呼び出し再び
一晩寝たらフプリーは元気になった。
授業が始まれば、共同研究の同じ班に秀才ダニエル様がいらして、面白い立体の魔法陣を次々と披露してくれる。
ダニエル先輩は魔法陣を使って色や形を表現するのが得意で、フプリーは魔法陣を使って絵を描けたりするんじゃない?なんて思い立った。
魔力を乗せたら、動いてくれるような、魔法陣を使った絵。
魔法陣を使っていれば、授業中に堂々と絵を描けちゃうんだな〜とか思いながら、簡単な絵の要素を魔法陣に取り込んで表現する、なんてことをやり始めた。
そうしたら、横からダニエル先輩がそれを立体にしてくれる。
おお?!フプリーが魔法陣で作ったひよこさんが、とびだす絵本みたいになった!
残念ながら、どの方向から見ても、同じ絵だから、絵が立ち上がったように見えてもひよこの後頭部は見えないのだけど。
ネリーに誘われて騎士の訓練場に行けばヒュードル様の姿を見ることができて、やっぱりこの方はかっこいいんだなぁ、なんて改めて思った。
たまに校内で遭遇する様になったメルト様は、フプリーを見つけるとまっしぐらにやってきては、相変わらず目を輝かせてよくおしゃべりをされる。
メルト様からは、いくつか魔石をいただいたので、魔法陣の授業で使わせていただいたりもしている。
お話をしたことがなかったヒュードル様とは、イエン様とダリウス殿下を通してお話をする機会をいただいた。
フォーリア様も一緒に、遠乗りをするというので、ついて行くことにしたのだけれど、
あの!私、言ったよね?
馬には乗れないって!!!
お馬さんは、小さいからって、私をバカにするのよ!
この遠乗りには、実はローザも参加している。
ディプソーに嫁ぐことが決まったローザは、隙間の時間に乗馬を学び始めたのだ。
騙し騙しでも馬に乗って遠くまで来れたローザとは違って、フプリーは一人で馬に跨げない。
フォーリア様の馬に同乗させていただいたけれど、ごめん、お尻が痛すぎる。
ヒュードル様は素敵だし、お話ししたい気持ちはあるけれど、遠乗りにお付き合いするのは、ちょっと無理かも〜
「遠乗りできなかったら結婚できないわけでもないでしょう?」
ミーレイ様は呆れ顔で言うが、無口なヒュードル様と自然に一緒にいる術ってあまり思い浮かばない。
「まぁ、無理なら無理で、次に進めばいいさ」
ダリウス様、私もそう思います!
フプリーは参加しなかったけれど、ミーレイ様の開いたお茶会に、ディーン様とサンゼット侯爵家のルーカス様が参加された様だ。
ディーン様は「魔法学校に通っているカルマン家のご令嬢」の話を聞きたがっていたとの事。
ミーレイ様とリヨール君目線では、「変な人ではなさそうだよ?」
と言う。
そうでしょ、そうよね?とフプリーは身を乗り出す。
「外交官になったら、海外に行くことになるね」
「海外に、ついていくのか?おまえ?」
あ。
そういう未来か。
んんんんんーー?
ダリウス殿下と目が合う。
「サンゼット侯爵家のルーカス様も落ち着いた方でしたよ」
「同じ年とは思えないくらい?あれ?ちょっとフォーリアに似てると思ってたけど…」
「…従兄弟だよ」
「そうだ!モリー様のご実家よね!」
…殿下とフォーリア様が従兄弟同士で、
フォーリア様とルーカス様も従兄弟同士…
サンゼット侯爵家の第二子…
王家に近くないですか?
兄セナーとエネット様の結婚は春の種苗祭の前に行われる。王に婚姻の許可を得て、種苗祭に領地でお披露目されるのだそう。
兄と姉に呼び出されたのは、その結婚式を控えた春先の話。
「…お兄様は今が一番お忙しい時期なのではないですか?」
呆れた様に口を開けば、少し痩せた様に見える兄が、ギロリとフプリーを睨んだ。
「忙しいよ、当たり前だろう?!」
結婚のための申請書類、式のための衣装はもちろん、婚姻後の住まいも今は王都勤務なので王都で用意しなければならない。エネット様も実は王都で文官をなさっているので官舎住まいだった。カルマン家は王都にタウンハウスを持たない貴族だが、まさか新婚ですぐに別居するわけにもゆかず、といっていずれは領地で子育てを考えているとかで、適当なアパートメントか、借家を探しまくったのだそう。
「これを機にタウンハウスを用意しても良いのではない?」
と母は言っていたが、そうなれば絶対に母が入り浸るだろう。いずれ手に入れるかも知れないが、それは今ではないとの事だ。
「それでお前、決めたのか?」
…やっぱり?
「どうも、父様の所に、婚姻の申し込みがいくらか来ているらしい」
え?
えええええ?!
「ど、どなたからですか?私の知ってる人ですか?!」
伯爵家第三子のオマケのフプリーに縁談!?
「まぁ、多分、ディーンからは来ているだろう。私の方にも手紙の取次を頼んできていたしな」
ディーン様!!!!
フプリーの胸がギュッと絞り上がる。
「有能だろうし、人も悪くない。だが、あいつは外交官希望だし、おそらくそれはお前と婚約しても変わらないだろう」
「フプリーは王宮に勤めたいのでしょう?ディーン様と一緒になるなら、あなたも外交のお勉強をしておいた方が良いわね」
「外国語を学ぶなら、国立に編入した方が環境は整っているよ」
外交官になるの?私も?
あ、違うか。外交官の妻か。
でもきっと、同行するなら、仕事の様なものになるよね。
ディーン様のあのクシャッとした笑顔が浮かぶ。




