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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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5年生。

ダニエル先輩が卒業されて、メリッサ様の研究室に入られた。

メルト様も、バーバーリィ元筆頭魔術師に弟子入りされたのだそう。

皆様着実にご自分の進路を進まれている。


フプリーはダニエルがいなくなった研究室で、魔法陣を使って顕現する絵とそれを認識する魔法陣の研究をしている。同じ研究班のカーレは元々はあまり絵を描く習慣がなかったようだが、この一年でとても上達して、ダニエル先輩のひよこが伝説になるぐらい、班の描画技術とそれを動かす魔法陣の研究は進んできている。


アマリオ先生が、動く画像を見て、歌劇を主催する劇団のオーナーであるアズマ公爵と劇団の演出家を連れてきた。


そして、なんとこの技術が、売れました!


売れるの?これ?!と、みんなで大はしゃぎ。


権利関係の難しい話をしていたけれど、この魔法陣は個人ではなく共同で開発した物だから、と、使用権の大半を学校に譲渡することにした。


この話の中で、カーレの就職先が王宮ではなく、この劇団の演出家の補佐に決定することになった。


歌劇団のオーナーはアズマ公爵なので、カーレはアズマ公爵家の預かりとなるらしい。

ただし、男爵家とはいえ貴族なので、魔法学校は最後まで卒業することは許された。


フプリーは、魔法陣の研究にのめり込んだ。

ダニエル先輩が言っていた、要素を組み込めば理屈で返してくれる魔法陣は裏切られるようなことが少ない。

脱力するような失敗は、明らかに人的ミスなのだから。



姉のマーリエと、ジオーヌ様の結婚式はフプリーが17歳になった年の種苗祭前に行われた。

ジオーヌ様がオーバル伯爵家の後継なので、彼らもまた、陛下の前で婚姻を誓う。

姉はすでにもうオーバルで生活をしていたが、結婚の披露目の衣装などはお母様が張り切って用意していた。

元々、オーバルの奥様(ジオーヌ様のお母様)とはご友人のようで、おばさま二人があーでもこーでもそーでもない!と盛り上がるのを、姉は呆れたように眺めて好きなようにされていたらしい。


ここにもディプソーからちょっとしたテコ入れを頂いたみたいで、仕上がったドレスの生地の見事さに姉が言葉を失っていた。


そして、お兄様とエネット様に待望の第一子が誕生した。

嫡男誕生に、カルマン伯爵家は、大いに盛り上がった。

そして、その時にフプリーは初めて知る。


え?ウルマ侯爵家って、メリッサ様のご実家だったの?!


甥っ子テネシーの祝福に来てくれた王宮魔術師が、ダニエル先輩の師匠様であるメリッサ様だった。

姪っ子の初子だというので、駆けつけてくださったのだそう。


し、知らなかった。



一つ年上のイエン様やヒュードル様が卒業する前に、事件!


なんと、ナタリー王女の婚約者が変更されるという、びっくりな事件が起きた。


ナタリー様たちは2年前に卒業されていたけれど、婚約者であったリドル辺境伯のトナー様はナタリー様と同じ年で、学校内でも仲良く行動を共にされていた。

その姿を見て知っている学校の皆が、教師を含めて驚いている。


事情を知っているであろうダリウス殿下に視線を投げるのも無理もない。


何があったか気になるよね?

私も気になるもん。


だけど殿下は肩をすくめて、知らん!の一言。


その後王家からの正式発表で、リドル辺境伯トナー様の元へ旧フェンスベリアの王族であるロットバッハ侯の17歳のご令嬢が嫁がれるというのだ。


そして、もっと驚いたのは、ナタリー様の新たな婚約者だ。

21歳になるナタリー様の新しい婚約者が、なんと14歳の少年だというのだ。

この少年も、ロットバッハ侯のご子息だそうで、


え?

それなら、ダリウス殿下がトナー様に嫁ぐご令嬢を娶れば良いのでは?


と、思ったのはフプリーだけではないだろう。


ダリウス殿下曰く、いま、ナタリー王女は頗るご機嫌が悪いらしい。


それはそうだろう。

幼馴染で仲良くしていた婚約者との縁を切られ、7歳も年下の少年を押し付けられたという印象だ。


しかも本人たちは20歳になる前に結婚したいと考えていたところを、王太子殿下の結婚を待てと言われて、サーシャ様の卒業を待った挙句、サーシャ様の卒業直前にアズマ元公爵(サーシャ様とミーレイ様のおじいさま)が他界された都合で、婚姻を1年遅らせている。


ようやく今年の夏に王太子の婚姻だと準備を進めている最中での、この発表だ。


本人たちはたまった物ではない。


尚、ナタリー様の新しい婚約者様は、現在国立学校に通い始められたのだそう。


フォーリア様とイエン様はお会いしたことがあるらしい。


「ルーンベントは悪い子ではないよ。素直だし、多くはないが魔力もあるし」


あ、魔力あるんだ?


「使い方を知らないんじゃないかな。ナタリー殿下が、婚姻後に初歩を教えていくのではない?」


そう言ったフォーリア様が、ただ、と続ける。


「エリーゼには魔力が無かった。だから陛下は、ダリウスの相手にしなかったんじゃない?」


あー、そういう事…


驚いたのは、もう一つあって、イエン様もフォーリア様も婚約者が決まっていないのに、なんとお二人の9歳だという弟さんに婚約者が出来た。そのお相手が、11歳のロットバッハ家のご令嬢だ。


ロットバッハ様はお子さん何人いらっしゃるの???


と聞いてみたら、上のお二人はすでに結婚されているとかで、11歳のご令嬢は後継の娘、つまり現ロットバッハ侯の、お孫さんなのだとか。


それにしたって、王家がその、ロットバッハ家を取り込むべく全力を尽くしているのがわかる。


何か理由があるのか。


「イエンはブリア領に魔力持ちの女性が居たらすぐにでも婚約者が決まっただろうけれど、残念ながら、釣り合う娘が見つからなかったようだよ」


しかも、結構イケイケの女性が居たようで、魔力がないのにも関わらず、自分に魔力があると言い張る、とても痛い方だったよう。

それでとうとう、イエン様はディバレイドの貴族からご令嬢を迎えることになるようだ。


「エッセル侯爵家のご令嬢、わかる?」


「…わからない」


フプリーは最近になってようやく、どうやら自分は人の顔と名前を覚えるのが頗る苦手なのだと知った。


そのため、研究の傍らで、人物図鑑がどんどん分厚くなってゆくのだ。


「イーリス嬢でしょう?1つ下の詠唱コースに来たわよ。魔力量は多いんじゃないかしら?」


それだけ魔力量の多いご令嬢が16歳まで婚約者が居ないって、珍しい…


そう思っていたら、ネリーから一言。


「あの子、元々ダリウス殿下かイエン様のどちらかに嫁がせるというので、侯爵が縁談を全て断られていたようよ」


それは、なんだか気の毒なような。


こうなると、いよいよフォーリア様とダリウス殿下である。


従兄弟同士の婚姻を、ディバレイドでは推奨しない。


「フォーリアには、他国の王族との縁談もきている」


ダリウス殿下の爆弾発言。


えええ?!


フォーリア様、外国に行ってしまうの?!


「レクトゼイルの王子からの打診は以前からあるね」


えええ?!

初耳ですけど?!


「弟妹に地元での政略結婚を押し付ける形になるからね」


え?じゃあ、そのレクトゼイルの王子とは、政略じゃないの???


「政略は政略じゃない?レクトゼイルは魔石の産地とも言われるし。あちらの王子も魔力持ちよね」


流石ミーレイ様。情報通です。


いや、一応、私も貴族なんだけどさ。


トナー様とナタリー王女の婚約がなくなった時、ナタリー王女がレクトゼイルに嫁ぐことになるのではないか、とフォーリアは思っていたようだ。


「本当に嫁いでしまわれたら会えなくなるね」


「レクトゼイルはブリア領からならソフマールをかすめて行けば5日ほどで都だよ。ちなみに」


フォーリア様が、珍しく楽しそうな顔で、フプリーに言う。


「レクトゼイルは歌劇の発祥の地だ」


!!!!?


「遊びに行きます!!!」


勢いよく挙手をして言えば、フォーリア様は本当に楽しそうに笑ってくれる。


ああ、ほんと、仲良くなったなぁ。



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