衝突 3
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
アウエルの体が地面へと叩きつけられた。
「……ぐっ!」
痛みに顔を歪める。
「アウエル!」
リカが叫ぶ。
一瞬、その場の全員が凍りついた。
エリンはアウエルを見るなり駆け出した。
だが、狼は振り向いた。
躊躇も、間もない。
一切の隙を与えず、一直線に後衛――少女たちへと突っ込む。
「バインド」
黄金の光が走り、脚を拘束しようとする。
しかし狼は高く跳躍し、それを完全に回避。空中で軌道を変え、そのままグラムへと襲いかかった。
鋭い爪が振り下ろされる。
ガキィン!
大男が割り込み、盾で受け止めた。
「クイックアロー!」
高速の矢が空を裂く。
狼は体を捻り、紙一重でかわす。
さらに飛びかかる。
二撃目。
より速い爪撃。
大男が再び防ぐ。
だが、その衝撃で後方へ押し込まれる。
態勢を立て直す前に、三撃目が迫った。
「グラム!」
背後で待機していたグラムが踏み込む。
巨大な斧が振り上げられた。
渾身の一撃。
だが狼は攻撃の途中で身を引き、するりと逃れる。
「クイックアロー!」
再び矢が放たれる。
外れる。
狼が跳ぶ。
着地するより先に、リカが炎を纏った刀を振り抜いた。
ザンッ!
しかし狼は回転して回避する。
「ライトニングスパーク!」
雷撃が落ちる。
狼はさらに跳躍。
回避。
鮮やかな回避だった。
それでもリカは止まらない。
踏み込み、重い袈裟斬り。
外れる。
狼が牙を剥き、真っ直ぐ噛みつこうとする。
だがリカは握りを返し、刃を反転。
下から斬り上げる。
狼は噛みつきをキャンセルし、後方へ跳んだ。
直後、反撃。
爪がリカへ振り下ろされる。
速すぎる。
避けられない。
「パーフェクトウォール!」
大男が割って入り、盾で受け止めた。
ガァン!
そのまま一瞬の隙もなく、ハンマーを狼の頭へ振り抜く。
外れた。
狼はまた跳び退く。
短いやり取りの末、わずかな間が生まれる。
その間に――
アウエル。
一人、地に伏していた。
エリンが駆け寄り、すぐさま治癒を施す。
「わ、私には傷を塞いで、痛みを和らげることしか……」
震える声。
緑の光が彼を包む。
傷は閉じる。
だが、内部の損傷までは癒えない。
全員がアウエルを中心に再び陣形を組んだ。
武器を構え、荒い呼吸を整える。
狼は彼らの周囲をゆっくりと回る。
観察するように。
待つように。
――学習が速すぎる。
アウエルは思う。
長引かせれば不利だ。
「ヘレン」
グラムが狼を睨んだまま問う。
「残りマナは?」
「……三発、多くて四発。それで限界」
狼はなおもゆっくりと歩き続ける。
冷静に。
焦りもなく。
――こちらの消耗を理解している。
アウエルは拳を握りしめた。
閃光も、もう通じない。
その時、ひとつの策が浮かぶ。
「おい、魔法使い」
ヘレンが眉をひそめる。
「ヘレンよ」
「別の拘束魔法はあるか?」
「……あるわ。バインドより弱いけど」
グラムが視線を向けた。
「何かあるのか?」
「ああ」
アウエルは小さく頷き、エリンへ合図して後ろへ下がらせる。
「よく聞け。俺に合わせろ」
彼は低く作戦を告げた。
狼はなおも周囲を巡り、待っている。
そして――
最初に大男が正面から突撃した。
アウエルは側面へ回り込む。
グラムが続き、
リカは反対側へ展開。
少女たちは後方。
狼は即座に反応し、大男へ突進する。
高く跳躍。
再び盾を踏み台にするつもりだ。
大男が盾を構える。
だが直前で身をかわした。
狼は不自然な体勢で着地する。
踏み台がない。
追撃にも繋げられない。
爪を振り上げた、その瞬間。
「敏捷強化」
アウエルが背後から斬りかかる。
狼は跳び退いてかわした。
「クイックアロー!」
矢が眼を狙う。
ドスッ!
命中。
だが眼球は外れた。
狼が寸前で首を傾けたのだ。
大男が押し込む。
ハンマーが振り下ろされる。
外れ。
続けてアウエルとグラムが攻め込む。
途切れない連撃。
休ませない。
その最中――
アウエルが懐から何かを取り出した。
「おい、狼」
投げる。
「目を閉じろ」
狼は即座に反応し、眼を閉じた。
パキッ
だが閃光は起きない。
代わりに噴き出したのは煙。
濃く、重く、瞬く間に広がる。
狼を包み込んだ。
「下がれ!」
アウエル、リカ、大男が一斉に後退する。
「ヘレン、今だ!」
「ルーツ!」
地面が震えた。
蔦が噴き上がる。
狼の脚、胴、顎へ絡みつく。
煙の中で視界を奪われた狼は反応できない。
拘束された。
「リカ!」
煙の向こうから。
リカが動く。
刀に炎が灯る。
咆哮だけを頼りに踏み込む。
ザシュッ!
ザンッ!
ズバッ!
連続する斬撃。
すべてが命中する。
狼が激しく暴れた。
「もう持たない!」
ヘレンが叫ぶ。
蔦が軋み、砕け、弾け飛ぶ。
狼が煙を突き破って飛び出した。
全身は傷だらけ。
炎を纏っている。
だが――
「マルチショット!」
矢が空中で分裂。
鋼の雨となって降り注ぐ。
狼は再び眼を閉じ、身を捻る。
致命傷は避けた。
だが全ては避けきれない。
ドドドッ!
数本が深く突き刺さる。
狼がよろめいた。
アウエルはもうそこにいた。
刃閃。
外れる。
狼がかわす。
大男が突進。
ハンマーが振り抜かれる。
ドゴォッ!
頭部へ直撃。
「もう一度!」
アウエルが叫ぶ。
「ルーツ!」
蔦が再び地を裂いて伸びる。
だが今度は狼が動き続ける。
絶え間なく。
執拗に。
すべてを回避した。
「……ちっ、もうマナがない!」
ヘレンが吐き捨てる。
蔦が止まる。
その時。
「ルーツ」
柔らかな声。
エリン。
地面が応えた。
予想外のタイミング。
新たな蔦が狼を絡め取る。
拘束。
大男が突進した。
ハンマーを掲げる。
だが狼は片脚を引きちぎり、自由を得る。
鋭い反撃。
ザシュッ!
爪が大男の胸を裂いた。
彼がよろめく。
その瞬間。
アウエルが動く。
速い。
一歩。
正確無比。
居合のような、一閃。
ズバァッ!
刃が狼の残った片眼を断ち切った。
最後の視界が失われる。
狼は絶叫した。
盲目となり、狂ったように暴れる。
「今だ!」
アウエルが叫ぶ。
大男が踏み込む。
ハンマーを振り上げる。
ドガァン!
頭が大きく弾けた。
「ブラックスケイル!」
グラムはすでに動いていた。
全身に強化が巡る。
「ウォークライ――ウォリアーズマイト!」
巨大な斧が高く掲げられる。
そして――
振り下ろされた。
ゴシャァッ!
重く、鋭く、決定的な一撃。
狼の首が宙を舞う。
巨体が崩れ落ちた。
静寂。
――ブラッドムーンウルフは、死んだ。




