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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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28/52

フプリーの手紙③


*


ジルベル伯爵家 ディーン様



婚姻のお申入れをいただきありがとうございます。

とても、とても光栄に思います。


私は貴方が好きです。

私は貴方に恋しています。

これがきっと、そうなんだと思います。

なにぶんはじめてのことなので、よくわからないのですが、

きっと、これが恋です。


貴方の笑顔が好きです。

貴方の声が好きです。

貴方の立ち振る舞いも好ましく思うし、貴方の言葉は私を救ってくださった。


その貴方が、私に婚姻のお申し込みをくださるなんて。


もう、震えるほどに嬉しく思います。

私たちは、両思いなのですよね?


エスコートで貴方に触れられて嬉しかったです。

魔力は少し驚きましたが、それも嫌ではなかったのです。



*


フプリーは止まる。

どうしよう。

好きしか書けない。


好きなのよ。

好きなのに。


だめ。

涙が手紙に落ちてしまいそう。


慌ててフプリーはハンカチで目元をおさえる。


深呼吸。

ああ、苦しい。

自分を落ち着かせて、再びペンを手にする。


*


けれど、貴方を思うと、胸が苦しくなります。


貴方の笑顔が頭から消えません。

貴方の声が言葉が、頭から消えません。


私は貴方を好きすぎて、苦しいです。

私は、欲張りになると思います。


もし、貴方がそばにいたら。

貴方のそばにいることを許されたなら、

きっと、離れたくなくなる。


貴方と婚姻を許されたなら、

貴方が私以外の女性とお話しすることを許せなくなる。

もしかしたら、私以外を見てもだめ、と言い出してしまうかもしれない。


貴方は外交官になる。

私はそれを止めるわけにも行きません。


私は、ついていく覚悟がないくせに、我儘な思いばかりがあふれて、私は私が嫌う自分になってしまいそうです。


私は怖いのです。

貴方に惹かれることが。

貴方を好きになりすぎることが。


まだ、二度しかお会いしていないのに。

両思いだと知ってしまったら、


お茶会で女性とお話ししていた貴方を、憎らしく思ってしまいそうです。


私を好きだと言ってくださっているのに、と。


私は怖い。


私は私ではなくなってしまう。


私がもっと大人だったら違っていたのでしょうか。


ディーン様。


私は、貴方のそばにはいけません。


こんなにも、貴方に惹かれているのに。


私の我儘をお許しください。


私は、私で居たい。


貴方が好ましく思ってくださった、私のままでいたいのです。



カルマン伯爵家 フプリー


**


「ああ……」


溢れる涙が、止まらない。

私、すごく、頑張っていると思う。

自分のために。


私は、私を守ったんだと思う。

私自身から。

私自身のために。


未来の私は、絶対に今の私に感謝する。


フプリーはそう信じることにした。


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