お気楽下位貴族ポジ
貴族は6歳から11歳まで初級の貴族学校で行儀作法と基礎学力を身につける。
魔力がなければその後2年制の中級学校へ進み、成績優秀者はさらに4年制の上級学校へ進む。
なお、中級と上級学校は学力があれば貴族でなくとも通うことができて、別名で国立学校とも呼ばれている。
国立は貴族学校に代わる平民向けの基礎学校もあり、そちらは教師が各地の領主館に派遣されて開く教室の形式をとるが、中級学校以降は王都での全寮制となる。
魔法学校はタウンハウスからの通学が許されているが、国立は完全全寮制だ。
何故かは、フプリーの知るところではない。
魔力持ちの中にも、魔法学校で2年過ごした後に敢えて上級学校へ転校する子女もいる。
彼らが転校する理由は様々だが、魔法以外の専攻コースは当然上級学校に用意されているので、多くは魔法外専攻を取るために上級学校への転校を希望するのであるが、中には婚約者に魔力を求めない第二子以降が婚活のために転向することもあるようだ。
魔力はステイタス。
魔力を持たない子女の中に行けば、所有する魔力が弱くとも「魔力持ち」だというだけでご縁を得ることができるのだそう。
魔力持ち同士の婚姻でも必ずしも全員が魔力を得るわけではないし、魔力無しも決してマイノリティではない。
けれど、魔法使いの国であるディバレイド王国においては、当主は魔法を使えるべきという暗黙の了解があって、だから魔法学園に通う子どもたち同士で婚姻を結ばれることは多かった。
フプリーは魔力の有無にこだわりはない。
たまたま自分は魔力持ちだけれど、もちろん力があれば便利ではあるけど、貴族でなければ、さらに外国に行けば魔力がないのは当たり前だし、魔石や魔道具があれば、貴族世界でも不自由はしない。
学生のうちに恋人を見つけたって良いけど、魔法学園よりも上級学校の方が次男三男が在籍している可能性は高いから、出会いを求めて転校も悪くはない?とは思っていた。
ただ、よほど成績が良くない限り、就職には魔法学校の方が絶対に有利なんだよねぇ。
なので、フプリーは基礎の2年を終えたら、そのまま魔法学校に残り、駄目元で魔法陣コースを希望した。
成績普通のフプリーさん、どうにか希望が通りました!
とりあえず!
お友達はたくさん作っておこう、頑張るぞー!と思っている。
上手くすれば、
「こちら、学園で仲良くしていたフプリーさん」
と、魔力はないけど素敵な男性をどこかでご紹介いただけるかも知れないもの!
歌劇では王家や高位貴族が開く夜会での出会いを描いていたりするけれど、伯爵家のオマケのフプリーが呼ばれる夜会はそう多くはない。
せいぜい、社交界デビューとして招かれる15歳の新年を祝う舞踏会と、卒業のお祝いに一度だけは確実に招かれる秋の収穫祭くらいだ。
夜会用のフォーマルドレスなんて、作る気も予算もないし、そうなると出会いは日中の茶会か学園内か職場くらいだろう。
王族付きの侍女とかになれたら、一気に出合いは広がるはず!
だけど、フプリーの家の親族で王族付きの従僕も侍女も近衛騎士も居ない…縁故採用は無理かもだけど、そこも顔を売ってどうにか!
あーーー、なんで、私は人見知りなんだろう!
やる気はあるのよ、やる気は!
ただ、何を喋れば良いのかわからなくなるだけなの!固まっちゃうだけなの!
これも、慣れればどうにかなるのかなぁ。
そんな事を愚痴愚痴と言っていたら、その為のマナーでしょう?と、至極真っ当な答えをありがとう、レベッカ!
レベッカはライカ子爵令嬢。フプリーと同じ寮のお隣さんだ。
魔法学園には男女別の寮が用意されていて、王都にタウンハウスを持たない家の子女たちが入寮している。
大体が伯爵以下の家の子女で、公侯爵家の領地に勤めているか、家自体が領地持ちでも冬の社交時期には領主夫妻のみ王都のアパートメントを利用するような家もある。王都勤めの王都住みでも家が郊外であればやはり入寮することになる。
また、稀に王都のタウンハウスの管理を任せている親族と本人の折り合いが悪いとか、冬の間はいくつかある王宮の離宮や客間を利用するからタウンハウスを持たないなんていう王族に連なる貴族もいて、そういった高位貴族子女は侍女もしくは男子なら侍従を1人連れて特別室を利用しているらしい。
らしい、である。
お友達に高位貴族がいなかったので知らない。知らなかった、今までは噂レベル。
リヨール君のお陰様で、高位貴族のお友達がどどーーーんと増えたのはこの後。
いや、あの、ワタシ、下位貴族でいいんですけどー?
あ、ちなみに。リヨール君も無事に魔法陣コースに進むことができて今は同じクラスです。
普段、フプリーが交流していたオトモダチは、男爵とか、子爵だとか、どちらかというと、貴族でも上位の家で雇われている系の家の子が多かった。話の中身も下位貴族あるあるが多い。
「貴族学校ではマナーを習ったけど、習慣というのは抜けないのよねぇ」
ゼニス男爵令嬢のカーレが、ため息混じりに言うと、ライカ子爵令嬢のレベッカが勢い込んで同意する。
「わかるー!先生やお偉いさんの前に出たらカーテシーよりもお辞儀をしたくなるのよ!」
…お辞儀?
お辞儀…控える形の、両手をお腹の前に揃えて少し屈んで目を伏せる、あのお辞儀?
「フプリーちゃんちは、伯爵家だし、領地持ちだから、お辞儀される側だったんじゃない?」
お父様やお母様と外に付き添う侍女や使用人がやってるイメージ。
そんな事を考えていた隣で、メートル子爵令嬢のローザが同じように首を傾げている。
「うちも領地はあるけど、管理は人に任せてるし、両親は王都勤めだから、領地に帰るのは年に一度だけだからなぁ。使用人のマナーも、貴族のマナーも中途半端な感じよ」
「そっかあ。うちは侯爵家に住み込みだからなぁ。幸いと言っちゃなんだけど、侯爵様のお子様たちはまだお小さいから、学校はかぶらなかったけど」
そこでようやくフプリーは気がつく。
「そうか、子爵家や伯爵家の子女でも、たまに上位貴族と一緒に行動してるあの子たちは、そう言うこと?」
「まあ、寄子の可能性もあるけどねー。
侍女も侍従も1人づつしか連れて来れないから、魔力持ちの学生で使用人の子がいたら、使うよね。うちは母がそれで大変だったって聞いたわよ」
男爵家のネリーの言葉は衝撃だ。
「ええ?!そんなの、純粋に学校を楽しめないじゃん?!」
「いやいや、フプリーさん、学校は遊びに来るところじゃなくて、学びに来るところだから!」
…そうなんだけどさぁー




