エルフ王国 - 19
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
地下の部屋。
シルフィーたちは、目の前の光景に凍りついていた。
リオルは背後から刺されていた。
「ダ、ダーク……エルフ!?」
トバリはリオルの胸から刃を引き抜く。
すると、リオルの身体がその場に崩れ落ちた。
意識を失っている。
「トバリ!?」
全員が一斉に声を上げる。
「でも……どうしてここに?」
シルフィーが尋ねる。
「君たちが渡してくれた虫が鳴り始めたからね」
「何かを見つけたんだと思った」
トバリは部屋の中を見回す。
「だから、俺が使った道を戻ってきた」
「すると、君たちがある通路の前にいるのが見えた」
「俺も一緒に行こうと思ったんだけど、衛兵が来る気配を感じた」
「だから、先に隠れた」
「でも、出てきた時には君たちが消えていた」
「それで……あの廊下のどこかに隠し通路があるんじゃないかと思ってね」
「壁の石をいくつか押してみたら……扉が開いた」
リカはトバリをじっと見つめる。
「待て」
「待て。お前、ただ壁の石を押してみただけなのか?」
トバリはただ頷いた。
「うわぁ……」
「お前、運良すぎだろ」
シルフィーは小さく安堵の息を吐いた。
「それより……助かったわ」
「探知魔法が本当に厄介だったから」
彼女はリオルへ視線を向ける。
「あなたが来てくれなかったら、私たちがどうなっていたか分からない」
「気にしなくていい」
トバリが答える。
「それより、まずは目的に集中しよう」
「王冠はどこ?」
シルフィーは首を横に振った。
「分からない」
「戦いながら、この部屋を少し探してみたけど……手がかりは何もなかった」
「何かが、この部屋の中に隠されているはずよね?」
ヘレンが言う。
「壁の石を全部調べてみよう」
「別の仕掛けがあるかもしれない」
全員が頷いた。
「そうだな」
「早く見つけよう」
「アウエルたちは、今頃ほかの枢機卿たちを相手にしてるはずだ」
四人は部屋中に散らばり、手の届く石を一つずつ押していく。
一つ。
また一つ。
しかし――
何も起こらない。
部屋のほとんどすべてを調べた。
それでも、何も見つからなかった。
「もう……どこにあるんだよ!」
リカが苛立たしそうに呻く。
「そうだな。手の届く石は、ほとんど全部調べたぞ」
ギルも付け加える。
その時、ヘレンがふと上を見上げた。
天井。
そこには、一つだけ丸い石が埋め込まれていた。
「……あれじゃない?」
ヘレンが指を差す。
「ここにはゴーレムがいるんだもの」
「もしかしたら、あれを使って天井の何かを動かしたのかも」
シルフィーはすぐに矢を一本抜き、天井へ向かって放った。
カンッ!
しかし、矢は簡単に弾かれ、そのまま床へ落ちる。
「くそっ……どこにあるんだよ!」
リカが苛立ちの声を上げる。
トバリはシルフィーを見る。
「本当に……王冠がここにあるって確信してるのか?」
「確信はない」
シルフィーが答える。
「でも、枢機卿がどうしてこんな場所に来たの?」
「何か重要なものが、ここにあるはずよ」
二人が話していると――
廊下の奥から、足音が聞こえてきた。
全員が一斉に動きを止める。
武器を抜く。
視線が暗い通路へ集中する。
「だ、誰……?」
ヘレンが小声で尋ねる。
「まさか、ほかの枢機卿?」
「いや……ありえない」
リカが答える。
「アウエルとグラムなら、あいつらを抑えられるはずだ」
足音が、少しずつ近づいてくる。
一歩。
また一歩。
そして――
ついに暗闇の中から、その姿が現れた。
全員が凍りつく。
「な……何!?」
シルフィーが驚愕する。
「ありえない……」
トバリは、目の前の存在を信じられないように見つめた。
「守護者……」
そこに立っていたのは――
一頭の巨大なヘラジカだった。
その身体は、古代の樹皮と分厚い苔によって形作られているように見える。
頭から伸びる巨大な角。
その角は、淡い緑色の光を放っていた。
誰も動かなかった。
その姿を目にしただけで、誰もが言葉を失ってしまう。
守護者はゆっくりと部屋の中へ歩いてくる。
そして、部屋の中央で足を止めた。
ゆっくりと頭を持ち上げる。
角に宿る緑色の光が、徐々に強くなっていく。
パキッ。
何かが割れるような音がした。
全員が音のした方向を見る。
壁だった。
パキッ。
石壁に細い亀裂が走る。
そして――
その隙間から蔓が押し出されてくる。
パキッ。
亀裂がさらに広がる。
壁の中から、さらに多くの蔓が現れ、石壁を這うように広がっていく。
「な、何が起きてるの!?」
ヘレンが叫ぶ。
蔓は成長を続ける。
そして、開いた亀裂の奥から何かが姿を現し始めた。
蔓ではない。
黄金色の光を放つ何か。
リカの目が大きく見開かれる。
「……あれ、王冠じゃないか?」
リカは、ゆっくりと頭を下げる守護者へ目を向ける。
そして、慎重にその物体へ近づいていく。
蔓の中へ手を伸ばし、それを引き抜く。
「こ……これは……」
リカの顔に、ゆっくりと笑みが広がる。
「王冠だ」
「王冠を見つけたぞ!」
その瞬間――
別の異変が起こった。
守護者の脚元から、草が生え始める。
石の床を突き破るように、花が咲く。
植物が次々と広がり、部屋全体を覆っていく。
やがて――
守護者はゆっくりと頭を地面へ下ろした。
その身体が崩れ始める。
樹皮と苔が地面へと溶け込むように広がっていく。
そして、あれほど雄大だった存在は、やがて床を覆う植物の一部へと変わっていった。
ギルは、その光景を呆然と見つめる。
「おい……」
「守護者はどうなった?」
「分からない……」
シルフィーが答える。
「……消えてしまった」
リカは手の中の王冠を見る。
「まあ……そんなことはどうでもいいだろ」
「重要なのは、守護者が俺たちに王冠を見つけさせてくれたってことだろ?」
「そうだ」
トバリが答える。
「その通りだ」
トバリは出口へ視線を向ける。
「この話は後にしよう」
「今は、この王冠をヴェインのところへ持っていこう」
「ヴェイン?」
リカが首を傾げる。
「なんで? 枢機卿たちから遠ざけたほうがいいんじゃないのか?」
「トバリの言う通りよ」
シルフィーが答える。
「少なくとも、まずはヴェインに知らせる必要がある」
「まあ……そこまで言うなら」
四人は振り返り、来た道を戻っていく。
そして、ついに通路の終点へ辿り着いた。
入ってきた時の扉だ。
ヘレンが扉を見上げる。
「それで……この扉、どうやって開けるの?」
「分からない」
シルフィーが答える。
「この辺りに隠しボタンがないか探しましょう」
四人は壁を調べ始めた。
そして――
ギルの指が、何かを押した。
「これか?」
ゴゴゴゴ……。
通路に低い轟音が響く。
扉がゆっくりと開いていく。
「よし。王宮の玉座の間へ戻ろう」
四人はすぐに隠し部屋から出る。
しかし――
その足が止まった。
「誰だ!?」
衛兵の声だった。
目の前には、衛兵たちがいた。
扉のすぐ外に、彼らが立っている。
「チッ……」
シルフィーは拳を握りしめる。
「見つかった……!」
王宮の反対側では――
グラムたちが、未だに残りの枢機卿たちを相手にしていた。
数メートルの距離を空け、両者が武器を構えている。
エルリックが手を掲げる。
「来い」
しかし、グラムたちは動かなかった。
ただ、その場で構えを維持する。
カエルが舌打ちする。
「チッ……」
「先に攻撃するつもりはない、ということか?」
「ならば……」
カエルの手に、一本の木製の短剣が生み出される。
次の瞬間――
その姿が消えた。
一瞬でエリンの前へ飛び込む。
短剣を振り抜く。
ガキィン!
アウエルがエリンの前へ割り込み、攻撃を受け止めた。
カエルはすぐに進行方向を変え、アウエルへ短剣を突き出す。
アウエルは身体を捻って攻撃を躱し、そのまま斬り返す。
ガキィン!
カエルは短剣で受け止めた。
「なるほど……速いな」
カエルが再び短剣を突き出す。
だが、その攻撃がアウエルへ届くより先に――
ヒュッ!
一本の矢が飛んできた。
カエルは間一髪で身を躱す。
しかし、反撃へ移るより早く――
別の攻撃が迫る。
ブンッ!
グラムの斧が大きく振り抜かれる。
カエルはすぐさま後ろへ跳んだ。
「チッ……鬱陶しいな」
玉座の間の反対側では、アレンが木製の剣と盾を生み出していた。
しかし、それだけではない。
彼と同じ武器を持った、木製の分身まで作り出している。
アウエルが一瞬だけそちらへ目を向ける。
「お前たちは、あの二人を頼む」
「こいつは俺が相手する」
アレンの分身が、グラムたちへ向かって一気に駆け出した。
グラムもすぐに動き、分身へ斧を振り下ろした。
ガキィン!
アレンの分身は盾を掲げ、斧を受け止める。
そのまま剣を振り抜く。
ガキィン!
ヴェインはすでに動いていた。
分身の剣を受け止める。
同時に、アレン本人も二人へ向かって駆け出し、剣を振り抜く。
二人は左右へ散開し、攻撃を躱す。
「インシネレート!」
エリンの杖の先から炎が噴き出し、アレンとその分身へ向かって飛んでいく。
アレンは前へ出て盾を構える。
分身はその背後へ回り込み、炎を避けた。
エリンの炎がアレンの盾へぶつかる。
炎は消えることなく、アレンと分身へ向かって燃え続ける。
その時――
ヒュッ!
一本の矢がエリンへ向かって飛んできた。
エリンは最後の瞬間に頭を横へ逸らした。
矢が頬のすぐ横を通り過ぎる。
しかし、突然の攻撃によって魔法が乱れた。
炎が消える。
矢を放ったのは――
エルリックだった。
エルリックは新たな矢を生み出し、再びエリンへ向けて放つ。
エリンはすぐに横へ移動する。
矢が彼女の脇を通り過ぎる。
エルリックはさらに一本の矢を作り出す。
だが、放つより先に――
ヴェインがエルリックへ向かって駆け出した。
エルリックは攻撃を中断し、ヴェインの短剣を素早く躱す。
エリンの炎が消えたことで、アレンはすぐにグラムへ向かって突進する。
同時に、木製の分身はエリンへ向かって駆け出した。
戦場は、いくつもの激しい衝突へと分かれていった。




