魔石オタク
ミーレイ様のリクエストにお応えして、今回の婚約者候補様たちの似顔絵も描くことになった。
…覚えてるから、必要はないんだけどなぁ。
そこに、魔力の情報も足す。
曰く、婚活には必要!なのだそうな。
描いた絵の横に、フプリーが話した印象と、家柄などの情報をリヨール君が書き足していく。
「うわぁ。なんというか、物凄い個人情報!コレ、フプリーが選ばなかったお相手の婚活に使えそうよね」
選ばなかった…って…
コチラだって、受け入れていただけるかなんて、わからないのだ。
まぁ、お家のプレッシャーがないのは確かだから、そういう意味では選んでもらいやすいかもしれないけれど、逆に旨みもないしなぁ。
フプリーは、途方に暮れる。
そうだよ!
見に行ってはいるけど、選んでもらえるとは限らないのよ!
冬休みが間近になる頃の滑り込みで、ガレ伯爵家のメルト様の姿を確認することができた。
レベッカの忘れ物を届ける、という名目で魔石コースの研究室に顔を出したのだ。
「フプリー!助かったわぁ、ありがとう!」
そういって、わざと忘れたノートを受け取ったレベッカは、とても自然に同じ研究班のメルト様を紹介してくれる。
「こちら、ガレ伯爵家のメルト様よ。アマリオ先生のお孫さんなのですって!」
レベッカが神様に見える!
フプリーはちゃんとカーテシーをして名乗った。
「魔石コースの研究室って、初めて来ました。どんなことをされているのですか?」
尋ねると、メルト様は長めの前髪をポケットから出したピンで留めて、輝かしい表情で、語り出した。
「あまり語られることはないけれど、魔石といっても、種類は色々とあってね…」
…研究について、というか、魔石について語るのが大好きなようだ。
ざっくりというと、動物性の魔獣や魔魚、魔性の植物、代表的なのは魔木かな?その核から取り出される魔石、山から発掘される鉱石型の魔石、何人もの魔術師が何年もかけて魔力を注ぎ込むことで作られる、人工的な魔石、このほかにも正体が判明しない太古の魔石だとか、出所が色々あるほかに、ここの魔石の大きさや質、容量なども様々なのだそう。一般的に魔石というと、魔道具に使われる魔力の入れ物、という意味合いと、そのものに魔法陣を刻んで作る、お守りのような宝飾品のイメージが強い。
今はそれぞれの魔石の種類ごとに、もともと保有する魔力の質と、中の魔力を使い切った後の器としての魔石の質の関係性を研究しているのだそう。
「たとえば、ほら。この魔石は魔木型のものなのだけど、魔力を込めると、こんなふうに…」
メルト様が一つ手に取った魔石に、魔力を込める。
メルト様の魔力は軽くて小さいポンポンのような物がリズミカルに跳ねているみたいな感じで、見ているとちょっと面白くてクセになる質感だった。
魔力が込められた魔石を、魔道具に持って行って、そちらに魔石の魔力を移すと、手にした元の魔石はパリンと音を立てて崩れた。
「使い捨てみたいな感じだよね」
だけどコチラはね、と別の魔石を手に取ってまた魔力を込める。
今度は魔道具に魔力を移しても魔石が砕けることはなかった。
「面白いでしょう?そういう質の違いを確認して、それぞれの魔石の価値を可視化しようとしてるの」
メルト様はニッコニコだ。
聞けばいくらでも答えてくれそうなとても社交的な雰囲気なのに、レベッカともう一人別の学生が
「はいはい、研究に戻りましょ〜ね〜」
と連れて行ってしまった。
「えええ、まだいっぱい喋りたいのに〜」
と引き摺られて行く姿は2つ年上なのにとても可愛いらしい。
フプリーは手のひらを振ってお見送りして、研究室を後にした。




