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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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カルマン伯爵家第三子のフプリー

前作からだいぶ間が空いてしまいましたが、魔法陣シリーズの4作目です。

終わりが見えてきましたので、投稿を開始します。

おそらく、50話くらいになるかと思われます。

どうぞよろしくお願いいたします。

「フプリーは、伯爵令嬢だもの。その気になれば、王子様にだって嫁げる身分じゃないの」


「その気って…」


ギリギリ上位貴族と言われる伯爵家。

でも伯爵家だって色々だし、魔術師が多い子爵家と大差ないと思う。

フプリーの体感としては、男爵と子爵の間と伯爵と侯爵の間にこそ格差があるイメージだ。

それに、魔法使いの国と言われるディパレイド王国の貴族においては、魔力こそがステイタスと言われている。

長子が多くの魔力を受け継ぐと言われる魔法使い同士の夫婦に、フプリーには兄姉が1人ずつ。つまり第三子である。

魔力があるので魔法学校に通ってはいるが、魔力がステータスと言われる貴族社会において、伯爵家の第三子は婚姻相手としてはイマイチ人気がない。

魔術師が多い子爵家の長子の方がよほど人気があると思います!


「私は男爵家だもの。ダリウス様の視界にすら入らないよ」


男爵家のネリーは深い深いため息をつく。


ダリウス様とは、我らがディパレイド王国の第二王子でいらっしゃる。フプリー達と同じ学年で魔法学校に通っているのだ。

今年最高学年で生徒代表を務められているナタリー王女はキリリとしたクールな淑女でいらっしゃるし、少し歳の離れたお兄様で立太子も済まされているシュドリウス王太子殿下も華やかながら凛とした佇まいの、なんとういか、近づき難い雰囲気を纏っていらっしゃる。

王族というのは、本来そんなものだと思うのだけれど。


ダリウス殿下はちょっと違う。

同じ王妃様から生まれて、何故こうも違うのか。

見た目はとてもとても華やかでいらっしゃる。


「にこやかに罵倒されたい」

目の前でうっとりと呟くネリーの好みが、サッパリわからない。


将来はまぁ、王宮付きの侍女だとか、高位貴族の家付きに雇われることになるだろう。

できれば王宮に行きたいなぁ、とは思う。


王宮に居れば、近衛兵とか、文官とか、王宮侍従だとか、優秀な貴族男子と出会うチャンスがたくさんあるに違いない!

両親の魔力を最も多く受け継ぐのは第一子であり、子が多くなるほど末に向かって弱く小さくなるとも言われていて、婚姻に望まれるのは、第一子と良くて第二子まで。第三子以降はスペアとして存在しているにすぎないから、中流以下の貴族家に置いて、第三子に政略の結婚を求めることは少ない。


伯爵家の第三子というのは、つまり、ある程度の制限はあれど、自由恋愛を楽しめるポジション!!!


恋愛の先に結婚があるなら考えても良いかな、とは思っているけれど。

兄姉の後に生まれたフプリーであるが、期待された男児でなかった為に、母は祖父母から第4子をも望まれたらしい。そんな、子供を産む道具みたいにされるくらいなら、目指せオールドミス!である。

次男三男は王宮に多く勤めているのだから、自由恋愛を目指すフプリーにだって望みはあるはず!間違っても、既婚者や嫡男に引っかからないように気をつけなけらば!


フプリーは最近流行りの恋愛ものの歌劇が大好きだ。

古典的な歴史ものの歌劇は難しくて好まないが、母と行く恋愛歌劇は歌だけでなくセリフもある演劇と歌劇の間のようなもので、終戦後に雪深いレクトゼイル王国から入ってきたのだそうな。

そこで上演される歌劇は勿論、舞台化候補として挙げられる脚本も人気で、母とは次はこの脚本をあの歌手でやって欲しい!などと良く盛り上がったものだ。

父や兄姉には内緒の2人だけの秘密である。

今はスポンサーが領地に帰ってしまっているのでなかなか観に行けないが、本屋で手に入るようになった脚本を買って楽しんでいる。

その中には王子と恋する話もあるが、現実の王子の姿との乖離がありすぎて、そこに憧れは生まれない。

フプリーとしては、騎士との恋や王宮の文官や侍従たちがすれ違う令嬢に恋するものや、令嬢の後ろに従う侍女との逢瀬を楽しむといった、身近に感じる恋物語を好んでいて、そこにこそ強い憧れを抱いているのだ。


学生のうちに、恋人を作るのもありよね!

婚約者のいない次男三男や一代爵位の騎士爵の子息、貴族の家に属していても爵位なしの家系もある。

爵位を持つ当主が平民落ちしない限りはその家に属していれば貴族として扱われるので、嫡子でない貴族男子も決して少なくはない。

稀に当主が下位の爵位をいくつか保有していることもあって、便宜上息子にそれを与えてたりすることもあるけど、文官や魔術師で功績をあげた者に陛下から爵位を賜ることもなくはないけど、家に縛られてさえいなければ良いのだ。


フプリーが仲良くなったクラスメイトたちと恋バナに花を咲かせる。中には婚約者が決まっている子も高確率でいたけれど、騒ぐのは自由だ。


仲良くなった男の子には、ちゃんと爵位と共に家族構成や将来の展望なんかをリサーチ。

だいたいはフプリーが家族構成の話をすれば、うちはこうだよ、と答えてくれるし、将来の話をすれば、こう考えてるよ、と応じてくれるものだ。


仲良くなった同い年のパリス伯爵家のリヨールくんは次男だった。

魔法爵の親族だとかで、なのにお祖母様の意向で魔法陣コースに進ませてもらえないかもしれない、なんて話している。

お兄さんは魔石集めが趣味のものすごいマニアックな方で、問答無用で魔石コースに進んだらしいが、5つ年上なので既に卒業されてある。


現在当主をされているお父様は詠唱に進んだものの、じつはご本人は魔法陣の扱いに長けていらっしゃるとか。

王宮魔術師ではないけれど、魔術師たちに関わる部署で長く王宮に勤めてらしたようだ。


「研究者にでもならない限り、どのコースに進んでも良いんだろうけど、どうせ学ぶなら興味のある分野に行きたいんだよね。間違えて苦手な分野に行ったら、それこそ4年間地獄だよ」


これにはフプリーも心の底から同意する。

フプリーは歌劇が大好きだけれど、悲しいことに、音痴である。

だから、出来れば、詠唱クラスは避けたい。詠唱は歌でも曲でもないけれど、歌うように唱えることになる。聞くのは好き。

唱えなくて良いなら、天国だ。

が、唱えるのは地獄…


「私も魔法陣に行きたいなぁ。あの、魔法陣に魔力が載る瞬間が好きでね」


リヨールくんとはなんだかんだ気があって、よくお喋りする。

そんな時、ものすごく美人さんな同学年生のミーレイ様がこちらにいらした。たしか、モード侯爵家のご令嬢だ。


フプリーが慌ててカーテシーをする横で、リヨールくんが手を上げて挨拶をする。

え、男女の差こそあれ、身分的にどうなの?と思ったら


「紹介するよ。モード侯爵家のミーレイ。次期モード伯爵で、僕の婚約者だよ」


婚約者?!


フプリーはびっくりする。


伯爵家次男のリヨールくん、婚約者いた!しかも!お相手は次期ご当主様!

女性が家を継ぐ場合には降爵となるのだけど、モード侯爵家といったら、王家に連なる名家だ!


「こちらは同じクラスのフプリーさん。カルマン伯爵家のご令嬢だよ」


ミーレイ様はピカピカの笑顔で、とっても綺麗なカーテシーを見せてくれた。


「リヨールと仲良くしてくださってるなら、私ともお友達になってもらえるかしら?」


拒否なんて、出来るはずないよね。


あなたの婚約者狙ってました!とか言えないし。

というか、まだ狙うも何もなかったけど。


フプリーだって、誰でも良いわけではない。

むしろ政略的に決められない分、本当に好きな人を見つけたいから、間口を広げているのだ。

女子とばかり連んでいたら、男子と出会うチャンスを逃すことになる。


リヨール君のお友達を狙え!


芋蔓式にいろんな人に会わなくちゃ!


そんなことを考えていたら、お友達になった、ミーレイ様にお茶会のお誘いをいただいた。学生のお茶会でリヨール君も参加するのだそうな。


ということは、男子も来る?


クラスメイトの半ば以上が嫡子、もしくは婚約者アリが多いので、フプリーの条件に合わないのだ。


漁場を広げる必要がある。


お茶会にときめきが転がっていますように!


あーーーでも、わたし、実はちょっと人見知りなのよねー







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