フプリーの手紙①
朝食の席で、お父様からお返事をどうするか尋ねられる。
お母様が、痛ましいものを見るような表情をしているけれど、いまの私、そんなにひどい?
「お断りするかたには、こちらで回答することもできるが」
お父様が、また私を甘やかそうとしてくださる。
その気持ちが嬉しくて、微笑む。
「大丈夫です。自分でお返事します。ご本人にお手紙を書いて、お渡しした後にお父様に連絡しますから、ご当主様への回答は宜しくお願いいたします」
そう答えてから、ディーン様にお会いする術がないことに気がついた。
「ジルベル伯爵家のディーン様には…」
「国立か。こちらで預かろう」
父は言ってから、私を見つめる。
「会わなくて良いか」
「…はい」
声が、少し震えてしまった。
*
ノルド辺境伯家 ヒュードル様
先日は遠乗りにお付き合いいただきありがとうございました。
そしてご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
そんな、謝罪しなければならないくらいの私に、勿体無いお言葉と婚姻のお申し込みをいただきまして、ありがとうございます。思いがけないお話に、とても驚きました。
私自身の噂については、私も人伝てに耳にしたことがあります。
もちろん、そのような心づもりはありませんでしたから、ヒュードル様からのお言葉にはとても救われた思いです。
ヒュードル様の訓練されている姿を見学させていただいたことがあります。
身のこなしの鮮やかさと、剣に込める魔力の清々しさに魅了されました。
カッコいい!と騒いでしまったりもしていました。
こんな素敵な方に私を望んでいただくなんて、そんな夢みたいなこと、本当に信じられません。
噂ではなく、私自身を見つけてくださったヒュードル様の家族になれたら、とても幸せなことでしょう。
けれど身の丈を超えた光栄に、むしろ戸惑いを感じてしまいました。
馬に乗れなくても良い、というヒュードル様のお言葉にあまえたくなります。
それではダメなのだと、私は思うのです。
私は私の足で立ち、歩み、子や家族を守りたい。
ヒュードル様の隣に立った私は、きっと守られるだけになってしまう。
今の私には貴方を守ることができません。
考え方が幼いのかもしれません。
大人になれば、物の見方が変わるかもしれません。
ヒュードル様に憧れる思いはあります。
けれどきっと、それは夢なのです。
私は現実を見なければならない。
私の現実はいま、実家の領地に、そして魔法陣の研究の中にあります。
私は今、魔法陣の研究者になろうと思っています。
いつか私の魔法陣が、ヒュードル様とそのご家族を守ることが出来ますように。
私は、私を認めてくださったヒュードル様に心から感謝いたします。
本当に、ありがとうございます。
カルマン伯爵家次女 フプリー




