エルフ王国 - 18
読んでいただきありがとうございます。
日本語にはまだ不自然な部分があるかもしれません。
もし誤訳や不自然な表現などがありましたら、コメントで教えていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
地下の部屋に、石と魔法がぶつかり合う音が響き渡る。
シルフィーたちは、リオルと巨大なゴーレムを前にして対峙していた。
「なんだよ、あれ……!?」
リカが驚愕する。
彼らの前に立っているのは、五メートル近い巨体を持つゴーレムだった。
その身体は巨大な石の塊で作られ、それぞれの石を太い蔓がきつく絡みつくことで、一つの身体を形作っている。
ヘレンが前へ出て、杖を掲げる。
「インシネレート!」
杖の先から炎が噴き出し、ゴーレムへ向かって飛んでいく。
同時に、リオルも杖を掲げた。
「マジックバリア」
紫色の障壁がゴーレムの周囲に展開され、炎を完全に防ぐ。
「チッ……あの枢機卿、本当に厄介ね」
ヘレンが呟く。
その直後、ゴーレムが動き始めた。
巨大な腕が、四人へ向かって振り下ろされる。
「危ない!」
四人は一斉に散開した。
直前まで立っていた場所へ、巨大な拳が叩きつけられる。
ズドォン!
シルフィーはすぐさま、ゴーレムがリオルから離れた隙を狙った。
弓を引き、矢を放つ。
矢は真っ直ぐリオルへ向かって飛んでいく。
しかしリオルは、落ち着いたまま身体を横へずらした。
矢は彼の脇を通り過ぎていく。
「ライトニングスパーク」
バチィッ!
稲妻がシルフィーへ向かって放たれる。
「っ!」
シルフィーは間一髪で横へ飛び退いた。
稲妻は彼女の背後の地面へと突き刺さる。
「チッ……探知魔法が厄介すぎる」
シルフィーが吐き捨てる。
リオルが次の魔法を唱えるより早く――
ゴーレムの背後から、リカが突然飛び出した。
その刃には、すでに炎が纏っている。
だが、リオルは振り返りもせずに手を掲げた。
「アースウォール」
突然、地面が隆起する。
二人の間に、分厚い土壁が形成された。
リカはその動きを予測していた。
すぐさま進行方向を変え、壁の横を回り込む。
そして、そのままリオルへ向かって突っ込んでいく。
すでに刃は振り上げられている。
だが――
「ライトニングスパーク」
バチィッ!
リカの目の前で稲妻が爆ぜた。
直撃。
「ぐあっ……!」
身体が一瞬、硬直する。
そこへ、シルフィーの矢が再び飛んでいく。
しかしリオルは、今度も簡単に後ろへ跳び退いて避けた。
そして、ゴーレムが再び動く。
今度の標的はリカだった。
巨大な腕が振り下ろされる。
麻痺が残っているリカは、身体を動かそうともがく。
「パーフェクトウォール!」
ガキィンッ!
ギルが二人の間へ飛び込み、間一髪で盾を構えた。
ゴーレムの拳が盾へ叩きつけられる。
ギルは歯を食いしばりながら、その場で踏ん張った。
そしてハンマーを振り抜き、ゴーレムの腕を弾き飛ばす。
「大丈夫か?」
ギルが尋ねる。
「……ああ」
麻痺が薄れ、リカが立ち上がる。
「もう大丈夫だ。あの野郎、ぶっ飛ばしてやる!」
リカは再びリオルへ向かって駆け出した。
「いいぞ……ヘレン!」
「分かってる!」
「アースミサイル!」
ゴーレムの背後の地面がねじれ、巨大なドリルのような形へと変化する。
次の瞬間、それが勢いよく飛び出し、ゴーレムの背中へ直撃した。
ゴーレムは振り返り、手で攻撃を受け止める。
ドォン!
アースミサイルが爆発し、ゴーレムの右腕が吹き飛んだ。
それでもリカは止まらない。
炎を纏った刃を手に、リオルへ向かって走り続ける。
炎の刃を振り抜く。
空中を走った刃から、いくつもの炎の軌跡がリオルへ向かって飛んでいく。
「アースウォール」
地面から再び壁がせり上がり、炎を遮った。
しかしリカは止まらない。
壁を飛び越える。
空中にいるリカを見て、リオルが杖を掲げる。
「ライトニングスパーク」
バチィッ!
稲妻が空中を駆け抜ける。
リカは空中で身体を捻った。
稲妻が、彼の身体をかすめて通り過ぎる。
着地。
壁の向こう側へ降りたリカは、すぐさまリオルへ向かって突進する。
「捕まえた!」
刃が突き出される。
だが、リオルへ届く寸前――
「ウィンドゲイル」
リオルの杖から、強烈な風が爆発的に放たれた。
「ぐあっ……!」
リカの身体が吹き飛ばされる。
その直後、シルフィーが横から飛び込んできた。
矢を放つ。
またしても外れる。
だが、シルフィーは止まらなかった。
弓を下ろし、距離を詰めながら腰からナイフを抜く。
横薙ぎに振り抜く。
リオルは身体を後ろへ反らし、紙一重で刃を避けた。
シルフィーは続けて斬り込む。
だが、リオルはすぐに後ろへ跳んだ。
シルフィーが攻撃するたびに――
まるで、彼女が刃を振るより前から、どこへ攻撃が来るのか分かっているかのようだった。
一方、リカとシルフィーがリオルを相手にしている間、ギルとヘレンはゴーレムに集中していた。
ゴーレムの右腕が破壊された直後、ヘレンは再び魔法を唱える。
「インシネレート!」
炎がゴーレムへ向かって放たれる。
ゴーレムは残った左腕で炎を防ぐ。
身体に絡みついた蔓が燃え始めた。
ゴーレムが炎を防ぐことに集中している隙を、ギルは見逃さなかった。
ゴーレムの足元へと一気に駆け込み、ハンマーを叩きつける。
ドゴォン!
凄まじい衝撃がゴーレムの脚を襲う。
バランスを失ったゴーレムは、その巨体を地面へと叩きつけた。
「ヘレン! トドメだ!」
ギルが叫ぶ。
地面が大きく揺れた。
そして再び、巨大なドリルが地面から形成される。
「アースミサイル!」
ドリルがゴーレムへ向かって勢いよく飛んでいく。
「マジックバリア」
ゴーレムの前に障壁が展開される。
アースミサイルは障壁にぶつかり、粉々に砕け散った。
その直後――
破壊されたゴーレムの右腕に絡みついていた蔓が動き始める。
蔓は地面を這い、土の中へと潜り込んでいく。
そしてゆっくりと地面から這い上がり、周囲の石をさらに集めていく。
新しい腕が形作られていく。
ゴーレムは再び身体を起こした。
リオルもその肩へと飛び乗る。
四人はすぐに集まり、態勢を立て直した。
ギルが盾を構える。
「おい、大丈夫か?」
ギルがリカへ声をかける。
リカはポケットからポーションを取り出し、一気に飲み干した。
「ああ、大丈夫だ」
「でも、どうやってあいつを倒す?」
「今のままじゃ無理ね」
シルフィーが答える。
「あのクソ野郎とゴーレムを引き離さないと」
「そのあと、あのゴーレムをさっさとぶっ壊して、あいつをぶっ飛ばす」
「でも、どうやって引き離す?」
ギルが尋ねる。
シルフィーは少し考え込む。
「ヘレン」
「あとどれくらい魔力が残ってる?」
「……あまり残ってない」
「魔力ポーションも二本あるけど、これだけじゃそんなに回復しない」
「そういや、あの野郎はどれくらい魔力を残してるんだ?」
リカが空になったポーションの瓶を放り捨てながら尋ねる。
「分からない。もうかなり魔法を使ってる」
ヘレンが答える。
「たぶん……七、八回くらい?」
「でも忘れないで。エルフは基本的に、人間より魔力が多い」
「チッ……じゃあ、どうやって引き離す?」
「ここにはアウエルもグラムもいない」
「待って」
シルフィーが言う。
「……あの野郎を倒す方法、思いついたかもしれない」
その時、ゴーレムが再び動き始めた。
ヘレンは魔力ポーションを一本飲み、魔法を唱える。
「アースミサイル」
地面から再びドリルが形成され、ゴーレムへ向かって撃ち出される。
「マジックバリア」
またしても障壁に阻まれ、アースミサイルが砕け散る。
その間にリカはゴーレムの周囲を走り回り、攻撃できる隙を探していた。
「来て、鷹!」
シルフィーが使い魔を召喚する。
鷹はすぐさま高く飛び上がった。
ゴーレムは止まらない。
四人へ向かって、そのまま歩き続ける。
そして、その腕の一つを振り上げ――
四人へ叩きつける。
「パーフェクトウォール!」
ドゴォン!
ギルが完璧に攻撃を受け止める。
だが、ゴーレムは止まらない。
今度は反対側の腕を振り下ろす。
その瞬間――
鷹が正面からリオルへ向かって急降下した。
リオルの意識がそちらへ向く。
「インシネレート!」
ヘレンがゴーレムへ向かって魔法を放つ。
ゴーレムは動きを止め、残った腕で炎を防ぐ。
「ライトニングスパーク」
リオルが鷹へ向けて魔法を放つ。
だが、鷹は素早く身体を翻し、簡単に稲妻を避けた。
そして鋭い嘴と爪を使い、何度もリオルへ襲いかかる。
その一方で、ヘレンの炎はゴーレムの腕に絡みついた蔓を燃やし続けていた。
蔓が徐々に弱っていく。
石の腕にも、亀裂が走り始める。
「もう少し……」
やがて蔓が完全に千切れた。
ゴーレムの腕が崩れ落ちる。
「今!」
ヘレンはすぐに炎を止める。
そして、別の魔法を唱えた。
「ルーツ」
ゴーレムの足元の地面が大きく割れる。
そこから無数の根が飛び出し、ゴーレムの脚や身体へと絡みついていく。
巨大な身体が、根に抗って激しくもがく。
「リカ、今!」
リカは根を足場にして飛び乗り、そのままゴーレムの身体を駆け上がっていく。
刃に炎を纏わせる。
登りながら、石を繋ぎ止めている蔓を次々と斬り裂いていく。
一歩。
また一歩。
リカは上へ、上へと登っていく。
そして、ついにリオルのいる場所へ辿り着いた。
リカが炎を纏った刃を突き出す。
リオルには、もう後退する場所がない。
だが――
リオルはゴーレムの肩から飛び降りた。
刃が、彼の頭上すれすれを通り過ぎる。
「今だ、ギル!」
リカが叫びながらゴーレムから飛び降り、リオルを追う。
ギルもすぐさま駆け出し、ゴーレムの脚へハンマーを叩きつける。
ドゴォン!
ゴーレムがバランスを崩し、その巨体が地面へと倒れ込む。
ヘレンの根はその身体を覆うように伸び続け、ゴーレムを地面へしっかりと拘束していた。
リカは止まらない。
地面へ降りたリオルへ向かって、何度も斬りかかる。
ザンッ!
一撃。
さらに一撃!
そして、もう一撃!
だが、リオルはすべての攻撃を避け続ける。
そこへ鷹が飛び込み、鋭い爪を振るう。
しかし――
またしてもリオルは探知魔法で攻撃を察知し、身を躱した。
「ライトニングスパーク!」
バチィッ!
稲妻が鷹を直撃する。
使い魔の姿が一瞬で消えた。
そこへ、シルフィーの矢が凄まじい速度で飛んでくる。
だが、リオルはすでにその攻撃の方向を把握していた。
身体をわずかに傾ける。
矢は簡単に避けられた。
ギルもその場に留まらず、リオルへ向かって突進し、ハンマーを振り抜く。
しかし、それすらもリオルは簡単に躱した。
「ファイアボール!」
ヘレンが複数の火球をリオルへ向けて放つ。
「マジックバリア」
障壁が展開され、すべての火球を防ぐ。
リオルはすぐさま反撃した。
「アイスシャード」
何もない空中に鋭い氷の刃がいくつも生み出され、ヘレンへ向かって飛んでいく。
ガキィン!
ギルが彼女の前へ飛び込み、盾で氷を防いだ。
その間にもリカは動き続け、刃を振り抜く。
だが、またしてもリオルはすべての攻撃を簡単に避けた。
そして、次の魔法を唱える。
「ライトニングスパーク」
バチィッ!
「ぐあっ……!」
リカが再び稲妻を受ける。
身体がよろめき、後ろへ下がった。
そこへ矢がリオルへ向かって飛んでくる。
リオルは後ろへ跳び、攻撃を避ける。
その瞬間、一瞬だけ隙が生まれた。
四人は素早く集まり、態勢を立て直す。
リカはもう一本ポーションを取り出し、飲み干した。
「チッ……どうやってあいつを倒せってんだ?」
「俺たち、あいつに一発も当てられてないぞ!」
「そうだな。ゴーレムには対処できても、あいつは探知魔法で俺たちの動きを簡単に読んでくる」
ギルも苦々しく付け加える。
「ねえ、言っておくけど……私ももう魔力がほとんど残ってない」
ヘレンが言う。
「魔力ポーションも、あと一本しかないから」
「それに、あいつを見る限り……まだかなり魔力が残ってそう」
シルフィーは歯を食いしばった。
(チッ……どうすればあいつを倒せる?)
彼女の視線が、部屋の中を走る。
(この部屋は隅々まで見た……)
(でも、王冠はどこにもない)
(本当にヴェインは、ここに王冠があるって確信してるの?)
(じゃあ……どこにある?)
(王冠さえ手に入れられれば、ここであいつを倒す必要はない)
一行が次の手を考えている間に、リオルはゆっくりと杖を掲げた。
「もう、お前たちにできることは何もない」
その表情には、完全な落ち着きがあった。
「自分たちのような下等な生き物が、どうして私に勝てると思う?」
リオルが再び魔法を唱え始める。
四人は迫り来る攻撃に備え、身構える。
しかし――
魔法が完成する、その直前だった。
何かが、突然リオルの背後に現れた。
刃。
血に濡れた刃。
それが、リオルの胸を真っ直ぐに貫いていた。
「――っ!?」
リオルの目が大きく見開かれる。
「な……何……?」
ゆっくりと肩越しに振り返る。
そこに立っていたのは――
ダークエルフ。
トバリだった。
彼の手は、未だリオルの胸に突き刺さった刃を握りしめている。
枢機卿は、信じられないものを見るような目で彼を見つめた。
「ダ……ダーク……エルフ……!?」




