エルフ王国 - 23
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
玉座の間には、全員が集まっていた。
四人の枢機卿がすでに拘束された今、皆はヴェインから、これまでに何が起きたのかを聞いていた。
「――というわけで、全部こんなことになったんだ」
ヴェインはそう言って、これまでの出来事をすべて説明し終えた。
「待って。まだ一つ、気になることがある」
アシュリーが口を挟んだ。
「あの日の夜……あなたが姿を消した時のことなんだけど」
「あなたは言ってたよね?」
「もし王が殺されたとしても、王冠が次の王に相応しい人物を見つけるって」
ヴェインは頷いた。
「だったら、どうしてあなたを誘拐しなかったの?」
「つまり、あなたが戻ってきて王冠を取り戻せないようにするのが目的だったなら……殺してしまうのが一番確実だったんじゃない?」
「犯人が本当に神聖魔法を使ったのなら」
アウエルが口を開く。
「犯人自身も瀕死の状態だったはずだ」
「ああ。あの夜、俺も荒い呼吸音を聞いたんだ」
ヴェインも続けた。
「それが犯人だったんだろう」
「つまり、犯人は瀕死だったから、できることが王冠を奪うことしかなかった……ってこと?」
「でも、まだ一つ疑問があります」
ヘレンが言った。
「なんだ?」
「どうして、手がかりを探していた時に地下の部屋を調べなかったんですか?」
「それも変なんだよな」
ヴェインは認めるように言った。
「実は、あの部屋の存在を知ったのは今回が初めてなんだ」
「え?」
ヘレンは眉をひそめた。
「あなた王様なのに、自分の王宮に隠し部屋があることを知らなかったんですか?」
「いや、俺がこの場所を建てたわけじゃないからね」
ヴェインは答えた。
「それに、俺はほとんど王宮の外で過ごしていたんだ」
「俺が国を離れている間に、枢機卿たちが作ったのかもしれない」
「じゃあ、守護者は?」
リカが尋ねた。
「どうしてあいつは、あの部屋に現れたの?」
「もし守護者が本当に俺たちを助けようとしていたなら、最初から助けてくれてもよかったんじゃない?」
「それについても、俺が王になってから守護者に会ったことはほとんどないからな」
「どういう考えを持っているのかも、俺には分からない」
「じゃあ、どうして最初から助けてくれなかったのかっていうと……」
ヴェインは少し考えてから、
「正直、俺にも分からない」
「他に何か質問はあるか?」
「私も……まだ一つあるかも」
シルフィーが手を挙げた。
「なんだ?」
「私が王冠に触れた時に起きたこと」
「どうして私の弓が、突然あんなに大きくなって強くなったの?」
ヴェインは黙り込んだ。
そして俯き、しばらく考える。
「正直に言うと……分からない」
「え!?」
「俺は先代の王が亡くなった後に王冠を受け継いだ」
「それから今まで、誰かに王冠を渡したことは一度もない」
「だから、正確な答えは俺にも分からないんだ」
「でも、それってシルフィーも王冠を使う資格があったってことじゃないのか?」
グラムが尋ねる。
「分からない。俺の知る限り、王冠は持ち主に王としての力を与えるもののはずだ」
「でも、今日見た限りでは、シルフィーの弓だけが変化した」
「俺の時みたいに、姿そのものが変わったわけじゃない」
「そう考えると……今まで俺は、王冠の力について勘違いしていたのかもしれないな」
「本当に王冠は、相応しい者に力を与えているのか?」
「それとも、王冠を発動させる何か別の条件があるのか……」
「待って」
シルフィーが声を上げる。
「それってつまり、私には王冠を使う資格がないって言いたいの?」
明らかに不満そうな顔だった。
「まあ……そういうことになるかな」
ヴェインは気まずそうに笑った。
「でも、俺自身も……そもそも王冠を戴くのに相応しい人間じゃなかったと思ってる」
「ど、どうして?」
エリンが尋ねる。
「こんなことを起こさせてしまう王が、どんな王だ?」
「自分の民のために、正しい選択ができなかった王が……どんな王だ?」
その場に静寂が落ちた。
ヴェインは俯き、静かにため息をつく。
「……分かった」
「今は、別のことに集中しよう」
「この枢機卿たちのことは俺が何とかする。そして、まだ答えの出ていない疑問についても調べてみる」
「君たちは今日は休んでくれ」
「それから、ここで起きたことは誰にも話さないでほしい。余計な騒ぎを起こしたくないんだ」
誰も文句を言うことなく頷き、激しい戦いの疲れを癒すため、それぞれの部屋へ戻っていった。
翌日。
国中に、その知らせが広まった。
――王が帰還した。
王の帰還を祝うため、再び祭りが開かれた。
ただし今回は、枢機卿たちの姿はなかった。
そして不思議なことに、誰もその不在に気づいていないようだった。
ヴェインは街を歩きながら、周囲の人々に笑顔で挨拶をしていた。
民衆は、ようやく王が帰ってきたことを心から喜んでいる。
王の無事な帰還を祝う歓声が、街中に響き渡っていた。
その頃。
アウエルは再び一人でカフェに座り、注文した品を待っていた。
一人のメイドが、紅茶の入ったカップを持って彼のテーブルへやってくる。
「お待たせしました。こちら、お飲み物です」
メイドは丁寧に紅茶をテーブルへ置き、軽く頭を下げた。
前にも会った、あのメイドだった。
アウエルは小さく頷いて礼を示し、紅茶を一口飲む。
「王様がようやく帰ってきて、本当によかったですね?」
「そうだな」
アウエルは窓の外へ視線を向ける。
街の人々は、本当に嬉しそうだった。
「王は……過去に何か悪いことをしたことがあるのか?」
「悪いこと?」
メイドは首を傾げる。
「どういう意味ですか、わん?」
「この国にとって、悪い選択をしたことがあるのか?」
「私はここに長く住んでいるわけじゃないので、昔のことはあまり知りません」
「だから聞いている」
「この国を傷つけるような決断をしたことは?」
メイドは俯き、少しの間考えた。
「うーん……私も、よく分からないですね」
「私もここに住み始めて、まだ数年しか経っていませんから」
それから顔を上げ、アウエルを見る。
「でも、私がここに来てからは……陛下がこの国のために悪い決断をしたとは思いません」
「いつだって、この国の安全と暮らしを最優先にしていましたから」
「だから……やっぱり陛下は、素晴らしい王様だと思います」
アウエルは目の前の紅茶を、黙って見つめていた。
メイドは続ける。
「それに、どんな国にも素晴らしい王様が必要ですよね?」
アウエルはしばらく黙っていた。
そして――
「……そうだな」
「君の言う通りだ」
「それでは失礼します。ごゆっくりどうぞ」
メイドはカウンターへ戻っていく。
その直後、別の客がカフェへ入ってきた。
翌日。
ヴェインは一人、王座に座っていた。
やがて扉が開く。
一人の衛兵が入ってきて、頭を下げた。
「陛下、お客様がお見えになりました」
「通してくれ」
衛兵が外へ出て、客を中へ招き入れる。
そこにいたのは、アウエルとグラムだった。
二人は部屋へ入り、ヴェインへ頭を下げようとした。
しかし、ヴェインがすぐに止める。
「おい、やめてくれ」
「前にも言っただろ? 俺の前でそんなに畏まらなくていいって」
「それで、俺たちをここに呼んだ理由は?」
グラムが尋ねた。
「えっと……伝えたいことが二つある」
「まずは、昨日の疑問についてだ」
「王宮の地下にある部屋を調べて、それから枢機卿たちにも話を聞いた」
「そして、分かったことがある」
「あの部屋を作ったのは、やっぱりあいつらだった」
「俺が国を離れている間に、枢機卿たちが作ったらしい」
「それから、守護者のことと、シルフィーに起きたことについては……」
「まだ答えは見つかっていない」
「図書館の記録にも、シルフィーの弓について説明しているものは何もなかった」
「それに、守護者に会ったことも、俺にはどうすることもできなかった」
「だから、今は答えを教えられない」
「つまり、俺たちにその答えを探してほしいのか?」
アウエルが尋ねた。
ヴェインは少し笑った。
「もちろん、違う」
「そもそも俺があの依頼を作った理由は、君たちに俺の失踪について調べるのを手伝ってもらうためだった」
「だから、この問題まで君たちが気にする必要はない」
「俺が自分で調べる。何か分かったら、君たちにも知らせよう」
「あるいは、君たちの力が必要になったら、また依頼を出す」
「でも今は――」
「君たちの依頼は、これで正式に完了だ」
「すでに門も開け直した。これからは自由に国へ出入りできる」
「君たちはもう、自分たちの街へ戻っていい」
「そうか……ありがとう」
グラムが答える。
「でも、伝えたいことが二つあるって言ったよな?」
「二つ目は何だ?」
「依頼についてだ」
「君たちの依頼は終わったと言ったけど……ここで起きたことを誰にも話さないでほしい」
「ギルドマスターにもだ」
「俺が失踪していた理由については、君たちで好きな話を作ってくれて構わない」
「ただ、もう一度言うけど……余計な騒ぎだけは起こしたくない」
「分かったな?」
アウエルとグラムは頷いた。
「それから……」
ヴェインは二人を見る。
「ありがとう。本当に」
「この問題で、君たちが力を貸してくれたことには感謝している」
「だから、君たち二つのパーティーには報酬を渡す」
「遠慮なく受け取ってくれ」
「本当に? ありがとう」
グラムは勢いよく頭を下げた。
しかし、ヴェインはまたしても止める。
「おい。何回言えば分かるんだ?」
「その丁寧すぎる態度はやめてくれ」
グラムは気まずそうに姿勢を戻した。
「さて、それじゃあ帰っていい」
「良い冒険を」
「そして……またいつか会えることを願っている」
「できれば、もう災難を引き連れてこないでくれると嬉しいけどね」
アウエルとグラムは玉座の間を後にした。
しかし、部屋の外へ出た二人は、思いがけない人物が待っていることに気づいた。
シルフィーだった。
「待って。あなたたちもここに呼ばれたの?」
シルフィーが尋ねる。
「ああ……ヴェインに話があるって呼ばれた」
グラムが答えた。
「あなたも?」
「うん」
シルフィーの表情が、瞬時に険しくなった。
彼女は何も言わず、そのまま玉座の間へ入っていった。
グラムは苦い笑みを浮かべながらアウエルを見る。
「……まだ仲直りしてないのか?」
「どうして俺が?」
アウエルは即答した。
「どうせ、もう二度と会うこともない」
「まあ……そうだよな」
「でも、せめて仲直りくらいしろよ」
アウエルは何も答えず、そのまま王宮の外へ歩いていった。
そして、一行は帰る準備を始めた。
すでに自分たちの馬車へ乗り込んでいる。
「それで、この依頼でいくらもらえるの?」
リカが尋ねた。
「ヴェインから、それぞれのパーティーに金貨二百枚だ」
「しかも、ギルドからの報酬は別にある」
「えっ!? そんなにもらえるの!?」
リカが驚きの声を上げた。
「ああ。家に戻ったら報酬を分ける」
「でも……もっと大きな問題がある」
アウエルは、自分の向かいに座っている人物を見る。
「……なんでこいつがここにいる?」
シルフィーが、アウエルの向かい側の席に座っていた。
腕を組み、明らかに怒っている。
――その少し前、王宮の玉座の間では。
「私に何をしろっていうの!?」
シルフィーが信じられないといった様子で叫んだ。
「アウエルのパーティーと一緒に冒険してほしい」
「言ってることは分かってる。でも、なんで私があいつと一緒に行かなきゃいけないのよ!」
「いいじゃないか。君もここに十分長くいただろ?」
「そろそろ冒険者に戻ったらどうだ?」
「――あのクソ野郎とじゃなければね」
「おい、言葉遣いには気をつけろ」
ヴェインが呆れたように言う。
「本当にその口で王様に向かって話しているのか?」
シルフィーは舌打ちした。
「チッ……嫌よ。あんな奴とは絶対に行かない」
ヴェインは長いため息をついた。
「……分かった」
「それなら、こうしよう」
ヴェインは咳払いをする。
その表情が、突然真剣なものへと変わった。
そして次に口を開いた時、その声には王としての威厳が宿っていた。
「我が名は、エルドラン・ヴェロル・ヨーン」
「エルフの王である」
「ここに命じる」
「エルフの国を出て、アウエルのパーティーと共に冒険へ同行せよ」
――馬車の中。
シルフィーは怒りに満ちた目でアウエルを睨んでいた。
「そんなに私が嫌いなら、あなたが出ていけばいいじゃない」
「ここに招かれていないのは、あなたのほうなんだから。出ていったら?」
シルフィーは勢いよく立ち上がった。
「もう一度言ってみなさい!」
「今度こそ本気でぶっ飛ばすわよ!」
「おい、お前ら二人とも落ち着け!」
リカが慌てて二人の間に割って入る。
「はぁ……」
「本当に、ヴェインは何を考えてるんだ……」
こうして――
一行は街へ戻る旅を始めた。
まさか連れて帰ることになるとは思ってもいなかった、新たな仲間と共に。
そして、馬車の中では――
まだまだ長い長い言い争いが、彼らを待っていた。




