ローザのお茶会③
ミーレイ様のアドバイスを受けながら、ローザは国立学校の二人を友人達に紹介していく。
もちろんその間、フプリーはディーン様とお話しする事はできない。
そして、何故だろう?
このお茶会は、大半がお友だちだから、その必要は全くないのだけど。
右にダリウス殿下、左にフォーリア様。
ええーと。何故?
私がお茶会に参加した場合、毎回このフォーメーションなの???
ただ、毎回お世話になっているのは確かなので、「解散!」と言いづらい。
ちなみに、ミーレイ様がローザに付いているので、いつもエスコートしているリヨール君は魔法陣コースの男子と共に、寮生達と歓談している。
その輪の中から、
「フプリー、手伝って!」
と、秀才ダニエル様の声。
何を?と思いながら立ち上がれば、当然という顔をして、ダリウス殿下がエスコートしてくださる。
いや、お茶会ではいつも横にいる都合上エスコートしてくれますけどね?
今日は大丈夫なのですよ…
………言いづらい。
王子は王子だから、エスコートは当然だと思ってくれてるのだろうけども。
ちなみに。
フォーリア様のエスコートには、リヨール君が颯爽とやって来てその手を取っている。
…慣れている。流石。
何をしているのかと思ったら、ダニエル先輩がひよこを動かしていた。
ひよこ…下手くそです、先輩…
魔法陣で描く絵も、上手い下手があるのか。
普段、絵を担当するのはフプリーなので、その事実には気づかなかった。
お茶会がちょっとした研究発表会のようになってしまったが、この魔法陣は全く実害がなく、夏に行われる文化祭で出展しようか、という話も出ているから、ここでみんなの反応を見るのも悪くない。
「フプリー嬢は魔法陣の研究をされているのですね」
フォーリア様が左隣に居なかったタイミングにお声がけいただいた。
銅色の髪は少し伸びただろうか。優しい眼差しに嬉しくなる。
「はい。ダニエル様とは同じ研究班で学ばせていただいてます」
「ディーン様の専攻は外語でしょうか」
フプリーは国立にどのような専攻コースがあるか知らないが、ふと、兄の言葉を思い出した。
「ええ、外語も取っています。国立はいくつかのコースを同時に専攻できますので、外語だけではないのですが」
フプリーの手元を見ながら、穏やかに話す。
「魔法は基礎しか学びませんでしたが、魔法陣は少し、数学に似ていますね」
私もそう思う!
思わず、パッとディーン様を見た。
榛色の瞳と目が合って、ドキりとする。
「数式のようですよね、僕もそう思います」
弾むように応じたのは、ダニエル先輩だ。
「魔法陣の要素を組み換えれば、しっかり理屈を返してくれる。魔法陣は裏切りません」
ちょっと、メルト様みたいになってる。
「ダニエルさんは将来、研究者系の王宮魔術師になられるのでしょうか」
「はい。ウルマ様の研究室からお声がけをいただいております」
「ウルマ侯爵家と言えばメリッサ様ですね。筆頭魔術師の弟子とは!将来を期待されていますね」
筆頭魔術師の弟子?!
初耳です!ダニエル先輩!!
その場の皆が、わぁーっと、盛り上がった。
「僕は研究ができるなら、どこでも良いのです。幸い、自由度の高い研究室からお声がけいただけたので、このお話は受けるつもりでいます」
そうか。やっぱりダニエル先輩は王宮魔術師になるよね。
「ダニエルはちゃんと考えているよなぁ。俺なんて、なんとなくの魔法陣コースだから、将来は白紙のまま。可能性の塊だよ!」
ローザの班の先輩にあたるスワロ男爵家のヴァルターがため息をつく。
「ヴァルター先輩はまだもう一年あるじゃないですか」
ダニエル先輩はヴァルター先輩と同年でも、飛び級して先に卒業するのだ。
「凡人と秀才の差だね」
と、ヴァルター先輩は肩をすくめる。
自称「秀才」はフプリーにだけ名乗った訳でもなさそうだ。
「凡人は秀才になれるだろうけれど、努力し続けることができるのも、ある意味では、天賦の才なのかもしれませんね」
……ん?
フプリーは一瞬、ディーン様の言葉の意味が分からずにいたら、耳元でダリウス殿下が子ども言葉に翻訳してくれる。
ちょっと!ちゃんと考えればわかります!!!
フプリーはムムッと口を尖らせた。




