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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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32/52

祝賀の前に

お姉様は、卒業してすぐにオーバル伯爵領へ行った。結婚式はまだ先だけれど、お姉様はそのまま嫁入りされるのだそう。オーバル伯爵領はカルマンよりもさらに王都から離れるので、領地の方々と信頼関係を築くためにも、お姉様はなるべくオーバル領に居て、王都のタウンハウスと行き来する生活を選ばれた。おそらくそれは、カルマンの母と同じような生活となるだろう。


卒業進学のシーズンを終えて迎えるのは冬休みなのだけれど、15歳の年越しは、貴族子女にとって少し特別だ。


成人を祝う新年の祝賀会。

初めての夜会だ。


昨年に引き続き、領地は兄に任せることになるが、今年は母も領地で新年を迎えるのだそう。領民の皆様からのお茶会に付き添うつもりでいるのだろう。


「でも!フプリーのお支度は任せて!!」と張り切った母は、私と共に、ディプソーの歓待を受けることになる。


ローザが嫁ぐ予定のディプソーが、なんとフプリーの支度まで請け負ってくれる事になったのだ。


「カルマン家にお招き頂かなければ得られない出会いでした!」


と、恐れ多い事に、ディプソーの総裁が出てきた!!!!


お母様が、隣で腰を抜かしそう…


「わぁ!貴女の魔力、なんと言うか、美味しそうね!」


わ、また美味しそうが出た。


ディプソーの奥様…えーと?ロイド様のお母様だ!

そう言われて、我にかえる。


「魔力、見えるのですか?」


ディプソーはロイド様が生まれた後に叙爵された貴族だから、元は平民のはずだった。


「ああ、そうなの。ロイド母、ポリアンナよ。よろしくね!私は元々貴族の血が入っているの。魔法学校にも通ったのよ。アマリオ先生はお元気かしら?」


「お元気です!私、魔法陣コースです」


「ええ、ローザと一緒なのよね。そうだ、自慢させて!私、実は魔法爵の弟子だったのよ!」


魔法爵の弟子????えーと、リヨール君の叔母様だったか。


「伝説の魔法爵?!」


私よりお母様が驚いている。


「そうなの。メリッサ様が一番弟子で、私はその次!ちょっと、偉そうでしょ?」


ふふふ、とディプソー夫人が笑う。


「それとね、ローザは私の同級生の娘さんだったの。貴族社会って、広いようで狭いわねぇ」


お話をしながら、フプリーの採寸をしてくれる。

貿易商の奥様自ら…


「ああ、私は元々商家ルヴィル出身だから、なんでもやるのよ。ふふ、ルヴィルが全力で貴女達を飾っちゃうわ!」


今日、ローザも一緒にいたら、双子コーデにしちゃったのになぁ〜


なんて、楽しそうに笑う。

ロイド様の陽キャぶりは、お母様に似たのかも?


なんにせよ、ローザはきっと、大切にして貰えてる。


フプリーはそれが嬉しい。


新年の祝賀会は、物凄かった、

なるほど、これなら兄が2年連続で居なくてもバレない…

一応、官僚の枠と新成人の枠、貴族家の爵位持ち達の枠と時間ごとに区切られているらしいのだが、歓談が始めれば人は移動しないので人でごった返す。


フプリーはお母様とディプソーの奥様が選んだドレスを着て、恐れ多い事に、ダリウス殿下のエスコートを受けていた。


「私はイエンにエスコートしてもらう」


当たり前の顔をして仰るフォーリア様に頷きながら、私はお父様にエスコートしていただく予定だった。


だって、それもあってお母様はカルマンに帰ったのだ。


なのに、ダリウス殿下が決定事項として、言い切った。


「じゃあ、俺はフプリーのエスコートだな」



はい?!!


何故ですか?!


殿下の発言には…私だけでなく、ミーレイ様もフォーリア様も驚いている。


「フプリーが今、婚活する気がないなら、ダリウス殿下はこれ以上無いくらいの防波堤だよ」


リヨール君は驚いていなかった。


「だって、フプリーのお父上がエスコートしていたら、婚約者が居ませんって言ってるみたいなものだし。絶対に他家からの打診を受けることになるよ。それに、お仕事のお付き合いもあるから、ずっとそばには居られないしね」


そんなこと、考えてもみなかった!


「それもそうだけど、噂は良いの?」


あ、良くない!


「良くないです、殿下!」


言い募るも、ダリウス殿下は意に介した様子もなく、そんなもん、放っておけと言う。


「実際にややこしい話が進むよりはマシだろう?また、断りの手紙を書きたいのか?」


そう言われてしまったら、もう、フプリーには何も言えない。


…殿下の腕を取るしかない。


報告をする時間が取れず、お父様にはエスコートに出向いてもらった時に説明することになってしまった。


お父様は驚きよりも呆れたような顔をしていたが、ダリウス殿下に立礼して、娘の保護を願ってくれた。


後になって知る。


お父様はこの時に覚悟を決めたのだそう。


お前、全部断って、そこに行くのか?と。


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