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フプリーは逃げ切りたい  作者: サンガツワサコ


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流された魔力

寮に戻って学校が始まって少しした頃。


ローザの婚約がまとまった。


「ディプソーって、あのディプソー?!」


真っ赤に顔を染めるローザを前に、皆が同じ質問をする。


「大家じゃないの、大丈夫なの?!」


常々、大家は無理だと聞いていたレベッカたちは、喜ぶより前に心配している。


うん、そこはね、ちょっと心配ではある…


「大丈夫…だと思う。でも、うん、頑張る」


ローザの反応に、その場に居合わせたとの情報を知っている皆が私に説明を求める。


そうよね、私だって、知らなきゃ気になるよー。


ローザの悲鳴と妨害を受けながらも、洗いざらいを喋らされた私の横で、フォーリア様はとても冷静な表情。


「外交官ね」


ん?それは、ディーン様のこと?



そして、人物図鑑編集部。


「フプリーさん、ジルベル伯爵家のご子息にお会いできたの?」


フォーリア様、思いの外お喋りでいらっしゃる。


「お会いしてると思わなかったから、次のお茶会に招待状を出しちゃったけど、よかった?」


ミーレイ様の言葉に、フプリーの胸がキュッとなった。


「え?もしかして、良さそうなかんじ?」


リヨール君が身を乗り出す。

ダリウス様も、ちょっとビックリしたみたいな顔でこっちを見ていた。


うわぁ、絶対に揶揄われる!!!


フプリーは深呼吸する。


「素敵な方でしたよ。気配りができて、清潔感もあって、笑うと可愛いんです」


あ、クシャっとした笑顔、思い出しちゃった。


「似顔絵!描いて!是非!」


えええええ?!


ミーレイ様の後ろにブンブン振られた尻尾が見える…


描けないよー。


実は、帰ってきてから何度もチャレンジしたのだ。

脳裏には、こんなにも鮮やかに浮かぶのに、どうしても上手く描けない。


手元には炭はないので、フォーリア様が鉛筆を渡してくる。

ペンじゃなくて鉛筆を持ってるの?珍しい…とか思っている余裕はない。急かされる急かされる。


描きながら、ちょっと違うんだけどなぁ、と思いながらも。ま、いいか。


「それで、印象は、気配りと清潔感と笑顔が可愛い…」


リヨールくん、よく覚えてる。


「魔力は?」


「ええと、真綿みたいに柔らかくって、包み込まれるみたいな感じ?」


「感じ?」


フォーリアが首を傾げる。


「魔力をどうやって見たの?」


言われて、フプリーは無意識に自分の手の甲をみる。


「お前まさか、魔力ながされたのかよ?!」


えええええ?

何故だか、ダリウス殿下が怒っている?



フプリーは、被告人になった気分だった。


え、だって、私が悪いの?


そんな、可哀想な子を見る目で見ないでくださいーーー!!!


ダリウス殿下が、ものすごい不機嫌な顔で私の手をとった。


「ちょっと!殿下!」


周りが察して止める間もなく…



するりと、ダリウスの黄金色の魔力がフプリーに入ってきた。


えええ?!なに?なんで?!


私を含め、他の3人も呆れ顔だ。


「どうだよ。こんなこと、普通するもんじゃねぇんだよ。わかるだろう?」


わかんない!わかんないけど、何これ?私の中にダリウス殿下が居る!?


「大丈夫?気持ち悪くない?」


ミーレイ様が物凄く心配してくださる。


「いくら王家の魔力とはいえ、許可なく流すのはダメですよ、殿下!」


リヨール君が珍しく怒っている。

ダリウス殿下は、ふん、と鼻を鳴らして、


「その、ディーンって奴も許可なく魔力を流したんだろ」


いや、あの、量が違います、量が!!!


フプリーは真っ赤になった。


なんだろうこれ、内側を撫でられてるみたいでめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!!!!


「気持ち悪くない?放出の魔法陣使う?」


なにそれ。聞いたことのない魔法陣の名前が出てきた。


「大丈夫です。魔力はむしろ心地よいくらいなんですけど、こんな感じ初めてなので、ちょっと…」


フプリーはちょっとボーっとしている。


「…お茶会、フプリーさんは欠席にしますか?もうおひと方の、サンゼット侯爵家のご子息もお招きしたけれど」


…皆様の中のディーン様のイメージが、「許可なく魔力を流したひと 」になってしまった。


そんなに大袈裟なことでもなかったと思うのに…


「候補者全員に会わなくてもいいだろう?いま、知ってる中で決まらなければ、見にいくんでも良くね?」


むしろダリウス殿下の魔力の方がフプリーの中に残っている。


「まぁ、お相手がいつまでもフリーでいてくれるとは限らないけれど、こればかりはご縁ですものね」


そして、何故だろう、眠くなって、フプリーは食堂で寝てしまった。






目が覚めた時、誰かがストールをかけてくれていたみたいだ。


目の前で、何故だか殿下が、何か書き物をしている。


幾らかの書類をまとめて、あまり見たことのない男性に手渡している。別の書類を渡されて、中を確認する途中で、フプリーが目覚めたことに気がついた様だ。


「…大丈夫か?」


いつもの揶揄う表情とは違う、綺麗な殿下のお顔。


フプリーは寝ぼけたまま、ぼんやりと王子の顔を眺めて、黙って頷いた。


「悪いな、加減がわからなかったんだ」


そう言いながら、フプリーの頭を撫でてくれる。


んー、なんかよくわからないけど、謝られている。王族なのに。


周りを見渡すと、多分、夕方?


「いま、フォーリアを呼びに行かせた」


その言葉通り、フォーリア様が、レベッカと共に現れて、一緒に寮に帰る。


寮に帰って、フプリーはまた眠った。



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