これは個々にきいたの?」
ええと、
「当時…魔力の話が、その、大っぴらに話すようなことではない、と言うのをわかっていなくて」
「同時に聞いた?」
記憶が朧げで、レベッカを見る。
「私の時は、一人だったわよ」
その横で、フォーリア様が付け加える。
「私は先にあげたメンバーがいっしょだったね」
「ああ、ええと、ローザも一人だったかしら。ニッカ子爵の二人は一緒にいた。あと、カーレとネリーも二人一緒にいたと思います」
うーん、と記憶を辿る。
「もう卒業されてますが、ダニエル先輩とエルヴェ様はお茶会で一緒にいらして、何かのタイミングでお二人同時にそんな話になりました」
「普段からそんな話をしている?」
先生の、何だか呆れたような顔に、フプリーは慌てた。
「してません!わかっていなかった頃だけです!」
「そうよねぇ」
先生は思案顔になり、ひとまず人物図鑑を閉じて、フプリーに返してくれる。
「後でまた見せて貰っことになるかもしれないけれど、コレは預かるわけにもいかないから、お返ししておくわ」
そうしてひとまず、この日は解放された。




