ローザのお茶会②
ディプソーの邸宅は、モード家のそれとはまた違った意味で素晴らしかった。
貿易商として名を馳せただけあって、庭のあちこちに、ディバレイドとは明らかに文化の異なる芸術が嫌味なく配され、見る者の興味をひきながらも景観を邪魔していない。
テーブルを飾る花も食べられる花なのだそう。最近流行し始めたという、西の国レクトゼイルの綿菓子や、南国メヌアの揚げ菓子など、珍しい菓子もあれば、王都で人気の老舗カフェのカットケーキ、だとか、購入予約が半年先まで埋まっていると噂のチョコレートまで用意されている。
ローザがぎこちない動きで殿下にディーン様をご紹介する。
「ダリウス殿下、こちらはジルベル伯爵家のディーン様。ロイドの友人で国立の外語専攻をとっていらっしゃるそうです」
震える声に、頑張れ!と心の中で声援を送る。
「ディーン様、ダリウス様は同級で…」
ローザは少し考えて、
「…私などとも口を聞いてくださるとても良いお方です」
…ちょっと、ローザ!
ダリウス殿下が流石にちょっと驚いたように眉をあげ、ミーレイ様がクスクスと笑いを堪えている。
ローザが「失敗した!」という顔をしたけれど、ミーレイ様に促されて、今度はフォーリア様にディーン様をご紹介する。
「ディーン様、ブリア公爵家のご令嬢のフォーリア様です。同じ魔法陣のコースのクラスメイトですが、特に寮ではたくさんお世話になっています」
…まぁ、そうだけど。
「フォーリア様、ジルベル伯爵家のディーン様です…」
続く言葉が見つからず、ローザは助けを求めるようにミーレイを見た。
ミーレイ様はニコリと笑って、ディーン様にカーテシーをする。
「モード家のミーレイでございます。先日は我が家の茶会にご参加いただきましてありがとうございます」
そうして、今日はローザの初めての茶会において、アドバイザーを勤めていることをお話しして、ご紹介の途中でホストへアドバイスするための断りを入れた。
ディーン様はにこやかに了承する。
「ローザ様、ご紹介の順番は正解です。身分の高い順に、同格であれば年齢の順にご紹介して行きます…、そして、今回のように…」
ミーレイ様が細かくマナーと立ち振る舞いについてレクチャーされる。
ロイド様がその様子を見て、とても感動されていた。
「マナー講師を雇うつもりでいたのですが、本物のご令嬢から直接教えていただけるとは。ありがたい限りです」
そして改めてダリウス様とフォーリア様に向き直り、立礼する。
「ダリウス殿下、ブリア小公女様。ローザがお世話になり、そして本日もお付き合いいただき本当にありがとうございます」
ダリウス殿下が手を挙げて応じる横で、フォーリアが珍しく社交的な表情をみせる。
「ローザ嬢はよく頑張っている。頑張りすぎているようにも見えるから、気をつけてあげて」
本当に!ちょっと心配になるくらいだ。
「ローザ嬢はご友人に恵まれていますね」
ディーン様がそちらを見て微笑まれる。
ああ、ディーン様だなぁ。




