エルフ王国 - 22
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
玉座の間では、なおも激しい戦いが続いていた。
アレンとその分身が、グラムとリッカへ向かって突進する。
だが、グラムが斧を床すれすれに横薙ぎに振るったことで、二人は足を止めざるを得なかった。
アレンと分身は、それぞれ反対方向へ跳び、斧の一撃をかわす。
その隙を逃さず、リッカが分身へと距離を詰めた。
炎を纏った剣を振り下ろす。
*ガキィン!*
分身は二本の剣のうち一本を掲げ、攻撃を受け止めた。
だが、リッカは止まらない。
何度も剣を振るう。
*ガキィン! ガキィン! ガキィン!*
武器同士が何度も激突する。
ぶつかるたびに、リッカの剣を包む炎が分身の剣へと広がっていく。
やがて炎は刃を伝い、腕へと這い上がり始めた。
身体へ炎が届く寸前、分身が後方へ跳ぶ。
すると、焼け焦げた腕が突然崩れ落ち、黒くなった木が剥がれ落ちていく。
肩から新たな根が伸び、瞬く間に新しい腕を形作った。
「チッ……何なんだよ、お前も再生できるのか!?」
リッカは剣を強く握り直す。
「いいぜ。だったら、これでも再生できるか試してみようぜ」
剣を包む炎が、突然さらに激しく燃え上がった。
リッカが前へ跳び、剣を振り下ろす。
*ガキィン!*
分身は二本の剣を交差させ、攻撃を受け止めた。
今度は炎がさらに速く広がっていく。
リッカはそのまま剣を突き出した。
分身は横へ跳び、紙一重で刃をかわす。
リッカはすぐに身体を回転させ、再び斬りかかった。
分身は剣を掲げて防ぐ。
だが、武器同士がぶつかった瞬間――
*パキィン!*
分身の剣が灰となって崩れ落ちた。
リッカがニヤリと笑う。
そのまま燃え盛る剣を分身の胸へ突き刺した。
*シュンッ!*
「捕まえた!」
*ザンッ! ザンッ! ザンッ!*
リッカは怒涛の連撃を叩き込み、木の身体を次々と切り裂いていく。
切断された木片は、再生する暇もなく炎に飲み込まれていった。
***
その頃、グラムがアレンへ向かって突進する。
アレンが二本の剣のうち一本を突き出した。
グラムは足を止め、身体を横へ捻る。
アレンはすぐさまもう一本の剣を振るった。
*ガキィン!*
グラムは斧の柄を掲げ、その一撃を受け止める。
アレンはもう一本の剣を振り上げ、グラムの頭を狙う。
防ぐことができない。
グラムは頭を後ろへ引いた。
*ギィィン!*
刃が鎧の表面を擦った。
グラムは肩を前へ出し、そのままアレンへ身体ごとぶつかる。
だが、アレンは身体を捻り、完全に攻撃をかわした。
グラムが体勢を立て直すより先に、アレンが二本の剣を頭上へ掲げる。
そして、凄まじい速度で振り下ろした。
「身体強化・敏捷!」
グラムがさらなる強化を発動する。
そして身体を捻った。
同時に、全身の力を込めてアレンへ斧を振るう。
アレンは攻撃を中断し、二本の剣を身体の前へ構えた。
*ガキィィン!*
凄まじい衝撃。
アレンの身体が後方へ吹き飛び、壁へ叩きつけられた。
グラムは足を踏みしめ、追撃するために跳び出そうとする。
だが――
突然、身体が動かなくなった。
鼻から細い血が流れる。
グラムは手の甲でそれを拭った。
*チッ……これが限界か?*
*同時に四つの強化……*
*いや……まだ足りない*
「ウォークライ!」
再び鼻血が流れた。
だが、グラムはそれを無視する。
凄まじい速度でアレンへ向かって飛び出した。
***
玉座の間の反対側では、ヘレン、ギル、エリンがゴーレムを足止めし続けていた。
エリンは杖を掲げ、静かに魔法を唱える。
「ルーツ!」
ゴーレムの足元から根が飛び出し、その巨大な身体へ絡みつく。
だが――
ゴーレムが身体を動かしただけで、根は地面から引き抜かれ、簡単に引きちぎられた。
「アイスブラスト!」
ヘレンが氷の塊を放つ。
ゴーレムは片手を掲げ、それを受け止めた。
*ドゴォン!*
氷が手のひらを貫き、そのまま腕全体へと広がっていく。
瞬く間に、腕が霜で覆われた。
「フレイムスナイプ!」
エリンが凍りついた腕へ向け、圧縮した炎を放つ。
*ドゴォン!*
ゴーレムは間一髪でもう片方の手を掲げ、攻撃を受け止めた。
「アースミサイル!」
ヘレンが残った手へ向けて、土のドリルを撃ち出す。
今度は、ゴーレムは防ぎきれなかった。
*ドゴォン!*
手が完全に吹き飛ぶ。
ゴーレムは破壊された腕を下ろし、切断された部分を地面へ押しつける。
すると――
大地が盛り上がった。
石と土が集まり、巨大な新しい手を形作っていく。
「ルーツ!」
再び根が伸び、新しく作られた腕へと固く絡みつく。
だが、それも長くは持たなかった。
ゴーレムが立ち上がるだけで、根は簡単に引きちぎられる。
「何なのよ……! どうしてみんな、こんな簡単に再生できるの!?」
エリンは急いでギルの後ろへ回り、ヘレンへマナポーションを差し出した。
「こ、これ……飲んで!」
ヘレンは瓶を見る。
「え? でも、これはエリンの分でしょ?」
「ううん。私は大丈夫。まだ少しマナが残ってるから」
「……そう。ありがとう」
ヘレンは瓶を受け取り、蓋を開けると一気に飲み干した。
その間にも、ゴーレムが彼女たちへ向かって歩き始める。
「チッ……二人とも、構えろ!」
ギルが叫ぶ。
ゴーレムの重い足音が床を揺らしながら近づいてくる。
だが――
突然、ゴーレムが足を止めた。
その頭が、王冠のほうへ向く。
天井に刺さっていた矢から王冠が滑り落ち、今まさに地面へ向かって落下していた。
ゴーレムが王冠へ向かって歩き始める。
同時に、シルフィーも王冠へ向かって駆け出した。
「急げ! ゴーレムを止めろ!」
ギルがヘレンとエリンへ指示し、自分もゴーレムの脚へ向かって走る。
「ルーツ!」
ヘレンとエリンが同時に魔法を放つ。
床から根が噴き出し、ゴーレムの脚へ絡みつく。
動きを止めようとする。
ギルもゴーレムの脚へハンマーを叩き込む。
*ドゴォン!*
だが、ゴーレムはほとんど動かなかった。
根を引きちぎり、そのまま前へ進み続ける。
そして、その拳が力を蓄えるように震え始めた。
その瞬間――
シルフィーの手が王冠へ届いた。
彼女は王冠を掴む。
だが――
またしても、奇妙なことが起きた。
王冠が、彼女の手の中で輝き始めた。
シルフィーは王冠を見つめる。
「な、何……これ……?」
光はさらに強くなる。
部屋にいる全員が突然の光に気づき、シルフィーへ視線を向けた。
王冠から伸びた光が、シルフィーの身体を包み始める。
光の蔓が彼女の手からもう片方の手へと伸びていく。
そこには、彼女の弓が握られていた。
黄金の光が弓全体へと広がる。
ゆっくりと――
弓が大きくなっていく。
さらに大きく。
さらに、さらに。
やがてそれは、シルフィー自身の身長に近い大きさとなった。
鮮やかな緑色の光が、その弓を包み込む。
シルフィーは変貌した武器を、信じられないものを見るように見つめた。
「な、何これ……私の弓、どうなったの?」
玉座の間全体が、一瞬静まり返った。
誰もが、その変化に言葉を失っている。
だが――
ゴーレムは止まらなかった。
巨大な拳がシルフィーへ向かって振り下ろされる。
「シルフィー、矢を放て!」
ヴェインが叫ぶ。
シルフィーはすぐに背中へ手を伸ばし、矢筒から一本の矢を取り出した。
矢を番え、弦を引き絞る。
緑色の光が矢の周囲へ集まっていく。
ゴーレムの拳が、すぐ目の前まで迫る。
そして――
*ヒュッ!*
シルフィーが矢を放った。
矢は光の奔流となり、一直線に飛んでいく。
*ドゴォン!*
矢はゴーレムの手を貫き、そのまま身体のほぼ半分を吹き飛ばした。
凄まじい衝撃にシルフィーの身体が後方へ吹き飛ばされ、手から弓が滑り落ちる。
すると、弓が突然小さくなり始めた。
緑色の光が消えていく。
そして弓は二つの物へと分かれた。
元の弓と――
王冠。
「何だったの、今の……?」
ヘレンが、破壊されたゴーレムを見ながら呟く。
「俺にも分からん」
ギルが答える。
ゴーレムは再生しようとした。
破壊された身体を地面へ近づける。
だが――
何も起こらない。
大地は動かない。
再生できない。
「ルーツ」
ヘレンとエリンが再び魔法を放つ。
今度は根がゴーレムへ固く絡みつき、その巨体を完全に拘束した。
「チッ……あの娘が、どうしてあれほどの力を……」
エルリックが信じられないものを見るように呟く。
その時、ヴェインが王冠へ向かって走り出した。
だが、アレンも王冠へ向かって動き、ヴェインを止めようとする。
*ザンッ!*
その横からリッカが斬りかかった。
アレンは攻撃を避けるために跳び退く。
すぐさまグラムも続き、アレンへ向かって斧を振るった。
アレンは真正面から受けることを拒み、後方へ跳ぶ。
二人はアレンをその場に釘付けにし、ヴェインへ近づけさせない。
同時に、エルリックもヴェインを止めようと動く。
「パワーショット!」
横から矢が飛んでくる。
エルリックは武器を盾へ変形させ、攻撃を防ぐ。
衝撃によって後方へ押し戻された。
その間にも、ヴェインは王冠へ向かって走り続ける。
一歩。
また一歩。
そして――
ついに王冠へ辿り着き、手を伸ばして掴んだ。
その瞬間――
王冠が再び輝いた。
今度は光が、ヴェインの全身へと広がっていく。
王冠が姿を変える。
白く輝く鎧となり、ヴェインの身体全体を包み込んだ。
黄金の紋様が、その白い鎧の表面を彩っている。
彼のマントも変化した。
より長く、より深い緑色へ。
その表面には黄金の模様が走っている。
そして――
ヴェイン自身の姿までもが変わっていく。
顔立ちはより端正になり、威厳に満ちた王の姿へと変わる。
髪は長く伸び、黄金色へと変化した。
最後に、頭頂部から根が伸びていく。
それらが絡み合い、黄金の王冠を形作った。
そこには、種子のような宝石がいくつも飾られている。
ヴェインはゆっくりと顔を上げた。
「さあ……終わらせよう」
片手を動かす。
その瞬間――
巨大な根が地面から一斉に噴き出した。
玉座の間全体へと広がり、枢機卿たちとゴーレムへ向かって伸びていく。
ゴーレムはまったく動けない。
瞬く間に根に絡みつかれ、完全に拘束された。
カエルは自慢の速度を頼りに、迫り来る根の間を縫うように駆ける。
だが――
床からさらに細い根が飛び出した。
しかも、それまでより速い。
カエルの脚へ絡みつき、その身体を捕らえる。
アレンは根を斬り、脱出しようとする。
だが、切断した根はほぼ一瞬で再生した。
さらに多くの蔓がアレンへと伸びていく。
エルリックも捕らえられる寸前、武器を掲げて詠唱を始めた。
枢機卿たちの足元に魔法陣が現れる。
だが――
魔法が完成するより先に、ヴェインが手を掲げた。
「ディスターブマジック!」
魔法陣が一斉に砕け散った。
エルリックもすぐに根へ捕らえられる。
一人、また一人と――
四人の枢機卿が拘束されていった。
玉座の間にいた全員が、ようやく安堵の息を吐いた。
そして、全員がヴェインのもとへ集まる。
「ちょっと待て……お前、ずっと王だったのか?」
「まあ、うん」
ヴェインは気まずそうに頭を掻く。
「……まあ、そんなところかな」
「あなた、私たちにたくさん説明する義務があるの、分かってるわよね?」
シルフィーが腕を組みながら言う。
ヴェインは小さくため息をついた。
「……分かったよ」
彼は一度、四人の枢機卿へ目を向ける。
そして――
「全部話す」




