表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/32

クエスト1完了

読んでいただきありがとうございます。


日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。


もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

ブラッドムーンウルフは倒された。


戦場を重苦しい静寂が包み込む。


そして、その静寂の後に安堵が訪れた。


「だ、大丈夫ですか!?」


エリンはすぐにギルのもとへ駆け寄った。


「ああ、平気だ。ただのかすり傷だよ。それより、お前の友達のほうが治療が必要じゃないか?」


「は、はい!」


エリンは慌ててアウエルのもとへ向かい、治癒魔法を発動した。


リカはその場にどさりと腰を下ろした。


グラムが腕を組みながら近づく。


「おい。勝手に戦わないって約束じゃなかったか?」


「……分かってるよ」


リカは頭をかきながら答えた。


「でも、あのままだと村に向かってただろ。俺たちじゃ先回りできなかったと思うし」


「間違っちゃいない」


ギルも近づきながら言った。


「だが、一人で挑むのは無茶だ」


「分かってる、分かってるって」


リカは苦笑した。


「でも勝ったじゃん?」


「結果的にな」


グラムの表情が少し険しくなる。


「だが、そのせいでお前の仲間は死にかけた」


「うっ……」


リカは黙り込んだ。


「ねえ、もう村に戻らない?」


ヘレンが疲れた声で言う。


「魔力切れだし、ここまで来るだけでも大変だったんだけど」


「そうだな」


グラムはため息をついた。


「戻って休もう」




村へ戻ると、村長が村役場の前で待っていた。


彼らの姿を見た瞬間、村長の肩から力が抜ける。


そのまま全員を中へ案内し、休ませてくれた。


夜。


皆が眠っていた。アウエルだけが眠れずにいた。


しばらくして静かに起き上がり、毛布をたたんで外へ出る。


夜風は穏やかだった。


ベンチには村長が座っている。


「おや、まだ起きていたのかい?」


「……眠れないだけです」


「何か悩み事か?」


アウエルは隣に腰を下ろした。


「別に。ただ、寝るのが苦手なだけです」


村長は小さく笑った。


「若いんだからちゃんと寝なさい。健康に悪いぞ」


アウエルは何も答えなかった。


しばらくして、村長が静かに口を開く。


「ありがとう」


「何がですか?」


「決まっている。この村を救ってくれたことだ」


村長は遠くを見るような目をした。


「あの狼は長い間、この村を苦しめていた。多くの冒険者が討伐に向かったが、誰一人帰ってこなかった」


その声はさらに小さくなる。


「……私の息子もな」


アウエルは黙って聞いていた。


「最初は疑ってしまってすまなかった。私はもう希望を失っていたんだ」


村長は微笑んだ。


「だが、お前たちは帰ってきた。おかげで希望を取り戻せた。本当にありがとう」


「別に」


アウエルは視線を落としたまま答える。


「冒険者の仕事ですから」


「そうだな」


村長はうなずいた。


「さて、私はもう休むよ。明日はささやかだが食事を用意しよう」


「おやすみなさい」


そう言って村長は家へ帰っていった。


アウエルは一人残る。


俯いたまま地面を見つめていた。


――その時だった。


視界の端に何かが映る。


ゆっくりと歩いてくる。


音はない。


足音もない。


白い足。


静かに。


ゆっくりと。


近づいてくる。


アウエルの手に力が入った。


顔を上げることができない。


いや――上げられない。


体が震え始める。


そして。


気づけば、その姿は消えていた。





翌朝。


リカが目を覚まし、役場の中央にあるテーブルへ向かった。


全員すでに集まっている。


「よう、チャンプ。おはよう」


ギルが笑いながら声をかけた。


「おはよー……」


リカは大きな欠伸をしながら席につく。


アウエルとエリンの間に座り、アウエルの顔を見る。


相変わらず目の下の隈は酷い。


「なあ、お前本当に寝たのか?」


「……寝た」


「その顔で?」


リカは呆れた。


「今にも倒れそうじゃん」


「少しは寝た」


「それ寝たうちに入らないからな」


アウエルは無視した。


そこへ村長が現れる。


焼きラム肉とパン籠を抱えていた。


「すまないな。大したものは出せなくて」


「いやいや!」


リカが笑う。


「絶対うまそうじゃん!」


皆が食事を始めた。


しばらくしてグラムが口を開く。


「そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったな」


彼は軽く手を上げた。


「俺はグラムだ」


「俺はギル」


「私はアシュリー」


「ヘレンよ」


リカもうなずく。


「俺はリカ。こっちがエリンで、こっちがアウエル」


互いに改めて名乗り合った。


その時、村長がアウエルへ小さな鈴を差し出す。


「ほら。忘れ物だぞ」


アウエルは受け取った。


「今日帰るなら今鳴らしておくといい。隊商が来るまで時間がかかるからな」


エリンが首を傾げる。


「それって何ですか?」


「隊商の呼び鈴だ」


ギルが説明する。


「隊商は二つで一組の鈴を持ってる。片方を鳴らせば、もう片方も鳴る仕組みだ」


「じゃあ、どうやって場所が分かるんですか?」


「この矢印だ」


グラムが鈴の上部を指差した。


「もう片方の鈴の方向を示してる」


「へぇ……便利ですね」


エリンは感心した。


説明が終わると、アウエルは鈴を鳴らした。


それからポケットへしまい、再び食事を続ける。


「そういえばさ」


リカが肉を頬張りながら言った。


「昨日どうやって合流したんだ?」


「偶然だ」


アウエルが答える。


「村へ戻ったら、ちょうどブラックタートルが到着したところだった」


「それで事情を話して、すぐ探しに行ったんだ」


「そっか」


リカは苦笑した。


「悪かったな。勝手に突っ走って」


ギルが笑う。


「気にするな。よく戦ってたぞ」


「傷の具合はどうだ?」


グラムが尋ねる。


「問題ない」


アウエルが答える。


「俺も平気!」


リカが胸を張った。


だがギルは首を傾げた。


「それにしても妙だよな」


「ブラッドムーンウルフのこと?」


「ああ」


グラムもうなずく。


「そもそもブラッドムーンウルフ自体が珍しい」


「レッドウルフが成長した個体って話ですよね?」


ヘレンが言った。


「でもレッドウルフって群れで狩りをするじゃない?」


アシュリーも続ける。


「前に戦った時も群れだったし」


「……確かにな」


グラムは腕を組んだ。


短い沈黙。


興味なさそうに食事を続けていたアウエルだったが、グラムが横目で見ていることに気づく。


小さくため息をついた。


「たぶん、あの狼が賢くなったからだ」


「賢くなった?」


ヘレンが眉をひそめる。


「どういう意味?」


「レッドウルフは群れで暮らす。つまり獲物を分けなきゃいけない」


アウエルは淡々と説明する。


「でも群れの長が『なぜ分ける必要がある?』と考えたら?」


全員が黙って聞いていた。


「仲間を殺せばいい」


静寂が落ちる。


「そうすれば食料を独占できる」


アウエルは続けた。


「だからあれほど巨大になれた。餌を独占して成長し続けた結果がブラッドムーンウルフなんだと思う」


「でも戦い方は説明できないわ」


アシュリーが言う。


「あの適応力は異常だった」


「村長の話だと、長い間この村を襲っていたらしい」


アウエルは答える。


「その間に大量の冒険者と戦ったんだろう。だから攻撃パターンを覚えた」


「なるほど……」


ヘレンが納得したようにうなずく。


「でも最初に会った時、なんで動かなかったんだ?」


リカが聞く。


「……さあ」


アウエルは肩をすくめた。


「そこまでは分からない」


そして話を切るように言う。


「まあ、ブラッドムーンウルフなんて滅多にいない」


場の空気が少し和らいだ。


◇◇◇


食事を終えたアウエルは外へ出た。


「どこ行くんだー?」


リカが聞く。


「少し風に当たる」


アウエルはそのまま村を歩いた。


風が畑を揺らす。


木柵にもたれかかった時。


「何か考え事か?」


グラムがやって来た。


「別に」


「昨日はよくやったな」


「何がです?」


「狼との戦いだ」


グラムは笑う。


「お前の作戦がなかったら勝てなかった」


「首を落としたのはあんたです」


「それでもだ」


グラムは腕を組む。


「狼の行動を分析したのはお前だ。適応していると気づかなければ、全滅していたかもしれない。 だからもっと自信を持て」


アウエルは黙っていた。


「本当はな」

s

グラムは少し視線を逸らした。


「最初からお前を勧誘するつもりだった」


「勧誘?」


「ずっと見てたんだよ」


アウエルは眉をひそめる。


「お前、いつも一人で依頼を受けてただろ?」


「それで受付に聞いたら、受けてる依頼の大半が盗賊討伐だった」


グラムは笑う。


「盗賊討伐は簡単な依頼だ。だが、一人でやるのは話が別だ」


「だから一緒に依頼を受けて実力を見ようと思った」


「でも、お前はもうパーティーを組んでいた」


「だから諦めたんだ」


グラムは肩をすくめた。


「そしたら今度は受付から『追加パーティーが必要です』って話が来た」


「運命かと思ったよ」


アウエルは何も言わない。


「そして確信した」


グラムは笑った。


「お前にはパーティーリーダーの才能がある」


「仲間の能力を活かすのも上手いし、判断も速い」


アウエルは黙ったままだった。


「さて」


グラムは背を向ける。


「俺は依頼の続きをやる」


歩き出したが、途中で立ち止まった。


「ああ、そうだ」


巻物を投げる。


アウエルはそれを受け取った。


「受付に渡しておけ」


「ブラッドムーンウルフ討伐の報告書だ。村長じゃ説明できないだろうからな」


「……ありがとうございます」


グラムは手を振り、そのまま去っていった。


◇◇◇


午後。


ブラックタートルは次の依頼へ向かった。


リカとエリン、それにオウェルは子羊たちと遊んでいる。


アウエルは草の上で昼寝をしていた。


――チリン。


鈴の音が鳴る。


アウエルは目を覚ました。


隊商が到着したのだ。


帰る準備はすでに整っていた。


「本当にもう帰るのか?」


村長が心配そうに尋ねる。


「傷は大丈夫なのか?」


「問題ありません」


アウエルは答えた。


「村のこと頼むな!」


リカが笑う。


「何かあったら街まで来て俺たちを呼べよ!」


「はい!」


オウェルは元気よくうなずく。


「僕も大きくなったら冒険者になります!」


三人は隊商へ乗り込んだ。


荷車はゆっくりと動き出す。


「さようならー!」


オウェルが大きく手を振る。


その姿は少しずつ遠ざかり、


やがて見えなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ